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お酢独特の香りがにがてな方に
カタログ2010年12月1週号
ムレ香の発生を抑えたフルーティーな純米酢。


◆ムレ香を抑えてフルーティーなお酢を
 福井県大野市にある河原酢造の河原照彦さんが造るお酢は、クセがなくフルーティーでさっぱりしています。伝統製法の米酢の重厚な風味を好む人には少し物足りなさを感じるお酢かもしれませんが、その重たさを好まなかった人には朗報になるはずです。
 伝統的な製法で造った純米酢には、米酢の宿命といえるムレ香(アセトインやダイアセチルの成分)がどうしても発生しやすく、せっかくの本物のお酢なのに、そのお酢独特の香りがにがてな方がいます。オルターの漬物の生産者である道長さんも、漬物に合うお酢を探し求めて河原酢造のお酢に出会いました。
 河原照彦さんは、純米酢のこのムレ香が香りを重たくしていることを何とか解決できないものかと考えてきました。そして、元東京農大の柳田藤治先生の「ムレ香の発生を抑制する米酢」の研究をヒントに、そのムレ香の発生を不快とは感じられないレベルにまで抑える製造法を開発しました。

◆安全なお米、おいしい水にこだわって
 河原酢造さんは、原料のお米はすべて国産米にこだわっています。「老梅 有機純米酢」の原料米は福井・新潟・石川県の契約農家の有機米。「老梅 特別栽培米仕込み」の原料米は福井県産の特別栽培米です。水は地元で御清水と呼ばれる九頭竜川水系のおいしい水を浄水器で漉して使い、製法も伝統的な古式静置発酵です。機械や器具の衛生管理についても、薬剤には頼らず、湯水による洗浄や熱湯消毒など安全な手法を心掛けています。
 創業して187年の河原酢造は、越前小京都と呼ばれる福井県大野市にあります。戦時中、親の代は合成酢をやむなく作った歴史もあります。
 6代目となる河原照彦さんは、高校時代は家業は嫌だと思っていました。しかし、都会暮らしをしてみて、自然やおいしい食べものに興味をもち、1978年にUターンして26才で家業を継がれたのです。今では醸造の仕事がたいへん面白いと感じておられます。「とくに微生物の発酵する過程や、味が変化するのが面白くてたまらない」とおっしゃっています。
 照彦さんはかねてから伝統製法の純米酢のムレ香が気になり、自然食品店に並ぶ多様なお酢も高くてなじみにくいものが多いと思っていました。国内の現状では良質なお酢が入手困難であり、醸造メーカーの立場から、これらを何とかできないものかと研究に取り組んだのでした。
 有機米を使った製造を始めたきっかけは、1993年に当時減農薬で米作りをしていた松浦助一さんに出会い、松浦助一さんの「大地に痕跡を残す仕事がしたい」という姿勢に共鳴したことからでした。今では3つのグループの有機米を原料とした有機純米酢造りに取り組んでいます。
 酢造には酒造りの工程がありますが、杜氏という仕込みの職人を雇うことなく、かつて社長である照彦さんご自身がその役を担っていたことがあり、現在は後継者である河原泰彦さんが担当しています。それは「自分で納得できる米酢造りをするためには、自らが職人であらねばならない」という信念からです。
 河原酢造の生産量は限定的で、大量生産はできないと考えておられます。テレビなどの取材申込みも真摯な報道姿勢の企画でない限り断っています。一過性の消費者の相手はむなしいと思っておられるからです。


河原酢造の「老梅 有機純米酢」「老梅 特別栽培米仕込み」
■原料
●有機米・・・「老梅 有機純米酢」に使用。
(有)アースワーク…代表 松浦助一さん(福井県)。
会社システムで有機米作りに取組んでいます。有機認証はJONA。
(有)エコ・ライス新潟…代表 阿部信行さん(新潟県)。有機認証は民間稲作研究会。
加賀有機の会…代表 橋詰善庸さん(石川県)。
橋詰さんと田中宗継さんの有機米を使用。有機認証は石川県農業安全課。
●特別栽培米・・・「老梅 特別栽培米仕込み」に使用。
生産者は(有)アースツーク。除草剤のみ使用(2〜3成分)。殺菌・殺虫剤は不使用。
●水・・・御清水と呼ばれる九頭竜川水系の水
●清酒酵母・・・日本醸造協会
●種麹・・・(株)菱六
●珪藻土(濾過剤)・・・土田食品工業(株)

■製造方法
工場はJAS認定工場です。
@原料米
A洗米
Bスチームを使った蒸し器で米を蒸します。
C放冷
D製麹(種麹)・・・麹室の消毒はホルマリンなどを使わず、布など備品は煮沸します。ムロは部屋なので紫外線ランプのみで消毒を行っています。
Eアルコール発酵(清酒酵母)・・・約1ヶ月。酢酸発酵
F酢酸発酵・・・約3ヶ月。さらに約3ヶ月の熟成期間をかけます。
G濾過・・・フィルタープレス、珪藻土、濾紙を使っています。きれいになるまで2〜6回行います。
H火入れ殺菌(80℃)
I充填・ビン詰

米150gから1Lのお酒ができる計算です。市販のものでは酒1L作るのに、米40g程度です。
米酢の醸造粕は、堆肥の原料として水田へ還元しています。

■使い方
焼魚、塩サバ、マリネなどに合います。薄めて飲むのも良い。
また、焼そば、スパゲッティー、味噌汁に少しかけるのも良い。


一般市販の米酢の問題点
 神前に供えた酒を盗み飲みしたら酸っぱくなっていた…これが酢発見の最初といわれています。しかし今の酢はまともなお酒から造っていません。合成氷酢酸(石油化学工業の合成アルコールから作った合成酢酸)に人工甘味料、アミノ酸、食塩などを入れた合成酢(市場の約0.6%)は論外としても、市販の米酢には様々な問題があります。
 かつてはお酢の原料として、石油、カーバイド、パルプ廃液、氷酢酸、酢酸なども使われていました。現在でも醸造酢の原料には、輸入の小麦、トウモロコシ、じゃがいもなどのでんぷん分やその他の工場の廃棄物から、果てはさとうきびの廃糖蜜まで使われています。要するにエチルアルコールが作れるものなら何でも酢の原料になるということです。ディスカウントの安い紙パックのお酒の正体が、これら醸造用アルコールです。これだけではお酢にならないので、カリウム、マグネシウム、酵母エキスも添加されるなど原料コストは限りなく安いものです。
 米だけを原料としている米酢だからといっても安心できません。一般には米酢の原料米は、くず米(米の1/15の値段)や他用途米(古米や古古米)。カドミウム汚染米や輸入米(ポストハーベスト農薬)など安い米なら何でも加工にまわされてきました。さらには、米糠や白糠(吟醸酒造りで40%精米を行うときに出る糠)もお酢の原料にまわっています。河原酢造のような有機米・特別栽培米、また飯尾醸造の富士酢のような無農薬米どころか、まともな米が原料になっていないのです。
 また、JAS規格が法律に定めた「米酢」と表示できる基準は、酢1リットルあたり米40g以上です。しかし、米だけで酢を造るには、最低120gは必要なのです。その不足分はさまざまな混ぜ物です。上記のような副原料使用にからくりがあります。こうして伸びが悪くこくのない米酢が、いかにも上等なお酢の顔をして店頭に並んでいるのです。
 醸造方法も、大手メーカーでは温度をかけ空気を入れる速醸法(全面発酵法)で2〜3日で造り上げています。良心的なところでも1カ月前後がほとんど。速醸法だと短時間に設備を有効利用して大量生産が可能ですが、酢酸主体の揮発成分が多いツーンとくるお酢になってしまっています
 更に市販のお酢には発酵栄養物、化学調味料、酸味料(クエン酸)、色素(カラメル)、核酸、砂糖、水飴、糖類などが補われています。



―文責 西川栄郎(オルター代表)―


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