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あっさり味、弾力のある柔らかさ 米鶏
カタログ2010年1月4週号
米で育てられた美白の鶏。飼料自給率向上の実験中。


◆米をエサにする試み
 米沢郷牧場が目指してきた鶏肉は、安全性はもちろん、柔らかく弾力があり、ジューシーですが水っぽくなく、味がよいがあっさりしていて、香りがあるが臭みがありません。これまで、ポストハーベストフリー(収穫後農薬不使用)、非遺伝子組み換えのトウモロコシを中心とするエサとBMW技術で安全な肉用鶏作りを続けています。抗生物質などの動物医薬品も排除しています。
 2007年からは、エサの輸入トウモロコシを地域の米に切り替えて自給率を向上させる試験的な取り組みをはじめています。米は米沢郷牧場のメンバーが作った「ベコアオバ」「ベコゴノミ」などの飼料用米ならびに規格外米です。仕上げの肥育段階では実に77%が国産のエサです。エサのほとんどを輸入に頼る養鶏業界の中では驚異的なレベルです。
 安全な米で育てられた鶏はトサカが硬く足が白い、美白の鶏です。肉は、トウモロコシで育てられた鶏のような雑味はなく、ジューシーであっさりした味、柔らかいが弾力があります。ただし価格は15%程度高めです。オルターへの試験供給が始まります。

 
◆自然循環型農業の実践 
 故・伊藤幸吉前代表が創設した米沢郷牧場は、有畜複合経営で農民の自立を目指すことを掲げ、グループで地域的に活動しています。参加農家規模約200戸の国内有数の有機農家集団です。山形県東置賜郡高畠町にあり、オルターへは鶏肉、野菜、サクランボなどを出荷していただいています。
 米沢郷グループでは米、野菜作りでは有機栽培を実践し、果樹も含め全ての面積で特別栽培を行っています。有機認証は取っていますが、あえてJAS有機のシールは貼っていません。JAS法が「排他的」「利権」の匂いがするからというのがその理由です。
 化学薬品に頼らない農業を可能にしているひとつの理由は、有用微生物群を活用する「BMWシステム」を導入していることです。BMWシステムとは、牛の尿を何槽もの発酵槽を通しながら自然石や腐葉土を利用し、バクテリア(B)とミネラル(M)で活性化した水(W)のことで、家畜の飲み水や飼料、堆肥の発酵、稲・野菜・果樹の有機栽培に効果的に用いられます。自然循環農業集団リサイクルシステムの完成をめざす米沢郷の物質循環の要として大きな役割を果たしています。2000年、グループ組織であるファーマーズクラブ赤とんぼでは農業関係者として世界で初めてISO14001の認証を得ています。

◆志は農民の自立
 伊藤幸吉さんは小学生の時、すぐ下の弟さんを農薬の事故で失いました。この事故が、化学薬品や農薬に頼る農業に疑問を感じる原点となりました。伊藤さんは高校時代に区画整理による土地改良事業等に疑問を持ち、そこで農民の置かれた厳しい現状を目の当たりにし、親の勧める大学進学をせず、農民として生きる道に進まれたのです。
 高校を卒業して養豚を始め、すぐに地元ではトップクラスの実績を上げるまでになりました。しかし、頭数増とともにストレスで母豚が生まれたばかりの子豚を殺してしまい、それを見て養豚をやめてしまったのです。
 その頃、農協では「預託牛制度」を始めていました。牛を買う頭金は不要で、子牛は農協が貸してくれる。1年後、成牛を販売したときに借金を返済すればよいという制度でした。1971年の米の減反を機に田に牛を放し、畜舎を建てました。大切に育てた牛は数々の品評会で受賞し、東北六県のグランドチャンピオンにもなりました。しかし1973年のオイルショックで肉牛価格暴落、7500万の借金で経営は破綻したのです。
 伊藤さんは再起をかけ、必死で市場経済を学びました。出荷価格は急落しているのに肉屋の店頭価格は安くなっていないことに気付き、消費者に直接販売することを思いついたのです。「預託牛制度」でひどい目にあった4人の仲間とグループを作って地元で牛肉の販売を始めましたが、なかなか思うように売れず、困り果てて東京を回ったところ、生協との付き合いが始まり、1978年に米沢郷牧場を設立するきっかけとなったのです。
 鶏肉の生産は1980年から始めました。「今までのような大量生産大量販売のシステムを農家がやっていても、何年か先には必ずダメになる。“儲ける”という根性でやってきたが、それは“損する”ことになった。損をしないようにやっていけば、生きていける。そのためには物をうまく循環させることが大切だと思っています」。伊藤さんは、農民が自立して胸をはっていける時代を作りたい、そのためには、安全な鶏肉生産にかかるコストを消費者に理解してほしいと訴えておられました。

◆二代目奮闘中
 その伊藤さんが病のため、2008年に永眠されました。米沢郷牧場は伊藤さんの闘病中に民事再生を申請し、現在再建中です。原因は、部位別の売れ筋が偏ったための5億円もの不良在庫でした。オルターとしても今後は不良在庫を出さない応援をしたいと考えています。
 跡継ぎは長男の伊藤幸蔵さんです。米沢郷牧場は農事組合法人から株式会社に変わり、幸蔵さんは専務執行役員、グループの代表です。農林水産省農業者大学校を卒業し、地元で11年間、若手の無農薬の米作り集団「ファーマーズクラブ赤とんぼ」の活動をしていました。自分たちの想いを実現するためには、農業技術を選びとる、という理論家です。東北農民のホープ的存在で、今後が楽しみです。


米沢郷牧場のPHF鶏肉
●品種
ブロイラー

●エサ
自家配合発酵飼料を給餌しています。トウモロコシはポストハーベストフリー(収穫後農薬不使用)、非遺伝子組み換えです。大豆粕は非遺伝子組み換えです。そのほか、魚粉、食塩、炭酸カルシウム、BMW菌体、BMW吸着粒(ゼオライト)を与えています。BMW菌体は、米糠を生物活性水・植物性乳酸菌を使い発酵して作っています。飲用水はBMW技術で活性化しています。鶏舎全体が無臭化しています。

●米鶏のエサ
エサのトウモロコシをグループ米生産者の飼料米、規格外米、米糠に置き換えています。

●飼い方
開放型鶏舎で平飼いしています。坪当たり平均41羽(37〜45羽)と薄飼いをしています。十分な風、光、運動があります。出荷日齢は52〜62日で、ゆっくりと長く育てています。病気やストレスの予防などに、抗生物質、抗菌剤などの薬剤は一切使用していません。ワクチンも必要最低限に抑えています。鶏糞、牛糞ともに良質のコンポストにしては畜舎の敷料や田畑、果樹園へ還元されています。


市販の鶏肉の問題点
 一般的なブロイラー(食肉専用鶏)の場合、生産優先で、地面が見えないくらい過密な状態で鶏を飼い、エサの効率をよくするために身動きしないよう、日光の当らない無窓鶏舎(ウィンドレス鶏舎)で飼います。ストレスなどから病気になるので、抗菌物質や抗菌剤など動物医薬品を多用します。そのため、鶏肉から抗菌物質耐性菌が検出されるようになっています。鳥インフルエンザで鶏の大量死している養鶏場は、そのような飼い方をしているところです。
 エサの中心はトウモロコシですが、これはポストハーベスト農薬、遺伝子組み換えが問題となります。この他、様々な飼料添加物が使用され、さらには狂牛病の心配のある肉骨粉の混合も行われています。
 鶏卵と共通の問題があります。「食べもの百科」P79をご参照ください。



―文責 西川栄郎(オルター代表)―


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