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宍道湖の環境を守り続けたヤマトシジミ
カタログ“2006年2月2週”
宍道湖の環境を守り続けたヤマトシジミ
 寒しじみがおいしい季節です。中でも汽水域のヤマトシジミは、濃厚なうまみがあります。
宍道湖の環境を守り抜いた漁師さんの心意気を感じつつ、しじみ汁や酒蒸しにしていただきましょう。

●生態系と生活の場を守る闘い
 公共事業の名の下に、不必要なダム、河口堰などを作って税金を喰いものにする土建行政が全国いたるところで横行し、大切な自然や住民の生活の場を奪ってきています。
 宍道湖、中海も水門で閉め切り、淡水化する計画が持ち上がったのは1959年でした。淡水化は最大の地場産業ヤマトシジミの絶滅を招き、半農半漁で生活している漁師さんたちの生活の場を奪うおそれがありました。湖の汚染、魚や海藻の喪失、洪水、地盤沈下、地下水枯れにもつながります。
 このような淡水化計画に対し、宍道湖のシジミ漁師さんたちは、一度は受け取った漁業補償を国へ突き返し、敢然と反対に立ち上がりました。それを機に地元住民はもとより、この反対運動は全国に拡がりました。私たちも署名運動などに加わり、この反対運動の支援を続けてきました。そしてついに1988年、淡水化工事の無期延期を勝ち取り、さらに完成した水門が一度も使われることなく、現在取り壊しが始まっています。
 この38年にも及ぶ環境や生活の場を守る闘いで、宍道湖は首の皮一枚を残して守られました。今も、完成した堤防を開削させ、水の流れを取り戻す闘いが続けられています。
 この闘いの中心にずっといらっしゃった原俊雄さんたち漁師さんの目線は、さらに自らの生活の見直しや流域住民の生活の質を問い直そうとしています。
 宍道湖のヤマトシジミは都市の住民と身近な関係を作り、宍道湖の生態系と台所の安全を守る象徴として食べ続けられてきました。
「しじみネットワーク」(西村敏事務局長)は1989年より、このヤマトシジミの提携活動を続けています。

リーダーの原俊雄さん(左から3人目)と漁師さんたちとしじみネットワーク西村敏事務局長(最前列)
2005年12月4日に実施したオルター生産者見学バスツアーでのシジミ漁体験
●宍道湖のシジミがおいしいわけ
 日本のシジミはその6割が宍道湖のシジミです。国内の他産地のシジミは利根川、長良川、河口堰など乱開発で次々と姿を消し、今や北海道のサロマ湖や青森県の十三湖などわずかに2割ほどのシェアとなり、あとは残念ながら韓国、北朝鮮などからの輸入に頼っています。
 宍道湖のヤマトシジミがおいしい最大の理由は、斐伊川の淡水と中海からの海水が混じる汽水域で生息していることです。そのため浸透圧の関係で、汽水域の塩分濃度と同じように、シジミの体液濃度を保つ必要があるので、うまみ成分が濃くなり、真水で育つセタシジミやマシジミと比べておいしいのです。
 宍道湖のヤマトシジミは5〜7月頃産卵し、卵は潮の流れで浮遊し、湖の全域へ拡がり、貝殻ができてくると、その重みでその場に沈んで大きくなっていき、約3年で成貝となります。黒色の泥地のシジミと、茶色の砂地のシジミがあり、また貝殻のつながっているところがピンク色に染まったものは「口紅シジミ」といって喜ばれます。
 産卵の5〜7月が一年中で身もふっくらしてもっともおいしく(土用しじみ)、その次は冬ごもりのために栄養をたくわえる寒い時期(寒しじみ)がおいしいとされます。寒シジミは深く潜っていますので、寒風の中、より漁に苦労があり、冬季は季節風などで休漁を余儀なくされることがあります。

2005年12月4日に実施したオルター生産者見学バスツアーでのシジミ漁体験
●宍道湖のヤマトシジミの偽物の横行
 淡水化反対運動が全国的に広がる中、宍道湖産シジミは市場でも有名になってきました。しかし逆に宍道湖産と表示しながらその中に輸入シジミ(主として韓国産や台湾産といわれる)を混ぜた「偽表示シジミ」の横行が言われるようになりました。
 松江市民の間でも、地元スーパーで買うものより、漁師さんから直接もらう、しじみネットワークのシジミの方がおいしいという評判がたちました。こうした中で、冬場湖が荒れてシジミ漁が少ない日でも、遠く石川県の市場にはいつもと同じ量のシジミが出荷されているということから、島根県によってこの悪徳業者が摘発されるという事件まで起きました。
 その後この「偽表示シジミ」の横行はなくなったとされていますが、やはり湖を守る漁師のみなさんの顔の見えるシジミをお届けするのが一番大事なことと思っています。
 琵琶湖産などの真水のセタシジミやマシジミは、汽水域のヤマトシジミより味が落ちます。また店頭で水に浸けた状態で売っているシジミがありますが、おいしい汽水域のシジミなら味が失われてしまっておいしくありません。

おいしく食べるコツ
●届いたシジミはもう一度選別を
 年に1〜2回「炊くと黒い汁が出てきた!」ということがあるそうです。これはガボといって泥をかんだまま殻の口を固く閉ざして死んでいるシジミが混ざっていたため、その泥がみそ汁を汚すのです。漁師さんはガボは殻のつや(光沢がなくなっている)などで、すぐ見分けられるので選別されていますが、たまに見落としがあるためだそうです。

●冬場のしじみの砂出し
 汽水域のヤマトシジミですので、真水だとうまみが逃げてしまいます。少し塩を入れて、海水濃度の1/3くらいにしておくのがコツです。冷たい水だと砂をはくのに時間がかかりますので、15〜20℃くらいでして下さい。ボールの中にザルを入れて砂出しすると再吸着しなくてよい。


     
        ー文責 西川栄郎ー


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