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放射能のスソ切り処分、ついに実施される!
オルター通信993号記事
放射能のスソ切り処分、ついに実施される!
日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」No.362より転載


 放射能のスソ切り処分がついに実施に移されてしまいました。
 6月6日、解体工事が進む東海原発から微量の放射能を含む可能性のある廃材約4トンが初めて搬出され、東海村内の鋳造会社で応接テーブルやベンチなどにリサイクルする作業が始まったのです。電力会社との交渉の際に座らされる応接テーブルが原発廃材でできたものであるとしたら笑い話では済まされません。


スソ切り実施にいたる経過

 この間の経過を確認しておきましょう。
 スソ切り処分を可能にした原子炉等規制法の改悪が行われたのが2年前の5月、制度が施行されたのはその年の12月でした。当面対象になるのは1998年に運転を終え、2001年12月から解体工事が進められている東海原発だけなので、日本原電の対応が注目されました。スソキリ処分では、第1段階で放射能濃度の測定及び評価の方法の認可を行い、認可された方法によって測定した結果を第2段階で確認するという2段階の国の関与が制度化されています。日本原電は、スソ切り対象の金属4900トンのうち2000トンについて第1段階の測定及び評価の方法の認可申請を昨年6月2日に行い、9月8日に認可を受けました。これを受けて日本原電は測定作業を開始し、最初に核燃料取替機の撤去により生じた金属計107トン分の結果について4月27日に第2段階の確認申請を行い、5月31日に国の確認を受けたのです。そして、搬出が始まりました。


問題の加工先は

 この連載(シリーズ:放射性廃塵物を考える)では何度も書きましたが、スソ切り制度では原発廃材をフライパンに加工しようが何に使おうが自由で、追跡記録も表示も不要とされています。しかし、これまでの取り組みで、電力業界に「制度が定着するまでの間、○事業者が自主的に搬出ルートを把握○業界内で再生利用」すると約束させることができました。
 今回、再生品の用途は日本原電等が使用する応接テーブル、ベンチなどの鋳造品と原子力関連施設建設工事(原子力研究開発機構の大強度陽子加速器施設(J-PARC))で使用予定の鉄筋とされていて、この約束は守られます。
 しかし、それでも溶融加工する工場で、持ち込まれた放射能が全て再生金属に移行する保証はなく、廃棄物や排ガス中に出ていくかもしれないことから、安心はできません。電気事業連合は日本鉄鋼連盟との取り決めで「溶融処理に伴う副生物の区分管理の要否を確認する」としていて、副生物に放射能が移行する可能性について認めていました。そこで、核のごみキャンペーン関西では溶融加工する側の鉄鋼連盟に質問状を出すなどの取り組みをこれまでも行ってきたところです。
 ところが、今回の初搬出で意外だったのは搬出先が鉄鋼連盟に所属していない従業員約40名の地元鋳造会社であったことです。日本原電の発表では「今後11月末までに同じ鋳造会社に約20トン搬出する」とされています。鉄鋼連盟に所属する電炉会社にも約87トンが搬出され鉄筋に加工される予定ですが、電炉会社への搬出は「関係先との調整・準備が整い次第、実施する予定」とされています。日本原電の公表資料にはいずれも企業名は記載されていませんでしたが、搬出を報じた地元の常陽新聞には鋳造会社が伊藤鋳造鉄工所であることが報じられていました。
 日本原電は、東海村地元企業で先行的に実施することを選び、応接テーブルという人目につくものに加工することで、「制度の定着」を狙っているのだと思われます。また、大手の電炉会社への搬出が始まっても注目されることもなく、企業名が明らかになることもないと狙っているのかもしれません。
 6月25日付けの電気新聞には、伊藤鋳造鉄工所での作業の様子の写真入りで記事が載りました。「受け入れ側では、原電の廃止措置に伴うクリアランス対象物を専用に作業する設備を整備済み。当日は、早速搬入した金属の一部を炉で溶融。溶かした金属を鋳型に流し込み、原子力関連施設の遮へい体に再生加工する作業を行った。」とされています。


問題の鋳造所に直接電話!

 核のごみキャンペーン関西メンバーのtencoさんに、直接、伊藤鋳造鉄工所に電話をかけて取材してもらいました。以下彼女の報告です。
 「中小企業の場合はガードが固いだろうなと思いましたが、予想通りでした。4tが搬入されたということですが…と聞き始めると、もう拒絶の感触。クリアランスとそうでないものとラインを分けるという説明を聞いているが、と聞いたのですが、『日本原電さんからは100%安全という資料をいただいて引き受けているので、そういうことは原電さんに聞いてほしい』『私どもの社員がいるので、不安のあるものは絶対に受けない』『逆にどんな心配があるのか聞きたい』
 私のほうは忙しいときの突然のぶしつけな電話を詫びながら、日本原電にも何度も電話していること、国や電力会社は年間に受ける100分の1だから安全と言うが、部分的に高いところがあっても不思議はないと思う、などを言いました。100%安全と言われているというので、では、そちらで放射能測定をするということもないわけですね。と聞いても、それに対応する答えはありませんでした。『専門的なことは原電さんに』と何度も言われました。
 tencoさんは、茨城新聞と常陽新聞にも電話をかけて、鋳造所は具体的なことには答えてくれないことを伝え、今後も引き続き追跡取材をしてほしいとお願いしたそうです。このような電話が、これ以上の拡大を許さないプレッシャーになってくれたらと思います。
 茨城新聞の6月7日付け記事には、日本原電東海・副所長の「将来は一般向けに有効活用できれば」というコメントも載っています。「制度が定着」したと判断されれば原発廃材フライパンが現実のものになりかねません。しっかり反対の声をあげ続けていきましょう。

 末田一秀(「はんげんばつ新聞」編集委員)

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