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BSE問題で緊急フォーラム
通信887号資料記事
2005年7月7日消費者リポート第1300号記事より転載

元アメリカ政府の高官が語る アメリカの牛肉は危険だから食べない
 2005年5月21日、都内でBSE(牛海綿状脳症)問題についての集会(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会主催)が開かれました。
 講師は、アメリカ連邦政府の農務省大臣補佐次官や消費次長を務めたロドニー・レオナルドさん(現在消費者運動家)、日本の食品安全委員会プリオン専門調査会委員の山内一也さんが務め、お2人とも日本の全頭検査の重要性を強調しました。

○連邦政府は食肉業界の利益代弁者 
レオナルドさんによれば、アメリカ政府のBSE対策は予防原則には立たず、BSEリスクを消費者に押しつけ、食肉産業を儲けさせる政策となっています。
 産業界は、日本への輸出禁止で失った売り上げを早く回復したいと政府に圧力をかけたり、BSE検査の費用を惜しんで全頭検査を否定しています。食肉の安全確保は企業に任されており、政府の食肉検査官は現場で実際に検査することはありません。
 99年に食品医薬品局(FDA)が特定危険部位(SRM)の除去をすると宣言しても、予算の執行や措置は遅れ、02年にはまだ実施されなかったというスローモーぶりでした。
 変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)についても、政府は存在しないと言いますが、アイオワ州に1か所検査施設があるだけで信頼に足らず、現在カリフォルニアでの死亡例をイギリスに再審査を依頼して確認しているところです。
 レオナルドさんは、アメリカ産の牛肉は危険性があるため、03年から牛肉と鶏肉は食べず豚肉や魚を食べています。全頭検査をはじめBSE対策をしっかりやっている日本の牛肉なら安心だと述べました。

○畜産での肉骨粉全面禁止と全頭検査を 
 山内さんは、専門はウイルス学で、人畜共通ウイルス感染症を研究しています。BSEとvCJD対策としては、農場では、すべての動物に対する肉骨粉の使用を全面的に禁止することが必要だと主張しました。牛の感染実験では1mgの牛の脳でも感染が起きるからです。また、食品の安全性を確保するためには、感染した牛をと畜場で排除する全頭検査(スクリーニング)と、脳やせき髄などのSRMの除去という二重の対策が必要であると強調しました。
 日本の研究では、末梢神経と副腎でもSRMの可能性があるとされ、その範囲が拡大しており、現在の科学的知見は限られているからです。
 また、と畜・解体の過程で、運動神経を止めるためのピッシングによりBSEプリオンが肉に混入する可能性があり、牛肉製造の現場でSRM除去が不十分であるおそれもあるからです。
 しかし現在、国際貿易を円滑に進める立場が優先しています。日本のようなスクリーニングの視点が無視されていることは人の健康保護を考えると問題であり、日本のこれまでのBSE対策を継続し強化することが重要だと山内さんは結論づけました。
 その後の意見交換では、私も消費者として、お二人の全頭検査を重視する見解に賛成であること、アメリカの圧力に屈して国内対策を緩和する厚労・農水両省は問題であること、また緩やかなBSE対策をOIE(国際獣疫事務局)の国際基準にすることに反対であることなどを述べました。
                                           
   (山浦康明)

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