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昔ながらの伝統製法により、菜種の色と風味が生きた油
オルター通信1347号 記事
純系の国産菜種から搾った完全無添加、出雲の菜種油
有限会社 影山製油所 代表取締役 影山陽美
(文:向笠千恵子 「本場の本物」より転載)

 大国主命(おおくにぬしのみこと)が治めた神話の時代から鎮座する出雲大社。現在でも、神殿で厳かにともされる灯明には、菜種油が使われている。はじめ菜種油はもっぱら灯かり用に使われ、のちに搾油機の開発により生産量が増えて食用として普及していった。
 出雲での菜種栽培の記録は、江戸時代の文政3年(1820年)に書かれた農耕の指南書「神門出雲 楯縫都 反新田出情仕様書」に登場する。「綿の間作の場合は、夏の土用の頃に種をまく」などと細かな栽培方法が指導されており、菜種を原料とする菜種油の製造が盛んに行われていた。その後も昭和初期頃までは、出雲地方の農家は収穫した菜種を村の搾油施設に持ち込んで搾ってもらい、その菜種油を行燈(あんどん)の燃料として、食用油として使っていたのだった。やがて行燈は電気やガス灯にとって代わられ、食用には昭和40年代からは輸入業種油の増大などによって、国内での菜種そのものの栽培面積が激減していった。かつては出雲をはじめ日本各地の農村では風に揺れる菜の花畑が広がっていて100%だった菜種の自給率は、現在はなんと0.04%までに落ち込んでしまっている。
 日本の菜種栽培が激減しているおり、希少な国内産の菜種を使った油製造を約60年間守っているのが、影山製油所である。当初は豆腐屋だったが油揚げをつくる関係で搾油設備をもっていたため、村の搾油所が少なくなるなかで製油業に切り替えたのちに出雲大社の灯明御用達となって今にいたっている。また、数少ない伝統製法による国産菜種油の製造所として「日本古来の菜種油の製造技術、食文化を後世に継承していく」という強い思いのもとで「出雲の菜種油」を造り続けている。

●原種の管理から製油まで手仕事でつくる安心菜種油
 現在、日本では菜種油が食用油全生産量の約6割を占める。その原料となるキャノーラ種はカナダから95%以上を輸入している。
 「出雲の菜種油」は、国産菜種のみを原料に伝統製法による油づくりを行っている。原料菜種の品種は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センターで育種された「ナナシキブ」と「キラリボシ」。この品種は、とくに安心安全な食油を求める消費者に受け入れられており、遺伝子組み換えはされておらず、かつて健康不安が問われたエルシン酸を含んでいない。この原種の育成者権を影山製油所が受託し、自ら管理している。交雑しやすい菜種の原種を純系で守るためにネットハウスで隔離栽培し、採取した優良な原種は、適性条件下で管理保存し、原種増殖ほ場で栽培。そこで採取された種子を契約農家に毎年提供し、栽培され乾燥、選別を終えた高品質な菜種を全量買い上げて原料としているのだ。
 製法は、まず水分を飛ばして油を搾りやすくするための焙煎へ。熔煎は、炉の上においた平釜で行う。炉の構造と松の薪によって火力を調整していくことで、重油やガス加熱では得にくい、その日の天気や温湿度の変化に微妙に対応した炒り加減が発揮できる。このため、最高の焙煎状態に仕上がってくる。続いて、ねじで圧力を加えて油を搾り出す。日本では、菜種油の搾油法として、この圧搾製法が昔から行われてきた。搾り出された油は湯洗いという工程で、水分や不純物を取り除いていく。最後にろ過機で微細な異物を除去。ろ過を終えて、無添加で純度の高い菜種油ができあがる。
 なお、市販の大部分の菜種油は効率を良くするために油の抽出に化学薬品が使われているが、これと比べれば「油の色にも、香りにも、こんなに違いがあるものか」と驚くほど。脱臭や脱色をいっさいしていないので、菜種本来の黄金色と香りがきわだっているのだ。影山氏は「菜種油は、灯かりや食のシーンで日々の暮らしに深く寄与してきました。私たちは、菜種の原種を管理することも含め、昔ながらの製法を伝承して無添加の菜種油をつくっていくことで、消費者、特に子どもが安心して味わえる本物の菜種油を提供してゆきたい」と力強く締めくくった。


影山製油所の国産菜種油は、今週同時配布のカタログ8月2週号p17で企画しています。

(企画部)


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