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本当に大流行だったの?春の麻しん騒動
オルター通信1001号記事
疑問多い厚労省の予防接種率向上計画 本当に大流行だったの?春の麻しん騒動
消費者リポート
2007年9月17日 第1379号より転載

 日消連が新事務所に移転した2007年5月、本来なら早稲田大学の学生たちで賑わっているはずの大隈商店街は閑散としていました。首都圏を中心とした4月からの麻しん(はしか)流行のためです。マスコミは連日のように「○○大学も麻しんで休講」と報道。麻しんが大流行していると不安になろた人もいらっしやるのではないでしょうか。

患者数は2001年のわずか10分の1
 しかし、厚生労働省によると、07年流行時の麻しん患者数は2500人程度で、01年の約3万人の10分の1程度にとどまっています。にも関わらず、マスコミが騒いだのは、子どもの病気だと思われていた麻しんが大学生という成人で発症したためです。
 予防接種制度について簡単にご紹介しましょう。麻しんの予防接種は06年4月の法改正により、それまで1〜7歳半までに1回接種すればよかったものが、1歳に1回、小学校入学前に1回の計2回の定期接種に変更されました。ちなみに、定期接種といっても義務ではなく任意接種です。
 今回、麻しんに感染した大学生は法改正以前の1回接種世代。1回の接種では免疫ができない人がいるほか、一度免疫ができてもウイルスに触れる機会の減少で免疫力が低下してしまうケースがあるため、今回の発生につながったとみられています。

麻しん排除計画を策定 中1と高3に追加接種
厚労省は今回の騒動を受け、6月の「予防接種に関する検討会」から麻しんの排除に向けた今後の取り組みについ議論を開始。8月には12年までに国内での流行をなくすことなどを目標にした麻しん排除計画案をまとめました。
 計画案の目玉は、08年度から5年間限定で中学1年と高校3年にあたる児童・生徒を対象に定期予防接種を受ける機会を設けること。これにより、麻しんワクチン1回接種世代の免疫力アップが期待できるとしています。
 このほか、麻しん発生状況の正確な把握のため、現在は指定機関による定点報告を、全医師に患者の報告を義務づける全数報告に変更することや、排除計画の実施状況評価のための「麻しん対策委員会」設置も盛り込まれました。
MRワクチン導入後の副反応も未報告
 この間、検討委員会を傍聴し、厚労省の麻しん排除に向けたワクチン接種率向上の強い意志を感じました。麻しんが重大な疾患であることは事実ですが、ワクチンの副作用による死亡や後遺症の例が数多く認められる中で、今回のような大流行報道を追い風とした排除計画の推進には疑問を禁じえません。
 計画案には副反応報告を迅速に行なうことも盛り込まれています。しかし、06年4月のMR(麻しん・風しん混合)ワクチン2回接種法導入から1年以上経過しているにもかかわらず、この間の副反応報告がないことからすると、厚労省がどこまで本気で取り組むか疑問です。
 今回の麻しん大流行報道は明らかに行き過ぎで、不安をあおったマスコミの責任は大きいと言えます。しかし、いち早く正しい情報を国民に伝える義務を果たさなかった厚労省の罪も重いのではないでしょうか。  

 (纐纈美千世)



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