通信販売の法規(特定商取引に関する法)に基づく表示

フッ化物洗口の子どもへの集団適応はやめよう!
通信807号 資料記事
急性中毒やアレルギー、発がんの危険もある
  加藤純二 内科医
  2003年12月7日 
  消費者リポート第1243号より転載
  ・・・・・・・・・・・・・・・
    
 2003年11月1日、東京都千代田区の日本教育会館一ツ橋ホールにおいて、第23回日本フッ素研究会と「厚労省のガイドラインを問う・全国集会」が行なわれました。

◆危険な高濃度フッ素での口すすぎ
 研究会では、高橋胱正会長のフッ素応用の有害性に関する全般的な講演があり、続いて03年8月に薬害オンブズパースン会議が厚労省及びフッ素応用関連学会・団体へ送った「フッ化物洗口の集団適用に関する意見書」についての解説、フッ素塗布によるアレルギー様症状の症例報告がありました。
 全国集会では、最近の反フッ素情勢について村上徹歯科医師の講演、養護教諭2人と保健婦1人らの報告がありました。
 ここでは主として私が担当した意見書の解説について述べます。
 フッ素は水道水の汚染物質と考えられており、その許容濃度は0.8ppm以下と省令で定められています。それを230ppm(毎日洗口法)とか910ppm(週1回法)の高濃度で子どもに口をすすがせようというのです。
 薬害オンブズパースン会議では、厚労省等が03年1月に配布した「フッ化物洗ロガイドライン」と、3月に出されたより詳しい厚生科学研究・フッ化物応用に関する総合的研究班編「う蝕予防のためのフッ化物洗ロマニュアル」について、医学班と法律班の二つのグループを作り検討しました。

◆厚労省に提出した意見書の内容
 意見書の要旨は以下の4点です。
@ フッ化物洗口(以下F洗口)は急性中毒の発症の危険性がある
A  F洗口には発がん性を含む長期的害作用の危険性がある
B 近年子どもの虫歯は減小しており、F洗口の必要性は低い
C 集団適用は個人の自己決定権を侵害する違法な公衆衛生政策である
 F洗口は、健康な子どもに行うものですから、わずかでも中毒症状が現れる最小量を安全性の検討の根拠とすべきです。ところが100年以上前の不完全な論文ひとつだけを基に、急性中毒量を2mgF/kgとし、マニュアルには「フッ化物洗口液は、たとえ誤って全量(1回の使用量10ml)を飲み込んだ場合でも安全です」、小学生が洗口液10ml・週1回法でF洗口を行なった場合、「一度に6〜7人分飲み込まない限り、急性中毒の心配はありません」と記しています。
 しかし、フッ化ナトリウムの急性中毒事例を検討した秋庭賢司さんの論文や、松本歯科大学の近藤武さんらの論文では、最小急性中毒量はその1桁少ない量で起こっており、実際、87年、新潟大学歯学部の学生実習で体重当たり0.26〜0.40mgF/kgで中毒事故が発生しています。特に週1回法ではフッ素濃度が高く危険性が高いのです。また、年齢が低いほど飲んでしまう洗口液量が多いことが報告されており、食事やフッ素入り歯磨剤からのフッ素摂取を合計して考えると、水道水へのフッ素添加と同様に、発がん性を含む長期的害作用の危険性があります。
      
◆6歳未満は禁忌とWHOが指摘
 ガイドラインには、「歯のフッ素症は発現しない」と記載されていますが、WHOのテクニカルレポート(NO.846、94年)には「毎日摂取されたフッ化物の全体の量によっては歯のフッ素症のリスクに寄与するかもしれない。従って、洗口は6歳より下の子どもには推奨されない」として、「6歳未満の子どもには禁忌である(contra‐indicated)」との結論が記されています。
 ちなみにこのテクニカルレポートは、マニュアルを作った研究班の高江洲義矩主任研究員によって監修訳されていますが、「禁忌」の訳では日本で6歳未満の子どもにF洗口を実施するのに不都合となるためか、「処方されない」と訳され、他に誤訳箇所が200か所以上も見いだされる意図的かつ、ずさんな翻訳です。
 ガイドラインには「骨のフッ素症は、…発現することはない」、「腎疾患の人にも、…奨められる方法である」、「アレルギーの原因となることもない」、「骨折、がん、神経系および遺伝系の疾患との関連などは、…疫学調査等によって否定されている」などと医学的に疑問のある記載が並んでいます。アレルギーについては、洗口剤の添付文書には「過敏症状が現れたとの報告があるので、そのような場合には、ただちに洗口を中止させること」と記されており、矛盾しています。
 近年、子どもの虫歯は減少しており(図1)、F洗口の必要性は低いのです。ちなみに東京都が03年3月に出した「フッ化物応用の手引き」は、上記のテクニカルレポートを共訳した東京歯科大学の眞木吉信教授の監修ですが、いくつかの箇所で図1にも見られる虫歯統計の最近の減少部分を除いており(図2)、学者としての良心を疑います。

◆安全性への危惧拒否するガイドライン
 インフォームド・コンセントは、事前説明事項として危険性に関する情報が必要不可欠です。そして対象者が子どもの場合、その保護者が子どもの最善の利益を判断して、承諾又は拒否する権利を保障するものです。
 しかし、ガイドラインやマニュアルには、安全性への危惧を完全拒否する記述が目立ちます。また集団心理として拒否権を行使することが困難な状況が生まれやすいにも関わらず、マニュアルには「F洗口導入の当初は、啓発活動が終了した直後、保護者の関心と理解が薄れない早い時期に申し込みをとる」とか、「もし保護者が希望しなくても、子どもが理解して希望するのであれば、子どもの希望を尊重し、保護者には子どもがF洗口に参加することを認めてもらえるよう説得することも必要でしょう」として、一層自己決定権行使を困難にしています。これらの記述はおよそインフォームド・コンセントの名に値しないものです。
 また、「強制ではないのであるから、承諾書という形式はとらない」と、強制でないことはむしろ承諾書を要するにも関わらず、理解に苦しむ記述もあります。「アンケート調査によって保護者の意向や疑問を把握することが有効な場合がある。ただし、啓発事業による情報提供が十分ではないとき、あるいはF洗口に関する誤った情報が流れているときには、保護者の意向を正確に把握することが困難であるから、こうしたアンケート調査の実施は避けるべきである」との記述は、拒否権行使者の存在を顕在化させまいとするものではないでしょうか。
・・・
図1
図2
「フッ化物洗口の集団適用に関する意見書」はホームページでも公開されています。
http://www.yakugai.gr.jp/
戻る