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輸入食品にカビ毒汚染の危険
オルター通信1041号 記事
ニッポン消費者新聞 第775号 平成20年5月1日より転載
●米国産のトウモロコシなど
 中国産の輸入食品に対する消費者の不安は広がりを見せている。農林水産省の発表によると、3月の中国産野菜の輸入量は2万4680トン。前年同期より44.5%減少。ファミリーレストランの売上高も2月は前年同期で3.4%減少した。行政も動いた。東京都は国内で製造される冷凍食品の原料原産地表示を導入することを決めた。都のこの対策は中国食品への不信が一因だ。だが、調べていくと中国食品の違反は食品添加物や微生物汚染が多いが、米国などは最強の発ガン物質、アフラトキシンによる違反が多い。気をつけなければならないのは中国製だけではないようだ。


「食卓にのぼる可能性も」

●違反食品が増加
 2006年、日本への食料輸入量が一番多かった国が米国(1310万トン)、次が中国(490万トン)。 これにカナダ(約360万トン)、オーストラリア(約270万トン)が続いた。
 厚生労働省が07年7月に発表した06年の「輸入食品監視統計」によると、国別の違反件数では、中国が530件と最も多く、次いで米国が239件、ベトナム(147件)、タイ(120件)、エクアドル(69件)となった。
 その一年前(05年)の同統計では、中国が371件と最多。次がタイで97件、以下ベトナム(62件)、米国(61件)、台湾(47件)だった。
 たった一年で違反件数が大幅に増加したのは、食品衛生法の改正で06年5月29日から施行された残留農薬の「ポジティブリスト制度」が原因の一つと考えられる。
 同制度は、残留基準が設定されていない農薬などが一定量を超えて含まれる食品について、原則としてその流通を禁止する制度。 同省が発表した「輸入届出における代表的な食品衛生法違反事例」によると、指定外添加物や指定外添加物による違反食品が多かった。

●中国製の不信続く
 07年3月に米国で販売されていた有害物質「メラミン」が添加された中国製ペットフード。同年6月の「ジエチレングリコール」を過度に含有した中国製練り歯磨き。 そして同年8月には中国製のプラスチックおもちゃに過度の鉛が含まれていたことから世界中でリコールが実施された。
 今年2月には日本で中国産の冷凍ギョーザによる中毒事件が発生。 中国産食品を回避する動きが加速した。ある調査では「中国産の食品をこれからは利用しない」という消費者が70%以上にのぼった。中国産野菜の売り上げだけでなくレストランの売り上げも2月は前年同期で3.4%下がった。
 輸入量は米国が一位だが、品種別などの「届出件数」になると中国が一位になる。中国からの輸入品の種類が多いからだ。食品の輸入量が増えている日本で、水際で全量を検査することは不可能。輸入件数の多い中国製の食品は、水際での検査を通り抜けたものが被害を引き起こしている。

●米、カビ毒の脅威
 中国製ばかりが危険というわけではない。農学博士の藤田哲さんによると、06年度、違反の発生率が高かった国は、エクアドル(27%)、ガーナ(18%)、フィリピン(2.06%)、インド(1.45%)、米国(1.32%)の順になる。中国は0.58%。
 中国が残留農薬や食品添加物、微生物汚染での違反が多いのに比べ、他の国、特に米国はトウモロコシ、エクアドルはカカオ豆のアフラトキシン汚染が圧倒的に多いという。
 藤田さんは「ポジティブリスト制の導入により農薬など約800の物質に残留基準値が設定されたことや、現地での検査を十分にやっているので安全性は高くなった」としている。食品添加物は外国では許可されているが日本では許可されていない品目がほとんどで、実質的なリスクは少ない。 「日本ほど検査が多い国はない」という。
 一方、「アフラトキシン」は地上最強の天然発ガン物質。米国からのトウモロコシはこの物質が原因で06年に約15万tが積み戻しになった。同国から輸入されるトウモロコシは日本の穀物輸入量全体の約半分になる。
 米国産のトウモロコシでアフラトキシン汚染が多い理由を藤田さんは「管理がよくない。日本はトウモロコシを輸入するときは家畜のエサとして輸入することが多い。だから管理が行き届かなくなる」とする。
 また、「トウモロコシからデンプンをとって人間の食用に利用する場合がある」という。ただ、米国だけでなくほかの国からも輸入されるナッツ類がアフラトキシンに汚染されているケースが多い、と指摘する。
 厚労省は05年12月26日、米国産トウモロコシについて「検査命令」を実施。同省監視安全課によると、この命令が今でも継続しているという。「検査命令」とは、輸入業者が全ロット(品種や出荷の単位)を検査しなければならない命令、だと説明する。


「相模原市 基準値超えた輸入原材料を回収」

 神奈川県相模原市では06年7月、横浜検疫所でのモニタリング検査で、同市の輸入業者がブラジルから輸入した「トウモロコシの粉」からアフラトキシンを検出したとして、同輸入業者に回収を命じた。検疫所は2検体を検査し一つが15.7ppb、もう一つが15.6ppbと、両検体とも基準値の10ppbを超えていた。商品は発表時点で市場に流通していた。
 同市保健所の担当者によると「日本に居住するブラジルの方が、日本のパン粉と同じような用途で使うもので、日本人にはあまり使われない」という。健康被害の報告はなかった。
 東京都豊島区は07年2月、ベビーフード、香辛料、ナッツ加工品など26品目を対象にアフラトキシンの試買テストを実施した。その結果、ベビーフード1品、香辛料3品から5ppb以上のアフラトキシンを検出した。同区消費生活センターによると、食事中に含まれるアフラトキシンは調理加工では減少せず、ほとんど食品中に残ることが分かったという。
 回収事例やテスト結果を見てもスーパーなどで販売される可能性は捨てきれない。
 消費者はどう対応すればいいのか。
 藤田さんは「基本的には防ぎようがない。カビの生えた食品は選ばないようにするしかない」という。

 (ニッポン消費者新聞 第775号 平成20年5月1日より転載)


最強の発ガン物質アフラトキシン
【アフラトキシン】
 トウモロコシ、ナッツ類、香辛料などに生息するアスペルギルス属のカビ毒素。地上最強の天然発がん物質と言われ、ダイオキシンの10倍以上の毒性を持つ。
 日本ではアフラトキシンB1について、10ppbの基準が定められている。


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