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「オール電化」する前に、知っておきたい電磁波問題
オルター通信968号記事
「オール電化」する前に、知っておきたい電磁波問題
建築ジャーナル2005年6月号特集
「できてますか?電磁波対策」抜き刷り小冊子より転載

荻野晃也さん
電磁波環境研究所所長・理学博士に聞く


携帯電話、パソコン、家電製品…電気の恩恵を受けながら暮らす日常生活。しかし、目に見えない電磁波によって、身体に支障をきたし、日常生活が困難な人が増えているという。この電磁波とは何者で、一体何が問題なのか、電磁波環境研究所所長荻野晃也さんが解説する。



電磁波とは「電磁放射線」 その中の低周波と高周波が問題
電磁波とは「電磁放射線」のことで、波と粒子の性質を持つ目に見えない太陽光線の仲間です。エネルギーの高いガンマ線・エックス線などの放射線から高周波と呼ばれる8〜20億ヘルツの携帯電話、50〜60ヘルツの超低周波までと幅広いのですが、太陽光線よりもエネルギーの高い電磁放射線は、「電離放射線」(*1)、太陽光線よりも低いものを「非電離放射線」(*2)と呼んでいます。一般に周波数が3兆ヘルツ以下の電波を「電磁波」と呼んでいます。
 電磁波の強度を示す単位には、電場では「X/m(1m当たりの電圧)」、磁場(磁界)では「mG(ミリガウス)またはμT(マイクロテスラ)、1μT=10mG」を使用します。
 電磁波には太陽光を浴びると温かく感じるような熱効果と、どリビリと感じるような刺激効果が知られています。熱効果は高周波が中心で、刺激効果は低周波が中心ですが、今問題になっているのは、それ以外の「非熱効果」「非刺激効果」といわれている作用です。電磁波のなかで特に問題なのが、多くの家電製品から漏洩している低周波と、携帯電話・電子レンジから漏洩する高周波のマイクロ波です。
 中には地球の表面にも磁場があるじゃないかと思われる方もおられるでしょう。電化製品などから漏洩される磁場強度が約数mGに如し、地球の表面には約500mGの磁場強度があります。しかし、この地球表面の磁場が危険であれば、多くの生物は死に絶えていたはずです。私が心配している磁場は、地球磁場のような静磁場ではなく、交流磁場のことです。


身体に入り込むマイクロ波や磁場 その究極が電気椅子?
電磁波とは電場と磁場とが交互につくられながら伝播する電波です。電気が直流であれば、静電場や静磁場ができ、交流であれば交流電場や交流磁場ができます。静磁場は磁気の南北が変化しませんが、交流磁場は、
1秒間に50〜60回も南北が変化します。現在交流の電圧が原因となる電場の危険性も指摘されていますが、今のところは、身体の奥深くまで電流が入り込む磁場の危険性が問題視されています。約100年前、営業用に直流電流を使っていた発明王エジソンは、交流電流は身体に危険だと交流電流を使用する弟子たちに猛反対し、その危険性を立証するために、多くの動物を実験で殺し、電気椅子まで発明しているほどです。
 人間の身体は、化学反応などによる微弱な電気信号でコントロールされています。細胞膜の内外で微弱な電圧差が生じ、神経伝達が、弱い電気パルスで行われていることもわかっています。
 電磁波はそんな電気と密接な関係にありますから、熱効果や刺激効果のほかにも、生体に対する非熱効果や非刺激効果があると考えられるのです。
 電磁波の危険性をわかりやすく説明するために、一つの例を示したいと思います。二つのコップに、氷と水を同じ重さだけ入れて電子レンジで一分間チンしてみてください。水のほうは60度近くまで温度が上昇しますが、氷はまったく変化しません。同じH 2 Oでありながら、電子レンジのマイクロ波(高周波)は水にだけ吸収されるのです。つまり、マイクロ波には、熱発生効果があり、かつて日本軍は、この熱効果を利用した「殺人光線」開発を試みていたほどです。
 マイクロ波は頭の中にまで侵入しますので、高周波の高い携帯電話を使用すると、耳が温かくなったり、頭痛がおこるのはこの原理からです。特に、大人の脳での熱の発生量を1とすると、10歳の子どもでは2.5倍、
5歳の子どもでは4.2倍と低年齢になるほど高くなります。これは、小さな子どもほど頭蓋骨が薄く、頭が小さいために、マイクロ波が入りこみやすいのです。


低周波のlHクッキングヒーター 子どもや胎児に影響大
先ほど説明したマイクロ波(高周波)ももちろん危険なのですが、建築に関連づければ最近人気になっている「オール電化住宅」が気掛かりでなりません。ある県では、新築住宅の7割がオール電化住宅と聞いています。中でもIHクッキングヒーター(電磁調理器)は、家電製品の中でも、低周波の電磁波が最も強いといわれ、50mG以上の電磁波を放射します。
 電子レンジは窓ガラスの中の細かい金属網で高周波を大幅に遮断します。しかし、低周波の場合、電場は、薄い金属箔をアースすれば遮蔽できますが、磁場はガンマ線のような強い透過力を示し、遮蔽はとても困難です。
 また、電磁波は細胞分裂の盛んな細胞では、短時間でも被曝が強く影響する可能性も指摘されています。人間の体の多くは水分で構成されていますが、成人50%に対し、子どもは70〜80%、胎児は90〜95%です。成人に比べて子どもや胎児の水分が多いのは細胞分裂が盛んだからです。つまり、電磁波は低年齢ほど悪影響を与えます。IHクッキングヒーターの高さはちょうど腹部にあたりますから、とくに妊婦さんは気をつけなければいけません。なお低周波の危険性は、すでにいくつかの疫学調査で立証されています。
 2002年、米カルフォルニア州の低周波の電磁波影響プロジェクトによる疫学調査では、16mG以上の短時間の日常的被曝でも、早期流産が5.7倍に増加すると発表されました。
 IHクッキングヒーターの人気の理由に、「光熱費が安い、掃除が楽、火災の心配がない」とあるようですが、人間は火を使うことで進化しました。IHクッキングヒーターは技術革新に違いありませんが、技術が進歩するにしたがって、食や安全に対する人間の意識の低下を感じざるを得ません。


環境基準は乳幼児を基準に 予防原則が浸透しない日本
日本では、家庭電化製品に人体への影響を考えた電磁波の法的な規制は低周波ではありません。しかし、パソコン用ディスプレイの電磁波は、法的規制のない日本でも業界団体の自主規制で基準値が決められています。
 約2万ヘルツの電磁波が出ているIHクッキングヒーターも、パソコン同様に前面50cmの距離で、0.025μT以下に抑えるべきでしょう。しかし、私自身は低周波に関しては、子どもや胎児の将来を考えると、基準値は「0.01μT以下」でなければ、安全とは言えないと思います。
 今年度(編集部注:2005年)WHO(世界保健機構)から、低周波のクライテリア(基準値)が発表される予定ですが、日米の圧力で、安全性の高い値が出ない可能性があります。確かにこれほど電気にあふれた現代社会に、0.01μT以下で生活することはかなり困難です。しかし、電磁波が私たちの身体に悪い影響をもたらす危険性はもはや否定できません。
 EU諸国では、「危険な可能性がある限り、安全性が確認されるまでは排除しよう」という予防原則が定着し、「環境基準は最も弱者である乳幼児の立場で考える」ことが、いまでは常識になっています。一方、日本では、予防原則をとれば経済活動が停滞すると、「危険性が確立する」までは「安全だ」と対極な姿勢でいます。
 電磁波は自分の健康はもちろん、未来の子孫に大きく影響します。また、自身が電磁波対策を施していても、周囲が電磁波に無関心であれば、電磁波被害は広がるばかりです。電磁波は今世紀の公害です。もっと電磁波問題に関心を持ってほしいものです。                     (談)


*1「電離放射線」の名の由来は、細胞などを構成する分子をバラバラにする電離効果からつけられている。一般的には「放射線」と定義され、広島・長崎の原爆やチェルノブイリ原発事故などで問題になったガンマ線、レントゲン撮影のエックス線、紫外線の一部などが含まれる。電離放射線では、電磁波の波と波の間隔(波長とよばれる)がとても短く、波というより弾丸のような「粒子性」が強く現れる。

*2 「非電離放射線」は、エネルギーが低いために物質を構成している分子や原子を電離できない。ラジオ波やテレビ波も含まれるが、放送アンテナ周辺の数km遠では、微弱になっているので、身体の影響はそれほど心配しなくてもいい。



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