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草を味方にする自然農法
カタログ2014年9月3週
農薬、化学肥料はもちろん、草以外の有機物も使いません。
◆見事な草の活かし方
 小太朗農園とその仲間たちは、農薬、化学肥料はもとより草以外の有機質肥料も使わず、不耕起草生無肥料無農薬栽培の自然農に取組んでいます。圃場の生態系を大切にするため、驚くほど草を上手に活用し、健康な野菜作りに成功しています。
 畑作は、自家採種した種もしくは自家育苗した苗を適期に植えて、最低限の灌水を施すだけで育てます。圃場内には、種、水、資材(支柱など)のみ持ち込むだけで、堆肥、肥料、農薬は施しません。耕起、灌水耕起により、一年草だけ生える環境に整えた上で、以降不耕起で半年間夏草もしくは冬草を生やし、草が枯れた半年間だけ作物を育てます。枯れた草がやがて堆肥となり、地表を覆いマルチとなるので、少しだけ生える草は手除草します。
 圃場の中には、一見耕作放棄地と見間違うほどの畑もあります。しかし、よく見るとその丈の長い冬草はなぎ倒されており、その中にしっかりと作物が定植されています。思わず感動をおぼえるほどです。それぞれの畑には少量ずつ、多品目の野菜がたいへん元気に育っており、まさにオルターのセット野菜、パック野菜向きです。
 そんなたくましい野菜を育てるために、キャベツ、ブロッコリーなどは収穫したあとの茎や根を残しておいて、次の収穫につなぐなどまるで野生のような栽培方法も試みています。

◆コンビニの仕事に疑問を感じて
 小太朗農園の前田 博史さんは大阪府貝塚市で7年前に1年間和歌山県の有機農家で農業研修したあと、6年前の2008年から新規就農してこの自然農に取組んでいます。前職はコンビニ店長をしていました。食品添加物まみれ、無駄に廃棄されるコンビニ食、生命を大切にしないコンビニ食の現状に違和感、嫌悪感を感じて、思い悩み退職しました。妻はそのコンビニ店で働いていた元同僚。そんな悩みを話し合っているうちに、本当の豊かさは何かを求めて模索し、自然農家として生きていくことにたどりつきました。
 初めて耕した畑はススキ、セイタカアワダチ草、ヨモギさらにはヨシまでが鬱蒼と茂る荒れた耕作放棄地でした。この荒地を畑に戻すだけでも大変でしたが、肥料も入れませんので、野菜はほとんど何もできませんでした。
 そんな落胆の毎日でしたが、希望を与えてくれた作物がありました。それは枝豆でした。根っこに根粒バクテリアが共存していて、植物の成長に必要な窒素を固定してくれますので、痩せた土地でもよく育ってくれたのでした。やっとできてくれたこの枝豆を食べたときは感動で涙があふれたそうです。小さい頃、また同じことばかり言っているとよく思っていた亡くなった祖父の口癖「ええか、人間は火(太陽)、土、水に感謝して生きなあかん、これがなかったら何もでけへんやろ」という言葉が心底わかった気がしました。
 6年目になった今、少しずつですが、いろんな野菜ができるようになってきました。畑も見違えるようになってきました。それは後述する達人、辻川宏喜さんとの出会いのおかげでした。
 ちなみに小太朗農園の名前の由来は「小春日和の太陽のような朗らかな農園でありたい」ですが、実は昔近所にいた可愛らしいパグ犬の小太朗の名前を拝借したのが始まりだそうです。

◆我が子に安全な野菜を食べさせたい
 小太朗農園の近くに住む農家の射手矢 順子さんは6年前2008年から前田さんとともにこの自然農に取り組んでいます。射手矢さんは自分の子どもに安全な野菜を食べさせたいと有機農業を20年前に始めました。農薬の害を身をもって知っていましたから、我が子には食べさせたくないと思ったからです。近所の人もそんな野菜を食べたいと輪が拡がっていきました。
 そんなおり、近所のある人から肥料なしで土だけで作物はできると教えられました。あとで知ったのですが、その人は自然農法を教えとする神慈秀明会の信者の方でした。野菜に含まれる硝酸態窒素の問題がクローズアップされてきているのを知っていましたので、肥料なしでできるのならそれは良いことだと考えました。
 しかし、いざ無肥料で始めてみたものの、2年間は全く満足に作物はできませんでした。そんな悩みを抱えていたときに後述する辻川 宏喜さんの教えを請うことになりました。辻川さんから、同じ悩みを持つ前田博史さんを紹介されました。
 泉大津市の辻川 祐喜さんは、2010年から脱サラして父、辻川 宏喜さんの始めた不耕起草生栽培法に取り組んでいます。

◆達人の技
 この3人には、その農法を学んでいる師匠がいます。辻川 裕喜さんの父、辻川 宏喜さんです。辻川 宏喜さんは、50年前テレビで見た福岡 正信さんの自然農法、不耕起、直播きに衝撃を受けました。
 辻川 宏喜さんは30年前に、自然農法を教えにする神慈秀明会に入信しました。そして21年前、1993年に「もち込まない、もち出さない」をモットーに福岡 正信さんの米麦栽培を畑作に活かす、独自の不耕起草生の自然農を水田や畑で、自ら始めました。大発見ともいうべき不耕起草生栽培に気がついたきっかけは、宏喜さんの父が農地に建てていた借家を宏喜さんがとり壊して畑に戻そうとしたとき、農地への復旧作業が長引いて、一面冬草だらけになっていましたが、夏になるとその草が枯れて、枯草が地表を被覆して夏草がほとんど生えてこなかった体験がヒントとなりました。辻川 宏喜流不耕起草生栽培のポイントは草をいかに育てるかです。使う草は一年生のものが基本です。枯れてくれることが必要です。枯れるとそれが緑肥となり、土地が活性化します。草を活かし、草によって無肥料、不耕起が可能になる農業です。
 夏野菜を作付けする圃場にはその土地によく合う、カラスのエンドウや麦などの冬草をめいっぱい生やします。それらの冬草が黄色く枯れてくる5月頃、枯れた冬草を刈らずに踏み倒し、草の絨毯の中に夏野菜を定殖していきます。この草の絨毯が保湿と保温を与え、さらには夏草を抑えるマルチにもなります。やがて分解されて、自然な堆肥となり、土の中には枯れた根っこがバクテリアに分解され、固粒構造を作ります。肥料を与える必要のない土になるのです。冬春野菜は作付けする場合は、この逆でメヒシバなどの夏草をめいっぱい生やして、秋に冬春野菜を定殖していきます。草を味方にして育った野菜は甘く、フルーティーで、硝酸イオン濃度など心配する必要もない、よい色をしています。秋ナスはまるでナシのようにフルーティーに実ります。自然農の中でも大へんユニークな栽培方法です。まさに達人の技です。
 辻川宏喜さんは弟子たちに「とにかく自然の偉大さは、人智をはるかに凌ぐもので、人間の考えでは『わからない』ということがわからないといけない」と教えています。この偉大なチャレンジはこれからも続きます。
 オルターとして、小太朗農園は和歌山県で自然農に取組む米市農園の高橋 洋平さんから紹介され、これまでにも野菜を出荷していただいてきました。辻川 祐喜さんは三浦 和彦オルター顧問が神慈秀明会の農業技術調査に協力している関係で知り合いました。比較的近い地域で共通の農法を実践している仲間で、このたび協力してオルターへ共同出荷していただくことになりました。小太朗農園とその仲間たちは、将来が楽しみな若いグループです。


小太朗農園とその仲間たちの自然栽培野菜(☆☆☆)
●生産者
前田 博史、射手矢 順子、辻川 祐喜

●品目
野菜全般

●防除
なし

●肥料
草を活用する以外、なし



―文責 西川榮郎(NPO法人  安全な食べものネットワーク  オルター代表)―



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