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世界のマグロを食べる日本
通信806号資料記事
マグロの水銀汚染はキンメダイより高濃度なのになぜ注意事項に入らないの?  
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「水銀を含有する魚介類等の摂取に関する注意事項」を発表    厚生労働省
          2003年9月7日 消費者レポート第1234号より転載

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会は、6月3日、「水銀を含有する魚介類等の摂取に関する注意事項」を発表しました。
 これは、「妊娠している方又はその可能性のある方」について、メチル水銀濃度の高い魚介類7種の摂取を制限する注意事項です。これによれば、バンドウイルカは1回60〜80gとして2か月に1回以下、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ及びサメ(筋肉)は同じく週1回以下、メカジキ、キンメダイは同じく週2回以下にすることが望ましいとしています。
 今、なぜこのような発表をしたのでしょうか。厚労省は「近年、胎児期における低レベルの水銀による健康影響について、国際的な調査結果が報告され、またアメリカ等で妊婦等への魚介類等を通じた水銀の摂取について指導が行なわれている。このようなことから、厚労省や地方自治体、水産庁が01年以降それぞれ実施した調査結果とともに、合わせて約300種、約2600検体の調査結果について、水銀の毒性に関する資料、欧米の状況等とともに、合同部会に提出した。その検討結果が発表されたもの」だと説明しています。
 水銀の「低容量曝露」での健康影響のおそれは以前から水俣病研究者等により指摘されていました。また、01年水俣水銀国際会議などでも「水銀汚染魚の摂取への警告」を指摘されていましたが、今回、国内で初めて魚名を挙げての摂取注意の発表となりました。

表1
マグロの水銀濃度は明らかに高い
  30年前の73年、水銀汚染魚のパニック当時、厚生省は「水銀汚染から健康を守るために」の指導を発表する一方で、この時、現在の魚介類の水銀の暫定的規制値、総水銀0.4ppm、メチル水銀0.3ppmを設定しましたが、マグロ類、河川産(湖沼を除く)及び深海性魚介類は規制の枠からはずされました。今回の合同部会の審議においては「マグロを外す根拠はないはず、むしろ経済的政治的なことではなかったか」などの議論もあったのですが、今回の注意事項からもマグロはされています。表1をみてわかる通りマグロの水銀値は高いのですが、厚労省はマグロの摂取量は少ないから等の理由をあげています。メチル水銀は食物連鎖の上位にあるサメやカジキなどの大型魚、一部のハクジラ等に蓄積されて高濃度になる可能性があります。

JECFAは基準値をより厳しく引き下げ
 同じく30年前に厚生省は、メチル水銀の暫定的耐容週間摂取量を、0.17mg/人(体重50kg設定)これは3.4μg/kg体重・週に当たります。
 FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)のJECFA(合同専門家会議)は、6月末に現行の3.3μg/kgから1.6μg/kgへと半分以下に引き下げることを公表しました。厚労省は現在の日本の3.4μg/kgで今回の注意事項を取りまとめていますが、暫定基準値そのものの見直しを食品安全委員会に諮問することになります。胎児脳はメチル水銀に対する感受性が成人よりも高いといわれています。母親よりも1.5〜2倍の蓄積が知られているといいます。今後、食品安全委員会の幅広いリスクコミニユケーションを生かした対応が強く求められます。                                 
 (水原博子)

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