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インフルエンザ関連脳症にワクチンは効かない!
オルター通信929号記事
消費者リポート第1329号(2006年4月27日刊)より転載

大阪赤十字病院小児科医師 山本英彦

 「ワクチンを打っていれば脳症にはならなかったのに」という医師から患児の親御さんへの言葉や、学会での症例報告の「ワクチン既往(接種歴)なし」という一行など、インフルエンザが原因とされるインフルエンザ関連脳症は、ワクチン接種拡大に利用されてきました。日本小児科学会でも、1999年12月に出た 「見解」で、「ウイルス血症が(インフルエンザ脳症の)発症に関与しているとすれば、有効と考えるのが妥当である」としています。
 インフルエンザ関連脳症は、グラフに示したとおり、98年度の研究班の調査から3年間は減り続け、調査対象を拡大した2001年にいったん増加したあと再び減少し、04年度には36人(うち30人が小児)にまで減少しています。
 この脳症の減少は、見方によっては、ワクチン接種の増加の結果とも類推されます。ところが、ワクチン接種率が上昇するにつれ、脳症症例のなかにワクチン接種例が増え、脳症症例のワクチン接種率は一般の接種率と同じと推定されることが明らかになりました。

「有効性は低い」のに、「ワクチンの意義はある」?
 03年度の研究班報告書『インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究』では、責任者である森島恒雄さん(岡山大学大学院医歯学総合研究科)が「脳症症例のワクチン接種率が6.5%、一般の接種率が11%と差は認められなかった」と触れる程度でした。しかし、商業雑誌に発表された症例対照研究を見ると、実は修正前の生データでは脳症発症群の接種14%、対照群の接種10%と、脳症群の方がワクチン接種例が多かったという結果でした(かろうじて有意差なし)。
 こういった背景の中で、本小児科学会は、脳症とワクチンの関係について論理のすり替えを謀ってきました。04年10月に発表した「見解」では、インフルエンザ脳症に対するワクチンの有効性は低いとしながら、「インフルエンザ罹患の可能性を減じ、その結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり、ワクチン接種の意義はある」としています。つまりこれは、ワクチン接種で罹患が50%減れば脳症発症も50%減るだろうという理屈です。
 しかし、実際のデータからは、脳症発症者中のワクチン接種率は母集団と変わらないため、学会の論理が成り立つためには、ワクチン接種者の脳症発症率は2倍ということになってしまいます。

日本小児科学学会の役割とはいったい何か?
 結論は明らかです。脳症をワクチンで予防することはできなかったのです。病初期に防御免疫反応が過剰に起こるため発症するのではないかと考えられている脳症のメカニズムからも、これはしごく当然です。
 学会は、まったく科学的根拠なしに脳症をワクチン拡大に利用し、間違いを認めるどころか、再び根拠なしのすり替え論議でごまかそうとしているのです。上記メカニズムから、抗インフルエンザ薬タミフルが脳症に効かないことは類推されますが、ワクチンのごまかしが明らかになるにつれ、今度はタミフルが脳症激減に効いたとでも言い始めそうです。
 専門家集団としての日本小児科学会の役割とはいったい何か、今こそ自身で問い直すべきだと思います。
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