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干エビは生エビより、味がいっそう濃縮しています。
◆夫がエビ漁、妻が加工 瀬戸内海のほぼ中央に位置する小豆島、その北西にある小さな漁港、小豆郡土庄町小江の漁師、長栄 積さんはエビ漁一本の漁師です。漁獲したエビは活のまま、その日のうちに岡山の卸売市場へ水揚げします。活エビはそれなりの値段がつきますが、死んでしまったエビには値段がつきません。長栄 積さんの妻、喜美江さんは、そんな死んでしまったエビを、積さんに鮮度を落さないよう氷をうって持ち帰ってもらい、自宅で干エビに加工しています。この干エビ作りは保存食として代々伝わっています。 干エビは、生のエビより味が濃縮し、そのまま子どものおやつとして食べてもおいしいのですが、水に戻して、天ぷら、寿司、酢のもの、ピラフなどのエビ料理としてたいへん重宝に使うことができます。もちろん、だしとして使えます。
◆安全でおいしい国産天然エビ 拙著「あなたのいのちを守る安全な食べもの百科」P.96で解説していますように、市販のエビには養殖時や加工時に様々な化学薬品が使われており、魚貝類の中でも最も危険な食材といえます。長栄さんのエビは天然でかつ無添加ですので、安全です。また、たいへんおいしいです。国産の天然エビは養殖エビに押され、市場ではすっかり見かけなくなった、非常に貴重なものです。
◆エビ一本 長栄 積さんは二代目の漁師です。お父さんは本家から分家した漁師です。長栄 積さんは40年前の15才のときから漁師として働いています。当時は今よりもっと多くのエビが獲れていました。現在ではエビの収穫量は多いときには1日に100kgほど獲れることがありますが、少ないときは20kg前後しか獲れなかったりします。火曜、土曜を除く毎日13:00に出港し、23:00に水揚げします。その間5〜10回網を揚げます。 小豆島周辺で獲れるエビは地元でガラエビと呼んでいるシバエビとシラサエビです。シバエビは年中獲れますが、シラサエビは主に10〜12月に獲れます。 エビ漁船は約5トンの小型船で、底曳き網で漁獲します。これを地元では「エビコギ」と呼んでいます。冬期にはエビが砂にもどっているので「ゲタ漁」といって海底を少し掘るための爪を底曳き網につけます。 漁獲したエビは船の「生けす」で活かして運びます。市場へは活エビだけを出荷しています。死んでしまったエビは氷をうって自宅に持ち帰ります。
◆珍しいエビの丸干 加工は妻の喜美江さんの仕事です。沸騰したナベに、塩を入れ、エビを塩ゆでします。この塩加減にコツがあります。ゆでたエビは冷ましたあと、干カゴに入れ、2〜3日天日干しをします。たいへん珍しいエビの丸干です。 干している間も油断できません。ネコ、カラス、ハチ(エキスを吸いにくる)が狙っているからです。
◆年々貴重に 小豆島の小江漁港では長栄さんと同業のエビ漁師はまだ30数軒あるそうです。年々エビの漁獲量が減ってきているとはいえ、これだけのエビ漁船があるのは全国的にも珍しいことです。 エビ資源が減っているのは、沿岸の都市化、下水処理化がすすみ、自然の森からの腐葉土やミネラルの供給が減り、プランクトンが育ちにくいからだと思います。かつてエビの宝庫だった瀬戸内海のエビ漁がこのまま衰退すれば、ますます国産の天然エビは私達の口には入らなくなってしまいます。 漁の時間的制限や網の目の大きさの制限による管理は一応行われていますが、根本的な資源保護の施策は行なわれてはいません。また燃料代の高騰も経営を圧迫しています。 長栄さんをオルターに紹介いただいたのは、オリーブ素麺の生産者、岡上 兼一さんです。干エビは素麺のだしにとってもよく合います。 今後の方向性として、干エビだけでなく、生エビの小パック企画にも取組んでいただき、小江のエビを国産天然エビ復活のシンボルにしていきたいと考えています。
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■原料 ●エビ・・・小豆島小江漁港、長栄積さん漁獲のシバエビ、シラサエビ ●塩・・・並塩
■製造工程 @氷づけで鮮度を落さないように漁から持ち帰る Aエビについている汚れを水道水で洗う Bうすい塩水で15〜20分ゆがく Cエビ干し用のアミカゴで2〜3日、天日干しする
■保存方法 冷凍が望ましい。常温では色がかわってきます。
■召し上り方 ●そのまま、おやつや酒の肴に ●だし ●水に戻して、天ぷら(かき揚げ)、寿司、酢のもの、ピラフ、茶碗むしなどに ●フライパンで煎って、こなごなにつぶし、ふりかけに
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拙著 「あなたのいのちを守る安全な食べもの百科」P.96 参照
―文責 西川榮朗(オルター代表)―
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