伊賀ナーセリーガーデン(1) 消費者のことを考えた花づくり |
|
緑に触れることは癒しに繋がり、健康にもよいということで園芸療法が行われています。
伊賀ナーセリーガーデンの石見彰教代表は、花みどりの里(前川良文理事長)において、この園芸療法を基にした園芸福祉に取組んでいます。高齢者の生きがいや地域の活性化がねらいです。
また伊賀ナーセリーガーデンでは、消費者のことを考え、無農薬や本物の良質な花づくりに取り組んでおられます。 |
| |
|
▽▽ 土…単品資材を配合しています。
・山土(まさ土) ・燻炭(稲のもみがらを炭にしたもの) ・パーライト(鉱物) 環境や一般的人体などに問題がないとされていますが、常時使用している生産者においての微粉の吸引などによる呼吸障害が問題化していますので、今後は代替品を検討していきます。 ・苦土石灰 ・ピートモス(カナダ産) より原料を明確にするために、8月定植分からは、ヤシガラを5〜7年腐食させた繊維(ココピート)に切替えます。 ・有機質堆肥(液肥) ・堆肥(牛糞、もみがら原料)
今回のものは、初期肥料(元肥)として化学肥料を使用していますが、8月定植分より有機肥料に変更予定です。液肥については化学性のものと、有機性のものを状況に応じて使い分けをしていますが、今後については有機液肥の割合を増やす予定です。
▽▽ 育苗の方法 @プラグトレイに自家配合した土を入れて種を蒔き、 3〜6週間置く。 Aビニールポットへ定植し、 2〜4ヶ月置く。 B出荷
▽▽ 病害虫の予防 農薬について、化学農薬は原則として使用しません。ただし、植物によっては予防的に必要な場合があり、その場合初期段階にのみ、平均希釈倍率より薄めに使用しています。全体の苗の2%程度に実施しています。 基本は木酢液を使用。
そのほか、以下のものを使用しています。 ・アグリクール…漢方で下剤として使われているグラフ抽出エキス。 ・月桃……………沖縄方面のショウガ科の植物。その葉の抽出液。 ●トウガラシ、ニンニク、牛乳を使用する場合があります。
ハウスの床の土には、塩水とコーヒーカスをまいて制菌しています。 健康な苗にするのには、水をやりすぎないのがコツ。 また種子の発芽の際、堅めに固めた土の上で、 一生懸命発芽させることで丈夫な苗になります。
▽▽ 除草 除草剤はハウス内・ハウス周りはもちろん、周辺農家の方においても 一切使用していません。
|
| |
▽▽ 矮化剤の使用について
植物によって矮化(徒長予防)の必要があるものについて、 昼夜の温度差・日照時間差・整枝などを利用しての矮化に努めていますが、 天候状況や花の性格上必要な場合は使用しています。 したがって、花付ではなく、ラベル苗(幼苗)での購入(矮化剤使用前)をお勧めしています。
「花を咲かせた苗」と「これから咲く苗」・・・・・・・・・・
市販では見栄えのために、花を咲かせた苗が一般的です。 しかし、矮化剤のことや咲く楽しみのことを考えると、 これから咲く花の苗(幼苗)も扱うことにします。
|
|
|
通常は不要になったビニールポットはゴミとして焼却されています。これでは環境汚染になりますので、回収して何回もリユースします。 陶器の植木鉢は安全上よい素材なのですが、重たくて作業性が劣り、使用することをためらっています。生分解性の紙ポットは耐久性が劣り、とりあえずとして現状のままのビニールポットで取扱いを開始します。 回収に際しては、土を水だけで洗い流しておいて下さい。洗剤、石鹸の使用は決してしないで下さい。土さえ洗い落とせば、ポットが汚れていても結構です。
※不要になった土の回収も検討していますが・・・ 今回はポットだけの回収にさせていただきます。
水切れに注意 ポットの苗は、1日くらいで水切れを起こしてしおれてしまいますので、 届いた苗の水管理をしっかりして下さい。 ただし品種によって、水の要求度が異なります。
|
|
|
花には、農薬やホルモン剤の規制が全くありません。
そのため、野菜や果物以上に危険な農薬が使われていることがあります。とくに、大手メーカーのバイオ技術を駆使して、工場的に栽培されているものは要注意です。 生花や観葉植物を室内に置くと、それらから揮発してくる農薬を吸う危険があります。また、赤ちゃんや痴呆老人が口に入れる危険もあります。花屋の仕事をしている人の手は、農薬でかぶれています。
生産者と消費者の顔が見えない市場流通では、花卉市場や問屋、ホームセンター重視の生産が行われています。すなわち切花や苗は、セリで値段がつきますので、通常セリのときが一番見栄えがよいように出荷しています。そのため、店頭から家庭へと品質は下降していくことになります。
花苗については、早く花を咲かせるため、肥料を切って花芽を作らせ、黄色くなる葉はホルモン剤を使って緑に見せています。こういう苗は手元に届いた頃にはすぐ枯れてしまいます。
生産者が程度のよくない苗を出荷していることもあります。化学肥料を多投して見栄えをよくしている場合、定植してからは枯れてしまったり、勢いがなくなります。それは、過保護に育てられた苗は育てにくいということです。こういう場合、花屋や苗屋に文句を言いにいっても、あなたの扱い方が悪いと言われてしまいます。苗は見栄えではなく、植えてからよく育つかどうかが品質上大切なことです。
病害虫にかかっている苗、根がはっていない苗、出荷時期が遅れて根が大きくなり、土が減って、根が老化していることもあります。消費者は植物の地上部を見ますが、根のことを考える人は少ないのです。消費者が飛びつきやすい商品開発ばかりが重視されていて、度重なる交配などで軟弱な苗、花ばかりが出回っています。
育苗に土を使わず、発泡スチロールのようなプラスチックを使っていることがあります。これをそのまま畑に入れるのは問題です。
園芸用に売られている「コケ(モス)」、「樹皮(バーク)」など、原産国によってはチェルノブイリの放射能汚染があることがあります。 水切れでしおらせないために、土にゲル状のポリマーを使っていることがありますが、コストは下がるかもしれませんが、環境汚染を招いています。
スプレーで植物の表面にポリマーで膜を作っていることもあります。
花は自分を守るために、いろんな毒を出しています。極端なことをいえば、毒のない花はないくらいです。スイセンや福寿草の根にも毒があり、折った枝からかぶれる液を出す「マラコイデス」もあります。花を安全に楽しむためには、そのような知識を十分に得ることも必要です。
現在では、年中いろんな花が、冷蔵技術などを使って栽培され、また輸入されています。そのため、花も野菜や果物と同様にすっかり旬の分からない状態になっています。
公共事業などの需要が減って、卸価格が低迷しています。生産者は、コスト低減に努めていますが、市場価格へは反映していません。
花苗などの生産、流通過程において、プラスチックなどの廃棄物が多量に発生していますが、誰もそのことに関心を持っていません。
(文責:西川栄郎)
|
|
|