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米国産牛肉輸入に反対するキャンドル集会
オルター通信1041号 記事
10代女性たちが世論をつくった
 韓国では狂牛病(牛海綿状脳症・BSE)に対する不安により、米国産牛肉の輸入制限撤廃に反対する抗議デモが連日続いている。牛肉輸入制限撤廃は、韓米の大統領の間で約束されたことだった。首相を含む全閣僚16人の辞任が表明される事態にまで発展している。抗議デモが始まった当初の様子をイルダの記事から紹介する。
 連休の5月2日から3日にかけて、ソウル市内にある清渓川で珍しい光景が現れた。 川一帯をろうそくの赤い光で染めた集会は、翌日も続いた。
 国民の「民意」を表した米国産牛肉の輸入に反対する今回の集会は、それ以前に開かれてきた多くの集会と大きな違いがあった。
 それは、「左」「右」というような政治的指向が排除されていたという点だ。キャンドル集会の参加者の多くが、「(以前は)集会やデモに参加しなかったが、今回は我慢できない」と、参加した理由を説明していた。
 いわゆる「ジョ(朝鮮日報)・ジュン(中央日報)・ドン(東亜日報)」と称される保守派の主張とは違い、今回の集会は「左派」や「反米勢力」ではなく、健康被害を憂慮して現政府のやり方に危機感を持った市民が主導した。

●10代の女性たちが怒った
 もうひとつ、今回の集会で珍しかったのは、10代の若者が多く参加しており、その中でも女性たちの姿が目立ったという点だ。清渓川広場でのキャンドル集会で「お前(大統領とその政府)が食べろ 狂った 牛」と若い女性たちが叫んでいたため、大人たちが衝撃を受けた。彼女たちの声は、これまでの集会では聞けなかった政治性を持たない声であるからだ。
 今回のキャンドル集会を批判する声の中には、「何も分からない10代が芸能人に刺激されている」というような、若い女性たちが中心となって参加したことを見下すものもあった。
 「何も分からない子どもが洗脳されている」という言説に反し、若者たちは自分たちが当事者だという自覚がある。問題のある食糧が安く輸入された場合、それが一次的に給食に使われ、体の小さい自分たちにより大きな影響があることを分かっているのだ。
 若者たちは、狂牛病問題に限らず、医療保険の民営化、大運河の建設など、李明博政権に対して全般的に憂慮している。これは米国産牛肉の輸入問題が明るみに出る前から、インターネット上の掲示板やコミュニティーで共有されていた。彼らの意識の根底には、自分たちが「未来の世代」だという意識がある。そして、上の世代が目を伏せていることに対する反感も持っている。
 このような経緯があったにもかかわらず、「左派」だの「反米」だの「洗脳」だのという言葉を持ち出す手法で問題を覆う報道に、若者たちの怒りは増大した。

●積極的に行動し、世論を動かした女性たち
 「なぜ多くの女性たちが集会に参加するのか」という問いには、さらなる分析が必要だ。これに対する答えを得るためには、彼女たちの言葉に耳を傾ける必要がある。彼女たちの発言には、必ずといっていいほど「他人への憂慮」がある。
 「私のママやパパが米国産牛肉を食べて狂牛病にかかったらどうしよう」「弟や兄が軍隊に入った時、米国産牛肉を食べるのではないか」若い女性たちがインターネット上で活発に情報交換しているという点も、今回のことに関連がある。以前、ネチズンがポータルサイトのニュースのコメント欄で世論を形成するという傾向があり、その中心は男性だった。今回の世論形成において、10代の女性たちが前面に出てきているということは、注目すべき点だ。
 女性たちは食の問題について相対的に敏感だ。そして、社会を担う若い世代だという「当事者性」に、家族や友人を心配する「憐憫と思いやり」が加わり、彼女たちが持つ切迫感は相当であるように見える。
 韓国社会は、彼女たちが世論を動かしたという事実を受け止め、学ぶべきではないか。
 暴力に敏感に反応し、警察との衝突に対する姿勢も以前の集会とは全く違った。 警察が6日のキャンドル集会を不法だと決めつけたことに対して、彼女たちが選んだのは「沈黙デモ」だった。

 パク・ヒジョン記者
 (ふぇみん 2008年6月25日号 第2861号より転載)


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