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イリーナ・エルマコバ博士の ラットの給餌試験で表面化した遺伝子組み換え大豆の有害性
オルター通信937号記事
新生ラット死亡率55.6%、発育不良も多発
日本有機農業研究会「土と健康」No.380 2006年6月号より転載

日本有機農業研究会 科学部 山田 勝巳

■待ち望まれていた実験
 ここで紹介するのは、きわめて簡単な給餌試験である。なぜこれまで、このような試験が行われなかったのか不思議な気がする。マッカリソン(レンチ著『健康の輪』参照)は、健康なフンザ人の食事と不健康な人々の食事を与えて食事の影響をはっきり証明し、ネズミの給餌試験の再現性を動かしがたいものにしている。 彼は総数3700匹近いマウスで実験し、食事のまぎれもない影響を確認しているが、GM食品が出回ってから10年以上経過しているなかで、このような試験がこの間ずっと待ち望まれていた。
 このような論理的根拠に基づいた実験をより具体的に総合的に行うことが、今後のGM作物阻止活動の課題だと思う。日本国内でも再現試験が行われること、そして近い将来、エルマコバ博士の研究が、より大きな規模で再開されて本来の実験が完了することを願うものである。また、ロシアでの実験のように、妊娠前から授乳までの短期間ではなく、数世代の給餌試験が行われるべきで、世代を越えた影響を、少なくとも3〜4世代(途中で途絶えなければの話だが)は試験する必要がある。

■ラウンドアップレディ大豆粉末を餌に混ぜて実験
 2005年10月30日、アメリカ環境医学会(American  Academy of  Environmental Medicine)によると、ロシア科学アカデミー(RAS)の高等神経活性と神経生理学研究所の生物学者イリーナ・エルマコバ(Irina Ermakova)博士が提出した研究結果によると、ラウンドアップ・レディ大豆粉末を妊娠前から妊娠中そして授乳中にかけて与えられた雌のラット群の子は、生後3週間の死亡率が55.6%(表参照)という異常に高い数値を示しており、生まれた子の体重も異常に少なかったという。
 エルマコバ博士の実験は、GM大豆を親ラットが食べるとその子にどんな影響が出るかを調べるもので、妊娠2週間前から妊娠期間を通して授乳期間まで、1日5〜7gの大豆粉末を餌に混ぜて与えた。対象群のラット用の餌のみ(大豆なし)と、GM大豆群、非GM大豆群が同期間試験給餌されている。GM大豆群の子ラットは生後2週間の体重が20g以下のものが36%もあり、他の群の6%と際立った違いがあった。
 さらに、GM大豆群から生まれた45匹中、25匹(55.6%)が3週間以内で死んでしまった。非GM大豆群では33匹中3匹(9%)、大豆なし群では44匹中3匹(6.8%)だった。エルマコバ博士は、この実験が小規模のため「予備試験」であるとしており、今後さらに実験内容を充実し、臓器などの詳しい調査なども検討しているが、それには7万ドルの研究費がかかるという。

■GM大豆の抱える問題
 現在日本では、GM大豆が大量に輸入され、大豆油、レシチン、増量材等として食品に利用され日常的に消費されているが、安全性については「実質的に同等である」というモンサントが提出した資料でしか確認しておらず、さまざまな問題が指摘されてきた。FDA (米食品医薬品局)の専門家は、モンサントが申請していたGM大豆が一般の大豆とは異なっており、アレルギー性、毒性、栄養などに関して長期的な試験が必要であることを、食品としての認可以前に指摘していたことが、後の裁判資料で判明している。これまで、GM作物の動物給餌試験は、短すぎてガンや生殖障害、子孫への影響が調べられておらず、また生化学、免疫学、組織病理学、消化器機能、肝臓、腎臓機能の面で適切に調査されていないと指摘されてきた。
 その意味でエルマコバ博士の実験は大変重要といえる。あらゆる困難や妨害を排除して、是非ともこの総合的な試験を実現したいものだ。

■これまでに指摘されてきた問題
1 GM大豆を与えられたマウスの肝臓に核の形状異常や細胞異常が見られ (2001年、ジユディ・カーマン)、膵液分泌が極端に落ちるという膵臓機能障害(2002年)も見られた。
2 調理したGM大豆にはレシチン量が約2倍になっており、養分同化を阻害する可能性がある (1996年、ステファン・R・パジェット等)。
3 イソフラボンが12〜14%少ない (1999年、ラッペ、ベイリー、チャイルドレス等)。
4 モンサントの給餌試験は、問題が出ないように行われていると強く非難されている(1996年、パジェット)。試験では、影響が出やすい若いネズミではなく、大人のネズミが使われ、大豆も12倍にも薄められ、使った蛋白質量が多すぎ、臓器重量はまったく計っておらず、ネズミの試験開始時の体重もバラツキが大きすぎる。栄養評価では、非GM大豆より灰分、脂肪、炭水化物に有意差があるうえ、蛋白質と脂肪酸とフェニルアラニンは少ない。加熱処理後に既知のアレルゲンが27%増加するとあるが、原本ではそれが3〜7倍増になっているなど、都合の悪いデータは排除していたことが後で判明している。
5 イギリスではGM大豆が出回ってから食物アレルギーが50%も増えている。大豆に組み込まれた遺伝子には、既知のアレルゲンと同じ配列が2ヵ所もある。また、人の摂取試験では腸内細菌にGM遺伝子が入り込むことが確認されており、GM大豆を食べなくなってもアレルゲンを生成し続ける可能性がある。
6 ドイツの研究者(1994年、ドーフラー/シュバーツ)は、妊娠中のマウスが食べたGM遺伝子の断片を新生児の脳で発見している。GMコーンを食べた子豚の血液、脾臓、肝臓、腎臓にGMの断片を発見している(2005年、ラファエル・マザル)。
7 母親がGM食品を食べることで胎児や授乳、食事を通して子供に悪影響を与えることが懸念される。GM遺伝子の不安定性は多くの学者が指摘しており、正常な遺伝子を不規則に移動したり、発現させたり止めたりといったことが起こる。GM植物の細胞培養ではDNA全体に数え切れないほどの変異を起こすことが知られているが、これらは正しく評価でされていない。しかし、2001年、P.Windels, I.Taverniers, A.Depicker, E.Van Bockstaele, and  M.Deloose “ ラウンドアップ耐性大豆挿入片の同定”、Europian  Food  Research and  Technology,  vol.213, 2001にその一部が明らかになっている。
8 GMトマトをマウスに強制摂取させたところ、前がん性の細胞増殖が起こり、脳、肝臓、精巣が小さいもの、免疫機能が損傷を受けるもの、肝臓の肥大、局部萎縮、病斑、腎臓炎、血球異常、高血糖値、原因不明の死亡増加等が起きたが、追試も説明もされていない。
 ※以上 Jeffey Smith 氏主宰のInstitute of  Responsible Technologyより許可を得て引用

■給餌実験・研究を支援しよう!
 エルマコバ博士の研究は簡単に追試できるし、結果ははっきりしている。生後3週間以内の死亡率55. 6%は看過できない。確認するために追試が必要である。
 アメリカ環境医学アカデミーは、保険省(NIH)に対し、大豆ばかりでなくトウモロコシ、キャノーラ、綿実などアメリカ人が日常的に大量消費している遺伝子組み換え食品の危険性について、独立した厳密な長期試験を行うべきだ、と要請している。
 しかし、実験研究で問題となるのは、GM品種は一般に組込み遺伝子の配列が不安定であることが判明しており(2003年、コリニエー、バーシアー、ボイヤー等、フランス)、GM企業が記述しているものと異なっているだけでなく、試験するごとに別の異なった配列であるため、同じ結果が再現できない可能性が非常に高い。トウモロコシでも大豆でも一粒ごとに配列が異なっているため、その影響の出方も異なっているようだ。だから、ロシアでの実験を追試しても、同じ結果が再現しない可能性がある。しかし、組換えによる害があること、配列の安定性がないために害の出方が一定しないことのどちらも重大な危険因子であることには変わりない。
 アメリカとカナダの農家25軒が同じGMトウモロコシ品種を豚に食べさせて不妊になったり、偽妊娠や水のみで一杯になった羊膜を出産(?)したとも報じられている。ドイツの農家からは、牛の死亡(12頭)や病気を起こすGMトウモロコシが報告され、フィリピンからはGMトウモロコシ畑の周辺に住む人たちに花粉が飛ぶ時期に発熱を伴う皮膚、呼吸器、胃腸の疾患が発生しており、次の年も同じ症状が出た人の血液検査によって、GMコーンによるBt毒に対する免疫反応のあることが判明している。
 これらの問題は、特定のGM品種に限られたものか、GM配列が不安定なために起きた異常が一部表面化したのかは分からない。今後、このような事態を再現する給餌試験が非常に重要である。GM遺伝子の不安定性のために、結果は必ずしも同じではないかもしれないが、エルマコバ博士の実験のように、必ずなんらかの異常が発生するはずだ。
 エルマコバ博士は、次の実験計画を作成していると聞く。このような活動をこそ支援し、結果を出してゆくことが有害無益なGM食品やGM医薬品をなくすもっとも大きな力になると思う。
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