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遺伝子組換え作物に気をとられているあいだに、遺伝子組換え樹木がどんどん増えている―― |
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米国の大手環境団体であるシエラ・クラブが、そのような記事を出しています(http://www.sierraclub.org/biotech/trees.asp)。 それによると、遺伝子組換え作物の作付け面積が爆発的に増え、いまでは1億エーカー(40万平方キロ、1エーカーは約4000平方メートル、ちなみに日本の面積は38万平方キロ)に達している。樹木のほうも試験植林の面積が増え、このまま推移すれば遺伝子が自然林に広がる可能性が大きい―― シエラ・クラブはそう警告しています。
「シエラ・クラブは遺伝子組換え技術を野外で用いることに反対である。なぜなら、遺伝子は花粉にのってどこへでも飛んで行き、いったん広がると、それを元にもどすことができないからだ」
また記事の中に次の明快な一文があります。
「ミルトン・フリードマンが指摘するように、企業は倫理で動くものではなく、金もうけのために存在する」
企業の中に倫理で動こうとする人がたくさん存在しているとしても、現実には、そういう人たちの声が実現される機会は少ない。やはり経済の原則が最優先されます。つまりどういう樹木を作り出すことが利益になるかといえば、
● 成長が速いか? ● リグニンが少ない(木の成分がひとつであるリグニンが多いと除去に手間がかかるし、紙が変色しやすい)か? ● 木質が一定であるか? ● 丈夫で病虫害にやられにくい 農薬が少なくて済むか? ● 大気汚染に強いか?など。
このような観点から見ると、樹木に遺伝子組み換え技術を導入することは、経済目的からなされることだということになります。遺伝子組換え作物についても同じようなことが言えるはずです。
これに対して、もう一方には樹木の遺伝子組換えは環境を守る観点から緊急に求められている技術だという意見もあります。APが8月1日に書いた記事によれば、森林破壊を回復するのに 『成長の速い樹木』 が必要だし、大気汚染による破壊から森を守るのに 『汚染に強い樹木』 が必要だ、木材・製紙用の資源需要の増大を満たす必要もある――そういう理屈になります。これは、必ずしも金儲けのためではなく、環境を守る技術として使われるのだからいいではないかという意見であるように見えます。 しかし私は、森林破壊が進んでいるから成長の速い樹木を導入することが必要だという論理には与したくありません。大気汚染が進んでいるから汚染に強い樹木を開発することが必要だという論理も好みません。 経済学者のフリードマンが言うように、経済・社会システムの観点から全体を見ることが必要だと思います。 (配信者:別処珠樹さん)
世界の環境ホットニュースGEN245号2003年8月3日配信記事転載 ◆END◆
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