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いのちは海から…塩のいろいろ
カタログ“2000年4月4週”
  日本において、塩について最もよく研究されたのは、若くして亡くなられた谷克彦(著書『塩−いのちは海から』)だと思います。谷さんは専売法の厳しかった時代から、人にとってよい塩を求め、研究用として伊豆大島でタワー塩作りに取り組まれ、その後高知で窪川原発に反対するシンボルとしての「生命と塩の会」のタワー塩作りも指導されました。現在オルターで取扱っている太子屋さんのとうふのにがりを供給していただいているのは、その仲間の「完全天日塩保存会」からです。この運動がきっかけとなり、赤穂の天塩、伯方の塩など様々なにがり入りの再生塩が世に出てきました。
生命と塩の会 出発当初より塩作りに取り組んでいる小島正明さん
 谷さんは当時、それらのほとんどを指導されたり、見学されたりしていました。それまでは塩はガラス工業の原料としてできるだけ、精製されていなければだめで、純度の高いNaClにするイオン交換法が全盛期を迎えていました。しかし谷さんは健康によい塩とは、いざというときには医療用のリンゲル液の代わりに使えるようなものでなければだめだ、そのためには主として@精製しすぎはよくないA煎合塩のように加熱して作った塩は、海水に非常に多種多様に含まれるミネラルの分子レベルの存在形態が壊れてしまってだめになるのでよくない、と指摘されていました。そして塩の良し悪しを簡単に見分けられる方法として「あさり」を使った実験(濃度を海水に合わせた、各塩水の中であさりの開く時間を調べる方法)をよくされていました。そうです、塩のことはいそぎんちゃく(飼育が難しい)やあさりなど海の生物に聞けばよいのです。

■いろんな塩の評価
◆減塩塩
  一時、高血圧の予防にと宣伝された塩の代用品、塩化カリウム(KCl)は、あさりはやがて死んでしまいます。毒性があり、食用にするなどもってのほかです。
◆塩で高血圧になるか
  実はミネラルバランスのよい塩は高血圧の原因にはなりにくいのです。イオン交換法で精製されすぎた純度の高い塩化ナトリウム(NaCl)が高血圧を引き起こすのです。もし塩が高血圧の原因になるというなら、海の魚はみな高血圧になってしまうかもしれません。
◆公社塩
  公社塩のようなイオン交換法の塩は精製されすぎていて、あさりが開くまでたいへん長い時間がかかります。料理に使っても、漬物に使ってもおいしくはありません。そもそも工業用なのですから。
  では、岩塩やメキシコなどの入浜法の海水塩なら自然でよいのかというと、どっこい岩塩は長年の雨の作用でにがり分が流されていて、精度が非常に高くなっているのです。また、オーストラリアやメキシコの入浜法の海水塩でも、浜で水分を蒸発させる際、しきりの調整で、工業用に使えるよう純度をかなり上げてしまっているのです。
◆再生塩
  オーストラリアの入浜法の海水塩に中国からのにがりを加え、再結晶させた「赤穂の天塩」は、同様な一般に市販の塩の中ではまだ一番ましな塩だといえます。あさりは早く開き、漬物もおいしく、料理にも向きます。谷さんは、この赤穂の天塩に比べると、「伯方の塩」(海辺の井戸から汲み上げた水で輸入の海水塩を再結晶しているからにがりが入っているという)、「シママース」や「あらしお」(公社塩ににがりを入れている)などは安く売っていますが、比較すれば貝の開きが悪く推薦できないとおっしゃっていました。(その後の調査をしていませんので、ひょっとすると現時点では改善されているかもしれませんが)
◆海水塩
  現在、国内で海水から作っている塩といえば、伊勢神宮の祭祀用の塩、観光用に奥能登で揚浜式(砂に海水を撒き濃い海水を作り、釜で煮詰める方式)で作っている「能登の浜塩」などがあります。自然食品店で売っている「海水の素」という塩は、中国の福建省で昔、秦の始皇帝に献上するために作り始めたといわれているレンガ敷きの塩田のもので、これらと同レベルです。
◆深層水塩
  今、注目されつつある深層海水塩もお勧めの塩です。沖縄や高知で試験的に作られています。
◆天日塩
  オルターで取扱っている尾崎食品のにがりを供給していただいている伊豆大島の「海の精」は前述した谷さんゆかりの塩です。
  しかし、ここまでは全て塩作りの工程で残念ながら加熱(煎合)する部分があります。
  国内で加熱していない塩作りは、これまで高知の「生命と塩の会」および「完全天日塩保存会」と伊豆大島の塩の一部だけでしたが、専売法がなくなってからは小笠原諸島、天草、大分などでも新たな設備(天日塩と煎合塩)が増えてきています。これらはそれぞれ、きれいな海のさらに静置して汚れを取り除いた海水から太陽と風だけで塩に結晶化しています。ほぼ谷さんが理想とされた塩なのです。
◆その他
 このほか、最近では自然食ブームに悪のりして、○○エキスや酵素入りなどと謳ったやたらと高い塩を売りつけていることもありますので、要注意です。

■オルターで取扱っている塩
(1)国内最高峰の塩です。お吸い物などを食べるときにはとくにお勧めです。

●完全天日塩の美味海―生命と塩の会
(おまたせ、再登場です。ここ数年異常気象などで生産量が充分でなかったため、御紹介できませんでしたが、設備も増設できました。)
●にがり―生命と塩の会
(チャック式ビニール袋入り)
とうふ2丁X4〜5回分です。
オルターで扱っている豆乳を温めて、家庭で寄せ豆腐を作ってみませんか。

(2)
●海の精(赤ラベル、煎合塩)―日本食用塩研究会
●にがり―日本食用塩研究会
(3)
●深層海水塩―室戸産
 海のミネラルがより自然です。
 ※現在、ウマイ株式会社の深層水塩は取扱いを休止しております。
(4)
●赤穂の天塩―赤穂化成
 漬物用など通常の家庭での使用ではこれで充分です。
(5)
●卓上用天塩・焼塩―赤穂化成
 赤穂の天塩を400℃、4時間焼いてサラサラにしたもの

生命と塩の会 製塩風景
<にがりの話>
 自然食品業界で、有名な某医者がにがりのとりすぎは体の蛋白質が凝固するのでいけないという説を本に書かれています。もちろん、豆腐作りのような濃度でにがりを体内に多量に流しこんだらよくないのは当然です。ちなみに、海の魚はにがりを含む海の中にあって別に体が凝固しているわけではありません。問題は濃度の話なのです。
  谷さんの話ですが、当時山口県の医者で海水をどんどん濃縮して、最後までどうしても液体のままいる部分(にがりのさらに濃いもの)を、いろんな病気の患者に与えたらどんどん病気が治ってしまい、それを医薬品として厚生省に許可を相談したが、そんな作用機序もわからないものは医薬品としては許可できないとされたエピソードもあります。
  にがり成分、すなわちミネラルは人間にとってとても大切な成分であることは確かです。昔は流下式で作られた塩から誰でもが摂取できていたのです。
  しかし、今は海藻でも食べなければこういったミネラルが不足してしまう食生活なのです。


   ―文責 西川栄郎―



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