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甘くジューシーな黒毛和牛
カタログ‘2009年6月3週号’
きめが細かく、臭みのない最上級の肉質。
少量規格で登場。


●粗飼料の給餌で丈夫な胃袋を作るのが大切

 徳島県鳴門市のグリーン牧場の森久さんは、肉質の良い雌ばかりの黒毛和牛を飼っています。子牛の時からワラなどの粗飼料をふんだんに与え、まず丈夫な胃袋を持つ牛に育てます。それからゆっくりと長期に飼育します。ゆったりと楽な気分で飼うので、事故や病気も出ません。「牛もよくなついてくれる」と喜んでおられます。
 肉質はきめが細かく、脂身には臭みがなく、甘く香りがあり、舌の上でとろけるようで味わいがあり、高い評価を受けています。森さんが目指していた「明治時代後半」の昔の牛肉が実現していると思っています。

●牛農家の肉屋さんと二人三脚で

 出荷するための「枝肉をさばく事」「パック作業」は、近所の肉屋さん・大平慶典さんに協力を求めています。大平さんにさばいてもらった牛肉を、森さんも立ち会っていつも一緒にパック詰してきました。大平さんのところは私の家からもすぐ近くだったので、私もよくパック詰めを手伝った事があります。森さんは自分が育てた牛を割った状態(屠体)を自分の目で見ながら、飼育方法を改善してこられたのです。良い肉も、悪い肉も、その原因を考えながら取り組む事ができました。
 大平さんは、実は今も牛を飼う農家です。自分で育てた牛を市場ではちゃんと扱ってもらえない事から一念発起して、とうとう自分の手で売るために肉屋にまでなった人でした。子牛を購入するために各地の多くの情報を持っておられ、その大平さんのアドバイスが森さんの牛飼いの腕を上げていったのです。
 今では森さん、大平さんとも同じ水準で牛を飼っておられるので、森さんの牛肉が不足する場合は大平さんの牛肉でも出荷の応援をしていただいています。

●近代畜産をやめて、よかった

 森さんはかつて130頭のホルスタインを飼育していた事があります。多頭飼いの労働の激しさは体を壊すほどで、エサやりなどに忙しかったけれど、安く買いたたかれて生活は楽ではありませんでした。目が届かないぶん風邪や肺炎、更には事故などで牛が死んでしまう事も度々でした。濃厚飼料主体の餌を与えていたために、肉は水分が多くべちゃべちゃして肉汁のしみ出る、色の濃い、きめが粗く締まりのないものになっていました。
 改善は、まずワラなどの粗飼料の比率を上げて、丈夫な胃袋を持つ牛を育てる事でした。牛飼いを始めて5〜6年目からは、品種を黒毛和牛に切り替え始めました。既成概念にとらわれていたお父さんとは、牛の飼い方をめぐっていつも喧嘩ばかり。しかし今では普通の飼い方をしていた仲間は既に牛飼いをやめているのに、森さんは生き残ったのです。獣医の世話にならず十数年になりました。獣医の顔を見る事のない畜産家はたいへん珍しいのです。
  森さんにとって、牛肉の品質が安定し粒ぞろいになって、やっと自分が思っている肉に仕上げられるよう自信がついたのは1999年頃の事です。以来出荷が楽しみになったとの事。そして、なによりも大平さんが誉めてくれる事が嬉しいとも。
 大平さんは「多頭飼いの時代は終わった。インチキはいつかはばれる! ちゃんとしたものを作る者が勝つ」と語ります。森さんは「消費者と付き合った当初は生産者である自分の方が、今は消費者の方が儲けている」とおっしゃいます。「完成に向け、80%まできている。残る課題は、まだ半分を占めている輸入飼料から、より自給を高めたエサにすることです」とおっしゃっています。
 森さんがこだわった牛肉作りを目指したきっかけは、1984年に私の妻が子どもの保育所の行事で森さんと出会った事でした。


●少量企画、お惣菜も登場
 森さんの牛肉は2009年3月2週から少量規格になりました。また、部位調整のため、余る傾向のある部位でお惣菜作りにもチャレンジしていただいています。もちろん調味料はオルターのものです。


グリーン牧場の黒毛和牛
阿讃山脈の山の中、水も空気もよいところに牧場があります。牛の飲み水は以前は山の湧き水でしたが、現在は降雨量も減少しているため、市の水道水に切り替えています。

●品種
 現在は鳥取産、地元産、但馬産の黒毛和牛の子牛を7〜12ヶ月齢で導入。ここ暫くは但馬産が7〜8割を占めています。

●エサ
 導入時より半年間は牧草だけで飼育して、6ヶ月位より徐々に穀物を与え、ミネラル分は生草と赤土に塩を与えてゆったりと飼っています。子牛の時に胃袋を丈夫に育てて、それから肥育に移ります。内臓を丈夫にすれば風邪などの病気に対しても抵抗力が強くなると考えています。肥育には粗飼料主体の下記のエサを与えています。

牧草(米国産イタリアンライグラス)、生草(自家製)、稲ワラ(徳島県脇町産)、ビール粕(ビール麦は輸入物)、ふすま(輸入物)、大麦(カナダ産)、配合飼料(肉用牛肥育配合、植物性原料のみ)、赤土(保育のみ)、塩(保育のみ)

 動物性のエサを与えると早く大きくなりますが、狂牛病の心配があったり、エサに抗生物質などを加えていますので、動物性の飼料は与えていません。しかし、残念ながら遺伝子組み換えやポストハーベスト農薬はクリアーできていません。配合飼料も問題があるため、さらに改善が求められています。

●飼い方
 一般慣行飼育では子牛導入から2.5年で仕上げますが、森さんは3〜3.5年を目安にゆっくりと育てています。また、1頭ずつ大きな囲いに入れたマンション飼いにしていて、ゆったりとした桝飼い。少頭飼育が特徴です。通常はギュウギュウ詰めにしているところが殆どです。
 牛には毎日のようにブラッシングしてフケやダニを取ってやり、痒いところにまで手を届かせています。牛はゆったりとしており、おとなしいです。このように、自分にあったやり方で育て、できた堆肥も自家消費しておられます。
 これで月2頭のぺースでの出荷ですが、注文が多い場合には、大平さんの牛も出荷して応援いただいています。大平さんも全く同じ飼い方で約100 頭います。
 森さんの牛肉は殆ど霜降りです。雑に飼うと、こうはいきません。オルターとしては必ずしも霜降りをお勧めしてはいませんが、やわらかさを求める日本人には好まれる味です。興農ファームの赤身肉に満足できない人にはお勧めです。
 森さんは、牛肉は野菜を食べる助けにして、肉の3倍の野菜を食べるべきだとおっしゃっています。
 また、森さんの牛肉を注文して、脂身が多いと文句を言われる方がいらっしゃいますが、この脂身が牛肉の味でもあるのです。脂身が嫌いで、なおかつどうしても和牛を食べたい人にはモモ肉をお勧めします。脂身は焼肉用→スライス→バラスライスという順に、多くなっています。


市販の牛の問題点
 配合飼料で育てると牛は早く大きくなりますが、水分の多い色の濃い肉質になります。遺伝子組み換え、ポストハーベスト農薬、飼料添加物、動物医薬品など問題だらけです。牛はもともと草食動物で、穀物で育てるものではないのです。粗飼料を与えられない牛はまずい肉になります。手間ひまかけている人を評価しない消費者は、結局まずいものを食べさせられるのです。市販の肉の詳しい解説はカタログ2000年8月2週号表紙をご参照ください。
 「フランスでは子どもに牛肉を食べさせない」「一流レストランから肉料理が消えた」と一時大騒ぎした狂牛病問題は、今は忘れられた感があります。ヨーロッパなど17ヶ国以上で狂牛病が発生し、日本でもこれまで20頭以上発生が確認されていますが、マスコミも発表しなくなっています。ある屠場で狂牛病陽性反応が確認されたのに、それが出荷されたという情報もあります。狂牛病発生国のアメリカからの牛肉の輸入もたいへんルーズな検査体制のままで再開されています。



―文責 西川栄郎(オルター代表)―


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