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ほとんど無農薬栽培といえるぶどう
カタログ‘2010年9月3週号’
粘土農法、自然農業で日本一といえる安全なぶどう作り。


◆農薬に頼らないぶどう栽培
 山形県東置賜郡高畠町の土屋順子さんは、使用農薬がJAS有機で例外的に使用が認められている(JAS有機別表農薬)石灰硫黄合剤(殺虫)と、種なし処理のために使うジベレリン(植物成長調整剤)だけという、ほとんど無農薬栽培といえるほどの農薬に頼らない努力をしたぶどう栽培に取り組んでおられます。ぶどう栽培において、これほど農薬使用を限定している生産者はほかに知りません。
 石灰硫黄合剤は残留毒性の心配がありません。ジベレリンについては残留農薬研究所は変異原性なしとしていますが、エジプトの研究ではアルビノマウスに乳腺がん、肺腺がんなどが見られたという報告(三省堂「農薬毒性の辞典)があり、安全性の立場からその使用は問題と考えます。しかし、ジベレリンの使用は生産者の問題というより、消費者側が「種なし」ぶどうを求めているという現実からくる問題だと思います。これまで私たちの生産者がジベレリン拒否の努力をしても、結局消費者が「種あり」を買わず、その努力が挫折しているからです。ジベレリン使用の是非は消費者に問うべき課題だと思います。

◆消費者の励ましがあって実現
 土屋順子さんがこのような農薬を徹底的に排除するぶどう栽培に取り組んだきっかけは、日本有機農業研究会の元幹事でもある、横浜土を守る会の代表・唐沢とし子さんとの出会いでした。唐沢さんが「日本一のぶどう作り」と賞賛したぶどう栽培を、元の夫と協力して実現しました。
 ぶどうの無農薬栽培が最初からうまくできたわけではありませんでした。唐沢さんの働きかけがあって、1976年に20aのぶどう園で無農薬栽培にチャレンジした初年度は悲惨なものでした。雨による赤サビ病にかかり、葉は全部落葉し、ぶどう園は見る影もなく無残な姿に変容し、翌年は廃園となりました。
 この経験にめげることなく、翌1977年には一緒の作業にしないと面倒だと、当時の全面積90a(現在は1.5ha)に雨よけビニールをかけ(側面は防虫網でおおい、風通しを良くしてあります)、雨からブドウの木を守ることにしました。また、良質の粘土と堆肥を基本とした土作りを続けてこられました。土屋さんの義父・小林宝治さんは、実は粘土農法で有名な方なのです。ぶどうの病気は雨を防げばほとんど防げることがわかりました。土作りと雨よけハウスで無農薬栽培の目途がついたのです。
 土屋さんは害虫対策として当初は米酢、黒砂糖液などを使っていましたが、あまり効かず大変苦労されました。現在は木酢液に「さんま・いわし」「とうがらし」「キハダ」「ハーブ(ミント)」「にんにく」などを半年以上漬け込んだ自家製の自然農薬を使っています。例えばダニには「さんま・いわし」液が、スリップスには「キワダ」液が効きます。同じものを連用していると虫の方が慣れてきますので、交互に違う液を使っています。
 土屋さんが今日まで何とか頑張り続けたのは、唐沢さんはじめ当初からお付合い頂き、強く励ましていただいた方々のおかげだとおっしゃっています。


土屋順子さんのぶどう
■品種
ピオーネ(オルター基準◇)ジベレリン処理あり・種なし。出荷は9月10日頃〜。
スチューベン(オルター基準☆☆)ジベレリン処理なし・種あり。出荷は9月20日頃〜。
ブラックオリンピア(オルター基準☆☆)ジベレリン処理なし・種あり。出荷は10月〜。

■病害虫対策
 雨よけビニールハウスで病気を防いでいます。散水はせず、水は地下水だけです。ぶどうは乾燥地帯の作物だからです。防虫は防虫網をまず利用しています。
 害虫対策として木酢液に「さんま・いわし」「とうがらし」「キハダ」「ハーブ(ミント)」「にんにく」などを半年以上漬け込んだ自家製の自然農薬を適宜使っています。木酢液の購入先はヤイム(上山市)のナラの自社製木酢液です。
 その他、休眠期に1回、天然物系の石灰硫黄合剤(JAS有機別表農薬)(殺虫)を使用しています。ぶどうの木の幹の根元に防虫用の忌避材「ガードペイント」を塗布したこともあり、今後も使用の可能性がありますが、ここ数年は木酢液の効果か虫がこなくなったので使用していません。これは殺菌剤と生石灰を糊状にしたペンキ、表面忌避剤で木への浸透性はないとされています。根から入るぶどう虫への対策です。

■除草
手刈り、除草機。

■肥料
 良質粘土タフライト(サン・ラーテル)で粘土農法を行っています。粘土の成分、ミネラルが過剰な窒素をコントロールするのです。また、アルカリに偏らせて灰色カビやダニの嫌がる環境を作ります。肥料の使用も少なくできます。
 有機ぼかし肥料(万作ボカシ)…米ぬか、菜種油かす、豆ガラなど有機原料100%発酵肥料。魚粉、豚骨粉。

■ジベレリン処理(種なしぶどう処理)
 ピオーネ開花の前後に、つぼみ及び果房にジベレリン溶液の浸漬処理を行っています。種ありは劣化しやすく酸っぱくなるという理由ですが、最大の理由は消費者が種なしぶどうを好むからです。
 スチューベンとブラックオリンピアにはジベレリン処理は行いません。したがって「種あり」です。


市販のぶどう(大粒種)の防除剤
●時期・・・休眠期
●薬剤・・・ベンレート水和剤、ラビキラー乳剤、展着剤
●対象病虫・・・トラカミキリムシ、晩腐病、黒とう病、つる割れ病

●時期・・・発芽前
●薬剤・・・石灰硫黄合剤、展着剤
●対象病虫・・・褐斑病、カイガラムシ、ハモグリダニ、ブドウサビダニ

●時期・・・展葉5〜7枚
●薬剤・・・ベンコゼブフロアブル、ミクロデナポン水和剤、展着剤
●対象虫・・・べと病、黒とう病、フタテンヒメヨコバイ、ハダニ類、メクラガメ

●時期・・・開花直前
●薬剤・・・ゲッター水和剤、展着剤
●対象虫・・・灰色カビ病、べと病、うどんこ病、褐斑病

●時期・・・落花直後
●薬剤・・・ロブラール水和剤、サンドファンM水和剤、ロディー水和剤
●対象虫・・・灰色カビ病、べと病、黒とう病、褐斑病、晩腐病、すす点病、うどんこ病、フタテンヒメヨコバイ、チャノキイロアザミウス、スリップス

●時期・・・7月中旬
●薬剤・・・オーソサイド水和剤、オルトラン水和剤、コロマイト水和剤
●対象虫・・・ハダニ類、フタテンヒメヨコバイ、スリップス

●時期・・・7月下旬(袋掛前)
●薬剤・・・アミスター10フロアブル、アドマイヤー水和剤

●時期・・・8月中旬
●薬剤・・・ボルドー
●対象虫・・・べと病、さび病、褐斑病、晩腐病、フタテンヒメヨコバイ、ブドウキンモンツヤコガ、トラカミキリムシ、コガネムシ類

●時期・・・収穫直後
●薬剤・・・ボルドー、スミチオン水和剤
●対象虫・・・べと病、さび病、褐斑病、トラカミキリムシ、フタテンヒメヨコバイ、コガネムシ、アザミウマ類



―文責 西川栄郎(オルター代表)―


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