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野山を守る お茶の有機栽培
カタログ2012年6月4週号
栽培、製茶一貫生産、むらとまちをも結んでいます。


◆茶の名産地
 大和茶(一般に宇治茶として出荷されています)の産地、奈良県月ヶ瀬の月ヶ瀬健康茶園、岩田文明さんは、農薬、化学肥料、動物質由来の肥料を使わず、緑茶(煎茶、番茶など)や紅茶を作っています。2001年には有機JAS認証を自家茶園の全ての畑と自家製茶工場で取得しています。畑の土にはミミズやクモがいっぱいいます。
 月ヶ瀬は国内の茶産地の中でも、一番茶の収穫時期が最も遅い産地のひとつです。春の訪れが遅く、昼夜の寒暖差のある気候、粘土土壌などの環境は、ゆっくり生長し、おいしい茶ができます。朝霧がよく出ることも、お茶作りに向いています。

◆茶畑ごとにテーマがあります
 丘陵地が連なる月ヶ瀬の変化に富む地形に、20ケ所以上点在する岩田さんの自家茶園は、ひとつひとつの畑に傾斜度、土質、方角、作業効率などの条件が異なっています。岩田さんはその畑それぞれの立地条件を活かし、いろんな品種の茶を植え、多品種、多品目、少量栽培に取り組んでいます。

◆耕作放棄地の下草を活用
 最近、近隣では耕作放棄地や放棄茶園が目立ってきています。耕作放棄地に茂る草を刈り、堆肥化して傾斜地の茶畑に循環していく取り組みを模索しています。
 耕作放棄地をそのままにしておくと、イノシシなどの獣害が拡大します。ススキなどの下草は有機栽培にも有効活用できるので一石二鳥です。

◆放射能も安心
 福島原発事故の後、月ヶ瀬のお茶の汚染も大変心配しましたが、オルターや外部測定機関での精密検査の結果、オルター取扱い全製品とも飲用の状態で1Bq/Kg以下の検出限界で不検出でした。

◆川に魚を呼び戻したい
 岩田文明さんのご両親、岩田文祥さん、美代さんは約30年前から無農薬のお茶作りに取り組んできました。ご両親が無農薬に挑戦されたきっかけは奈良市の消費者グループとの出会いでした。
 岩田文明さんは、親の後を継ぐだけでなく、自分の個性を伸ばすことを考えて、紅茶作りに取り組まれました。緑茶としてはなかなか売りにくい二番茶が、渋み(タンニン)が多く、おいしい紅茶作りに向いていることを念頭においてのことでした。この紅茶作りは拙著『あなたのいのちを守る安全な食べもの百科』P137にご紹介しました。
 岩田文明さんは小さい頃、近くの川での魚とりが大好きでした。そのハヤ、サワガニ、フナなどが生息していたはずの小川が、いつの間にかいくら探してもドジョウの一匹も見つからない死んだ川になってしまっていたのです。魚たちが姿を消した原因は、田畑に使う農薬や化学肥料の影響、コンクリート護岸、家庭排水だと思いました。将来この川に魚を呼び戻すことが自分の果たすべき役割だと思い、自分の職業は有機農業しかないと決断なさったのでした。
 有機製茶を通して、食べる人と出会い、上流、下流という川の線で結び合い、人と人との信頼、都市と農村のバランスを取り戻し、一緒に学びあい、元気一杯にいつまでも暮らし続けられる環境を作っていきたいと考えておられます。その一環として、近在の仲間と一緒に毎月1回、奈良駅前にてオーガニックマーケットに出店しています。
 オルターへのご紹介はオルターの野菜の生産者である谷農園の小倉和久さんでした。その谷農園が岩田さんのお茶を小分け・販売を担当し、障がい者作業所の運営費として役立てています。ちなみに文明さんの奥様ルナさんは、オルターのみかん生産者無茶々園の創立者片山元治さんの娘さんです。

月ヶ瀬健康茶園のお茶
■お茶の品種
●緑茶用
 やぶきた、おくみどり、さやまかおり、はつみどり、さえみどり、
 しゅんたろう、在来(やまとみどりの実生、やぶきたの実生)

●玉露用
 ごこう

●紅茶用
 べにひかり、べにふうき、べにほまれ、べにふじ、いんど、べにかおり、
 べにたちわせ、あかね、はつもみじ、さつまべに、印雑131

●烏龍茶用
 青心大パン、青心烏龍、大葉烏龍、そうふう

■栽培方法
 茶園によって管理方法は違いますが、農薬、除草剤、化学肥料、動物質由来の肥料を全く使用していません。ミノムシ、シャクトリムシ、チャドクガなどは一匹一匹手でつまんで退治しています。お父さんから、畑ではキョロキョロして歩けと教えられているそうです。茶園の畝間にはカヤや、すそ刈りした茶、を敷いています。カヤはお茶にとろみや甘みを出すのに、ワラより力があります。
 肥料は、微生物を活性化させるよう工夫しています。ススキ、笹といった下草、落葉、椎茸原木、えひめAI(自作微生物資材)、菜種油粕(平田産業)、水溶性マグネシウム(川合肥料またはジャパンバイオファーム)、クレイン2号貝化石(川合肥料)、ケルプペレット(ジャパンバイオファーム)、米麹エキス(川合肥料)

 原発事故以降、茶畑に投入する肥料などの資材は、すべてロットごとに放射能検査を行い(検出限界値1Bq/Kg未満)、検出されなかったことを確認したうえで施しています。魚粕については、海の放射能汚染の実態が分からないということで使用していません。

■栽培方法
 自家製茶工場で行っています
@刈り取り・・・刈り取った茶は冷風を送風し、ただちに製茶に入る。
A蒸熱・・・山の井戸水をボイラーでわかした蒸気を30〜50秒あてて、茶葉の酵素作用を止める。この工程で品質の良し悪しが決まる。
B冷却・・・送風して冷やす。
C粗揉(そじゅう)・・・揉捻機で粗揉。
D揉捻
E中揉(ちゅうじゅう)・・・中揉機で中揉。
F精揉(せいじゅう)・・・精揉機で精揉。形を締め、香味をよくする。
G乾燥
H貯蔵・・・冷蔵庫で貯蔵していますので、お盆以降は、まったりした味に熟成されていきます。

■有機一番摘み月ヶ瀬煎茶
 5月の新芽だけを使っています。この煎茶は、見かけをよくするための加工や選別を行っていない荒茶です。
 70〜80℃まで冷ましたお湯で2〜3分待ってから濃淡のないよう廻し注ぎ、最後の一滴まで注ぎきって下さい。二煎目、三煎目は熱い湯でいれると渋味も楽しむことができます。

■秋番茶(青柳)
 渋味が少なく、ちょっと青っぽさのある淡白な風味が特徴の緑茶(番茶)です。熱湯あるいは水出しでお飲み下さい。
 秋番茶は昔から糖尿病によいとされています。10月からは色のよい新物が出荷されます。春の青柳は、味は大丈夫ですが、どうしても色落ちがあります。

■粉末緑茶(食べるお茶)
 粉末加工は、委託なさっています。粉末緑茶は煎茶の栄養をまるごと摂取できますので、お湯に溶かして、またお料理してお召し上がり下さい。チャック式の袋なので、保存にも便利です。

■有機ほうじ番茶
 6月の番茶と秋番茶で加工します。煎茶と同様の工程で製茶した後、注文に応じて焙煎器で3回、キツネ色にまでします。茶葉の芯まで遠赤焙煎器で芳しい香りに仕上げた茶色のお茶です。お休み前でも眠りを妨げることはありません。必ず熱湯で4〜5分待ってからお飲み下さい。茶葉を布袋に入れて沸騰したてのヤカンに入れ、冷やしてもおいしいです。
大和地方の郷土色「茶粥」は、木綿袋にほうじ番茶を入れて米の7〜8倍の湯でよく煮出します。米が踊る状態で強火で約20分、糊が出てきたらかき混ぜないで弱火で約10分、そして塩味で。さらっとしたおいしさです。

一般のお茶の農薬使用例
■茶樹病害虫防除暦(例)

※病害虫の数字は、薬剤名の数字に対応しています。

<防除時期>
 3月上旬〜4月上旬(萌芽前)
<病害虫(所により主要になるものは異なる)>
 カンザワハダニ
<薬剤名>
 オマイト乳剤

<防除時期>
 4月〜5月 一番茶伸育期から摘採まで
<病害虫(所により主要になるものは異なる)>
 @カメムシ類 Aチャノホソガ Bカンザワハダニ
<薬剤名>
 @ホスバー乳剤 AバダンSG水溶剤 Bミルベノック乳剤

<防除時期>
 6月〜7月下旬 番茶摘採直後から二番茶摘採まで
<病害虫(所により主要になるものは異なる)>
 @カンザワハダニ Aコカクモンハマキ Bクロシロカイガラムシ Cナガチャコガネ Dたんそ秒・もち病 Eチャノホソガ
<薬剤名>
 @ニッソランV乳剤・ダニトロンフロアブル Aバシレックイス水和剤・マッチ乳剤50 Bアプロード水和 剤・スプラサイド乳剤40 Cフォース粒剤 Dスコア水和剤・銅水和剤 Eカスケード乳剤・DDVP 乳剤50

<防除時期>
 7月下旬〜9月下旬 二番茶摘採後から秋芽伸育期まで
<病害虫(所により主要になるものは異なる)>
 @輪斑病・新梢枯死病 Aたんそ秒・もち病 Bミドリヒメヨコバイ・チャノキイロアザミウマ  Cチャノホソガ Dカンザワハダニ Eクワシロカイガラムシ Fコカクモンハマキ 

<薬剤名>
 @アミスター20フロアブル・銅水和剤 Aダコニール1000・銅水和剤・インダーフロアブル Bアドマイヤー水和剤・アプロード水和剤・パダンSG水和剤・コテツフロアブル Cマトリックフロアブル Dバロックフロアブル・マイトコーネフロアブル Eアプロード水和剤・スプラサイド乳剤40 Fカウケード乳剤・アタブロン乳剤・バシレックkス水和剤

<防除時期>
 10月下旬〜秋芽充実期 
<病害虫(所により主要になるものは異なる)>
 カンザワハダニ
<薬剤名>
 アタックオイル・ミルベノック・乳剤・石炭硫黄合剤

■茶樹の除草剤

<除草剤名(商品名・有効成分)>
バスタ液剤(グルホシネート18.5%)〔普・A〕
<使用時期>
雑草生育期(摘採7日前2回以内)



―文責 西川榮郎(オルター代表)―


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