通信販売の法規(特定商取引に関する法)に基づく表示

BSE・うつ病・キレル子どもたち −金属イオンと神経疾患− part4
  2004年11月27日 日本有機農業研究会講演録−Part4  
講師: 西田雄三さん   (山形大学理学部教授)

  『土と健康』誌から転載・連載中 前号に続く
● アメリカの主張が信用できない理由
 ここで大切なのは、この反応での鉄イオンの役割は特異的で、他の金属イオンではこの反応がうまく進行しないという点です。例えば、鉄イオンの代わりにアルミニウムイオンが酵素に入ると、酸素分子の活性化がまったく進行せず、基質への酸素原子の挿入はおきません。また、鉄イオンの代わりにマンガンイオンが入りますと、酸素分子の活性化は起きますが、その酸素はマンガン(U)イオンの酸化反応に利用され、基質との反応が激減し、生成物の大幅な減少になるということです。
 このように、脳内にアルミニウムイオン、マンガンイオン濃度が増え、鉄酵素にこれらの金属イオンが入りますと、神経伝達物質の合成に大きな障害(ドーパミン、セロトニン不足)が出るということです。これが、アルミニウムイオン、マンガンイオン濃度が高い地下水と神経性疾患の集団発生とが密接に関連していることを説明していると考えています。
 新聞(2001年10月)の報道によると、アメリカのコロラド地区でいわゆるCWD(狂鹿病)の鹿が大量に見つかっています。これはべつに驚くことではないのですが、同じ地区で、鹿が病気になっているのに、牛が大丈夫とはとても信じることができません。ですから「アメリカにはBSEがいない」というアメリカ側の主張は、私としては信用できないということです。各種の新聞報道では、アメリカのBSEの検査体制が非常にずさんで、テキサス州などでは「へたり牛」は、そのまま、焼却処分されているという事実も、アメリカ側の言い分を聞くうえで参考にすべきだと思います。


◆ 鉄イオンの代謝異常による酸化ストレス
● 蛋白質や細胞膜などの酸化で生体反応に支障
 上で述べたような脳における鉄イオンの正常な代謝が阻害されますと、いろいろな不都合な現象が起きます。例えばパーキンソン病患者の特定部位(黒質緻密層)に鉄イオンが多量に沈殿します。また、アルツハイマー病患者ではいわゆる老人斑が形成され、そこには鉄イオンが多量に沈着しています。私は、これはドーパミン、セロトニン不足から来る現象と考えていますが、いまだその本質は不明です。
 いずれにしても、このように鉄イオンが多量に沈殿する現象は、これまでにも「鉄過剰症」と呼ばれており、人間には厄介な病気です。再度言いますが、これは体全体から言えば鉄イオンが不足していても、ある部位に選択的に鉄イオンが沈殿する現象です。
 このような状態で起きるのが、酸化ストレスという現象です。酸化ストレスとは、生体構成成分(蛋白質、核酸、細胞膜、糖鎖など)が本来の反応でない機構で酸化され、生体反応に支障が出ることをいいます。すでに述べた、SODの切断、プリオン蛋白の異常切断反応などは、すべてこの範疇に入ります。
 さて、このような反応での活性種はなにか、ということが長年の問題点でした。これも実験室系での結果から、ほぼ全容が明らかになってきております。鉄イオンが過剰に沈着している状態では、鉄イオンは水酸化物となっており、水にはほとんど溶けません。
 ところが、体内に存在する小さな分子量のペプチドやアミノ酸と反応し、不溶だった水酸化鉄イオンが溶け出します。問題はこのときの構造ですが、一般的にオキソ架橋二核構造になります。一例として、ニトリロトリ酢酸を含むオキソ架橋二核鉄(V)の構造を図−8に示しました。
 この種の二核鉄(V)種の化合物は特異な作用を示します。代表例が還元剤の存在下で容易に過酸化水素を形成する作用です。すでに述べたように、過酸化水素は活性酸素種のひとつで、特に注意すべき化合物ですが、それが大量に生成します。その過酸化水素が鉄イオンと結合しますと、活性化され、蛋白の分解・修飾反応、DNA・RNAの損傷、糖類の酸化的分解、細胞死(ここで述べた事項はすべて実験的に確認されている)などを行います。
 この酸化ストレスが原因で、たんぱく質の変異・異常切断・神経細胞死が誘導されれば、生体内反応が原因でBSE・ALSなどが発症することが容易に理解できると思います。 


▼▼▼
▼▼

次号オルター通信876号に連載予定


 



図8
戻る