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ホンモノを食べたい ―夏― 山形・米沢郷牧場の肉用鶏 抗生物質使わず飼育
通信838号資料記事
7月3日オルターの会員集会でも発言して下さった、米沢郷牧場の伊藤幸吉さんが紹介されています。
・・・神戸新聞2004年7月13日(火)より記事転載・・・
 
 真っ赤なトサカと黄色い脚が健康そうだ。丸々と太った鶏が、明るい鶏舎で奇声を上げながら飛び回っている。宮城県七ケ宿町の「まほろばライブファーム」の肉用鶏には、抗生物質が一切使われていない。
 養鶏場を経営する米沢郷牧場(山形県高畠町)の代表、伊藤幸吉さんは「以前は誰も信用してくれなかったけど、最近じゃ技術欲しさに給料を三倍出すと言って従業員を引き抜こうとする業者も出てきた」と話す。
 効率優先の養鶏場では、ほとんど床が見えないほど過密状態で鶏を飼育する。病気の感染を防ぐために窓を閉め切り、薄暗い鶏舎でストレスを募らせた鶏は、大量の抗生物質に頼らざるをえない。
 では、ここでは薬を使わずに、どうして病気にならないのか。
 秘密は、えさと飲み水に含ませた“有用微生物”。これを与えると病原菌を寄せ付けず、免疫力も高まるという。ストレスをためないよう窓が開放され、ゆとりのあるスペースが保たれている。
有用微生物のおかげでにおいも少ない。「おれんとこの鶏づくりは世界に負けない」と話す伊藤幸吉さん=宮城県七ケ宿町の「まほろばライブファーム」
 肉用鶏の生産を始めたのは1980年。伊藤さんが以前から取り組んだ野菜などの有機栽培に注目した首都圏コープ事業連合からの要請だった。それまで養鶏の経験はなかった。年間5,000万円もの技術開発費を投じて薬品に頼らない飼育法にこだわる伊藤さんを、変人扱いする同業者もいた。
 変化が訪れたのは90年ごろだ。ミネラルと有用微生物をたっぷり含んだ水を使用し始めると、生産が飛躍的に伸びた。
 「今は年間150万羽を出荷できるようになった。趣味で一羽や二羽を飼うなら易しいが、ある程度の規模で飼育するには大変な技術がいる」
 もも肉に軽く塩をしただけのソテーと、から揚げを食べてみた。かめば程良い弾力で、濃密な鶏の味がじゅっとしみ出てくる。胸肉もしっとりした歯応えだ。
 ほとんどの養鶏場は感染を恐れて見学を受け入れないが、伊藤さんは誰にでも見せてきた。それほど育てた鶏の「強さ」に自信があるからだ。
太らせることだけを目的に生産されたものと違い、米沢郷牧場の肉用鶏はそれぞれ大きさが違うという=福島県元宮町の工場
 だが、鳥インフルエンザの影響でそれができなくなった。東海地方以北の被害はまだ報告されてないが、何しろ相手はカラスが死ぬほどの強敵。白い防護服と長靴を着用し、トラックも消毒しなければ敷地に入れない。
 「BSE(牛海綿状脳症)も鳥インフルエンザも、何か薬に支えられた畜産の末路のような気がする」と伊藤さん。「大変ですね」と言うと「これまでも道なき道を歩んできた。今回もくじけてはいられない」と力強い答えが返ってきた。


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