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400年を超える伝統の豆みそ 佃さんのねさし味噌
カタログ“2003年7月4週”
 大豆と塩だけで作る豆みそといえば、有名なのは八丁味噌。尾張の八番町あたりに味噌屋が集まっていたのでついた名前。しかし、今では八丁味噌といっても、残念ながら昔ながらの伝統的な製法のものはほとんど残っていません。
 ねさし味噌の佃商店の佃きくえさんは、徳島県川島町で、豆みその伝統的な製法を続けています。なぜ、徳島県で東海地方の伝統的な豆みそが残っているのかというと、豊臣秀吉の時代に、蜂須賀小六が尾張から阿波(現在の徳島県)へ移った際、その製法も伝えられたからです。徳島といえば、米こうじ味噌の文化圏で、その中に豆みそがあるのは不思議なのですが、それには養蚕との関係があります。 佃さんの在所は、水を引くのが大変だったところで、水田よりも養蚕のほうが盛んなところでした。そのため、米は貴重で、米こうじを使う米こうじ味噌より、大豆だけを原料とする豆みそが作られ続けたのでした。また、養蚕に使った棚が空いた冬の時期に、味噌玉を並べる棚として使えたからです。昔は付近で盛んだったこの豆みそ作りも、今では伝統を守っているのは佃さんのところぐらいになっているのです。
 佃家が味噌作りを始めたのは、江戸の中期。きくえさんの息子で現在の当主、佃勇治さんは6代目となります。私(代表)が出会った当時は、消滅の危機にありましたが、6代目がその伝統的価値に気付かれ、その復活を果たしてこられました。最近ではテレビの「どっちの料理ショー」の特選素材やいろんな雑誌にも紹介され、その伝統のよさや希少価値が見直されてきています。
 有名になって、少し困っていることもあります。軽い気持ちで注文してくれるのですが、どちらかというとクセのある味の豆みそ。そのことをよく理解せず、その使い方も知らないで、届いてから、そのクセにクレームをつけてくる人がいることです。愛知、岐阜、三重の東海3県の出身者なら、そのまま味噌汁にしておいしいと思う人は多いのでしょうが、ねさし味噌は肉や魚料理との相性がよく、かきのどて鍋やきゅうりの酢みそ和えを除くと、どちらかというと単独ではなく他の味噌との合わせ味噌に向いている味噌なのです。つまり、米こうじ味噌と「ねさし味噌(豆みそ)」を合わせて、いわゆる赤だし味噌として食べるのが、万人向けの使い方といえるでしょう。
 以前は7年目のねさし味噌もあったのですが、最近では売れすぎて、深い香りと濃厚な味を持つために必要な満2年の熟成を待ちかねて出荷されるようになっています。したがってご注文をいただいても、その数量によってはお届けまでお待ちいただくこともあるのです。


佃きくえ、福義さんご夫妻
佃商店のねさし味噌
 飛鳥時代の手法とほとんど変わらない、味噌作りの原型と限りなく近い作り方です。原料も大豆と塩と水のいたって簡単なものです。400年を超える伝統のままの豆みそです。

原料
 大豆…地元の大豆。不足するときは国産大豆を購入します。
 塩……鳴門塩業イオン交換塩(オルター仕様の塩ではありません)
 発酵菌…代々家に住みついている麹菌、酵母主体の家つきの微生物。

製造方法
 1月の寒中に仕事を始めます。
1日目
 @大豆を洗う。
 A水に浸ける。
2日目
 B釜で5時間ほど煮る。
  燃料は今でもまきを使います。
  こうすると、 指にはさむと潰れるほど柔らかく煮えます。
  ガスなどで炊くと、冷めやすく、固くなるのが 早くなってしまいます。
 C煮上がった豆を竹ざるに打ち上げ、煮汁を切る。
 D大豆が熱いうちに、ミンチ機で潰す。
 E中に空気が入らないようにして味噌玉を作り、一晩おいて水分を飛ばす。
3日目
 F味噌玉を厚さ3mmくらいに輪切りにして、室の筵(むしろ)の上に並べる。


味噌玉
味噌玉を輪切りにする
7日くらいで
 G銀ねずみ色の薄綿のような微生物が味噌玉の一面を覆ってくる。
 H味噌玉を段々と小さく割って、断面にも微生物を繁殖させる。
 Iカチカチに乾かす。
  ほぐして空気を入れ、カチカチに乾かす(豆麹の完成)。
10〜14日くらい
 J完成した豆麹に約15%の塩水を加えながら、 豆麹を潰す。
 Kミンチ機で均一にして潰し、杉樽に仕込む。
7月(土用)の頃
 Lくり直す。再度ミンチ機にかける。
 Mこれを3回くらいして、塩が平均化したら
  重石をのせ、丸2年(足掛け3年)、じっくりとねかし、熟成させる。



一面の微生物
仕込み樽
佃さんの 米こうじ味噌 ・ 赤だし味噌
佃さんの米こうじ味噌

原料
 米……近所の農家の地元米。物々交換の長年のお付合いをしている。
 米麹
 大豆…同上
 塩……同上

製造方法
 @セイロで蒸した米に米麹菌をつけて、米こう じを作ります。
 Aねさし味噌と同様に、煮た大豆に大豆1:米こうじ1の割合で混ぜ、
  ミンチ機にかけて混合し、 塩を加えて、杉樽で約1年間熟成させる。



佃さんの赤だし味噌

 「ねさし味噌」と「米こうじ味噌」を1:2で混合したもの。


市販の豆みその問題点
 米こうじ味噌についての一般的な問題点は、カタログ2000年11月第1週の市販の味噌の問題点の頃をご参照下さい。
 豆みその場合、佃さんのように、昔ながらの伝統的な手法、道具で作られてはいません。八丁みそとして売られているものでも、味噌玉を作ったり分割することはしていません。また、家つきの微生物を使わず、種麹を使っています。熟成期間が短いものは、味が深くなっていません。
 また、原料の大豆にはポストハーベスト農薬、遺伝子組換えの心配があります。


(文責:西川栄郎)

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