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福島原発事故は人災
オルター通信1179号 記事
長谷川晃・大阪大学名誉教授のコメント
 今回の福島原発事故に関する報道はNHKをはじめとする日本のマスコミの取り上げ方に比べ、ABCやNBC、それにニューヨークタイムズなどのアメリカの報道機関の取り上げ方のほうが、遥かにその内容が充実している。日本のメディアは確かに嘘は言ってないが、言うべきことを十分言ってない。自国の事件に関する報道を外国のメディアに頼らねばならないということは、全く情けないことである。
 その中でも。3月16日のニューヨークタイムズのアジア版は、事故を起こした原子炉の危険性が1972年既に指摘されており、今回発生した種類の事故は当時予測され、この結果米国原子力委員会はこの形の原子炉(GE製のマーク1)の生産停止を答申していたと報じている。更に1980年代には米国核規制委員会はこの形の炉はもし燃料棒が加熱し溶解すると90%の確率で爆発する可能性があると指摘している。また、米国のいくつかの電力会社は炉を製造したGE社の内部資料で燃料容器の設計のテストが十分であるか、欠陥があることを指摘していることを知り、GE社を訴訟すると脅していたこともある。
 その後、こうした問題にある程度の改良が加えられたが、後に製造された圧力型軽水炉(現存する炉の殆どはこの形)に比べ危険である事には変わらない。それにも関わらず、マーク1型の炉が購入されたのは設計が簡単で、より安価であるからだと。つまり、東電はこうした事実を知りながら、企業の利益の為に安全性を犠牲にして安い炉を選択したわけである。
 地震や津波の危険性がある日本で、しかも独占企業が、企業利益の為に安全性に問題のある炉を採用したことは許されるべきではない。事故の原因が想定外の津波だとか地震だといった言い訳は通用しない。
 不思議なことにこれだけ大きな事故と経営判断のミスを犯した東電の経営者は顔を見せない。経営者は地元住民はもとより日本人全員に自らの非を認め、陳謝すべきであろう。


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