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水俣病事件の被害者を励まし続ける甘夏
カタログ2013年2月4週号
反農薬、有機栽培、自主販売が旗印です。

◆無農薬栽培に取り組む
 企業組合エコネットみなまた、農水産加工部はんのうれんの大澤 菜穂子さんは、父の大澤 忠夫さんが始めた水俣病の患者さんを支援するための「水俣の甘夏」の運動を続けています。「はんのうれん」では「反農薬」「有機栽培」「自主販売」を柱に甘夏の栽培を続けてきました。
 「はんのうれん」の生産者会員は現在50世帯を超えており、そのほとんどの甘夏生産者は無農薬栽培です。みかんの木もだいぶ年数が経ち、テッポウ虫などの害虫で木が枯れることもありますが、その分手間ひまをかけて栽培しています。肥料は乳酸菌を活用したラクトボカシ肥料を全ての生産者が使っています。
 農協が年末や1月初旬に収穫するのに比べ、「はんのうれん」では甘夏みかんが木でしっかり熟してから収穫していますので、味ののりもよいみかんです。農薬を全く使っていませんので、皮をマーマレード用として安心して使えます。「水俣」のイメージから汚染を連想する人もいるかもしれませんが全くご心配ありません。
 水俣の甘夏はオルターカタログ2012年2月1週号でご紹介したネロリ精油の原料としても使っています。
 甘夏のほか、不知火(デコポン)、温州みかん、無農薬レモン、ライム、スイートスプリング、グレープフルーツなど多様な柑橘も作っています。その他野菜やジャムなどの加工品にも取り組んでいます。

◆「農薬は毒」生産者と共通の痛みとして
 大澤 菜穂子さんの父、大澤 忠夫さんは1970年、学生の頃、「京都・水俣病を告発する会」を結成。以来、裁判活動など患者さんを支援する活動に取りくみ、1973年には妊娠中の奥様を抱えながら京都から水俣に移住しました。現地で水俣病被害者の補償、被害実態、生活がどうなっているか気になったからです。
 当時の水俣では、チッソ工場前で生涯年金、医療費などをめぐって座り込みが続けられていました。チッソ城下町での座り込みは多くの市民の反発、差別、偏見が充満していました。
 大澤 忠夫さんはその座り込みで甘夏みかん栽培をしている杉本夫妻に出会い、援農を始めることになりました。杉本栄子さんの父は、イワシ漁の網元、裁判提訴前にその父を水俣病で亡くし、その遺志を受け継ぎ裁判に参加し、イワシ漁も続けていました。しかし、杉本夫妻も水銀の影響で体が侵され、漁にもほとんど出られなくなっていました。生活の糧にと農協の勧めで始めていたみかん栽培を、重い体を引きずって頑張っていました。そのみかん栽培の農薬の散布中に、杉本さんはみかん山で倒れ入院しました。水俣病で身体が侵された上、今度は農薬で病を悪化され、生命の危機を増幅していたのです。
 その当時の杉本さんの「毒(水銀)で肉親を奪われ、健康を失った者が他人の食物に毒をかけられますか!」という言葉が大澤 忠夫さんの琴線に触れました。その言葉が、水俣病患者自身が水俣病の闘いの中から新しい農業の有り方、生き方を模索し、「反農薬、反農協、自主販売」を軸とする反農連(反農薬水俣袋地区生産者連合)を結成する原動力となり、甘夏みかんの産直が始まったのです。1975年に全国行脚をし、自主販売を始め、全国各地に販売拠点ができました。1978年 反農薬甘夏行商隊、1979年 30名で反農連結成、1984年 反農薬全国キャラバン、などの活動を行ってきました。
 2006年には水俣で石けん運動をしてきた「エコネットみなまた」と合流、その農水産加工部門として法人化しました。

◆海を守る石けん運動と合流
 「エコネットみなまた」は1986年、水俣病患者とともに働く場をつくるため、患者、チッソ労働者、水俣市民54名で「水俣せっけん工場」を作ったのがその前身です。1990年には粉せっけん「しらぬひ」が九州初のエコマーク製品に認定され、1992年には第1回くまもと環境賞、のちに熊本県リサイクル推進賞、肥後の水資源愛護賞も受賞しました。

◆患者さんの希望の灯を掲げ続けて
 水俣病事件が1956年に公式に確認され、56年目を迎えています。水俣病救済特措法による一時金対象者だけでも、6.5万人を超えています。今なお正式に水俣病認定患者として認めさせる闘いは続けられています。水俣病事件が全て解決したわけではありません。
 「はんのうれん」はその患者さん達に、今も希望の灯を掲げ続けています。


はんのうれんの水俣の甘夏
■生産者
杉本 雄、佐藤 美由紀、森未 光、滝下 マサエ、杉本 啓子、
吉永 紘史、杉本 肇、品川 三成、森 豊隆、金子 満博、鴨川 強己、
森 義澄、園山 繁行、大澤 基夫

■農薬
甘夏は無農薬栽培(オルター栽培基準☆☆☆)
不知火(デコポン)(オルター栽培基準☆☆)などに一部、
マシン油(JAS有機認証農薬)を使っている生産者があります。

■肥料
ラクトボカシ(乳酸菌有機肥料)使用。
鶏糞、油粕、魚粉、貝化石を主に、
乳酸菌、酵母菌で発酵、熟成させています。



―文責 西川榮郎(NPO法人 安全な食べものネットワーク オルター代表)―



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