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築200余年の醤油醸造蔵の耐震改修工事の実施について
オルター通信1044号 記事
 現代人の食生活及び価値観の変化によって醤油業界においても生き残りが難しいと言われている現代、各社、「だし・ドレッシング類」「たまごかけ醤油」又は「アイス専用醤油」などの仰天企画まで出して変化し生き残ろうと必死になっています。そんな中、滋賀丸中醤油は、創業以来守り続けてきた伝統蔵を、継承された古式製法の技法とともにこの時代、費用をかけてまで昔のままをあえて後世に維持する為の改修にとりかかることになりました。その費用は、醸造蔵の新築に比して【2倍】という小さな蔵元では大変な負担であります。「たかが醤油、されど醤油」、世の流れに逆行し、あえて変化しない試みに丸中醤油は挑戦します。

●広報の理由
・・・1
 丸中醤油は、古えの独自製法と味を守り続けている蔵元でございます。
 その味の要になるのは、創業以来守り続けて「宝」としている蔵と、滋賀の風土に培われた棲みつく微生物(醸造菌)が丸中醤油の味を大きく左右していると言っても過言ではありません。

・・・2
 日本に於ける醤油醸造業は近代に於いて大きく様変わりいたしました。
 その理由において一つは、高度成長期に「より効率的に早く安く」を食に対しても追及することにより機械化された大量生産ものが主流になったこと。
 また一つは、食生活が煮炊きもの中心の和食からパンを取り入れ、醤油なしで済むような食事に変化したこと。

・・・3
 2の大量生産ものが主流になったことにより、「醤油」の価値観も大きく様変わりしました。
― 醤油価格の推移 ―
 ・江戸初期(醤油:米の3−4倍)・明治(醤油:32銭、男性散髪代:15銭)
 ・昭和40年(醤油:180円、男性散髪代:300円)、
 ・現代(500mlペットボトル茶:150円、1L 醤油:130円値上げ前)

・・・4
 2や3の主だった理由により、半世紀前まで全国で約6,000件あった醤油醸造業者が、5年前の調査では約1,200件と激減しています。(登録を取り消していない業者も含まれる・醤油組合の調べ)
 年間100−200件廃業を余儀なくされている同業者の厳しい現状の中、あと10年経つと一体どれだけの醤油醸造業者が継続していることだろうかと不安にかられます。


 この数年、丸中醤油蔵元でも異常気象の影響ともいえる「集中豪雨」、「台風」、「地震」がもたらされ宝と称している200年蔵の老朽化にさらに拍車がかかっている現状がございます。
 今や、料理の隠し味としてプライドの高いフレンチ3つ星シェフがこぞって使いだしたと言われ、世界に誇れる日本の発酵醸造の文化ともいえる<醤油>です。
 しかしながらこの困難な時代、小さな地醤油が造り続けることが出来るだろうかと異常気象に脅かされながら、わたくしが決心したことは、「今、手をつけなければ後世に残すことは難しいだろう」「私の代でつぶしてしまったら、戦時中や困難な時代に於いても独自製法を曲げず歯を食いしばって耐えて守ってきた先祖に申し訳がない」「美味しいと支持してくださるお客さまにも申し訳ない」という想いによって、なんとか継続できるよう頑張るのみでした。
 そこで地域の大工さんから滋賀エリアで八方手を尽くして施工業者を探しましたが、残念ながら見つかりませんでした。その理由は、改修方法の大前提が、蔵の宝である微生物(醸造菌)に影響を与えない改修方法で、蔵の内部に手をつけないで直してほしいという大きな希望であったからです。
 結果、宮大工の神社・仏閣・町屋を手がけられている京都の一級建築士さん・施工も京都の業者さんが縁あって理解と興味を示し、弊社の希望をかなえてくれる形になりましたのでご報告申し上げます。
 この時代に改築するということは、新しくするということが前提になる中、古い物を古いまま後世に残すという事、その試みをこの困難な時代の醤油醸造業の小さな蔵元が手掛けるというのは、多分今後もないことと考えております。改修方法についても例がない前代未聞の方法だそうです。

 業者がこの案件を引き受けた大きな理由は、
「屋根が朽ちて危険な為登ることはできなかったが数枚剥した瓦の裏にまで、微生物(醸造菌)がびっしりまわっていた、又、丸中醤油の味が本当に素晴らしかった、伝統を守ることの大変さがわかり、こんな価値ある仕事に関わらせて頂ける事は職人冥利につきる、めったにないご縁だと思い是非、手がけさせてほしいと逆に頼ませていただきました」との事。

●改修方法
・・・1
 蔵の内部に、仮設の家を建てます。
(※時期がきたら壊すのですが、その間だけにおよそ家一軒分:約2000万円の費用がかかります)
 その理由は、
 ・醤油づくりのための作業を続けながら改修を行いますので改修の間も櫂入れなどの手入れ等、しょうゆ作りの作業を続けられるように
 ・ 又、ほこりなどが落ちてきて樽内に入ったりしないよう品質管理上の理由も大きな理由です。

・・・2
 蔵に棲みつく微生物(醸造菌)に影響を与えないよう慎重に事を運びます。
※下記内容は業者では例がないとの事です。
 リースの機材や仮設台については、使用前にすべて高速洗浄をかけます。
 醸造菌に影響を与えると思われるホルマリンなどの接着剤ボンドも使用しない。
 柱は最小限で効果を考えた部分的な補修に留め、またその際は輸入材を使用せず 風土にあった国産木材を使用する。

・・・3
 通常のラーメン構造(鉄で固めるのが普通)ではなくゆれることを前提とした伝統工法が基礎となります。

●改修スケジュール
 弊社の独自製法の一つである古式製法に則り、発酵に影響を与えにくい8月18日〜本年一杯まで(来年春仕込みまで予備日を設ける)。

 丸中醤油株式会社


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