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ケナフ通信 2月特別号・初夏号
通信880号資料記事
… メールのおたより 大阪ケナフの会 落合雅治さん …
≪温室効果ガス 日本9割削減必要≫
 「今世紀中にも地球規模の海の循環が停止し、気候が激変する」「海が酸性化し、海洋生物が死滅する」――。
 2月1日から3日間、英エクスターで行われた「温室効果ガス安定化濃度に関する科学者会合」では、これまでSFのお話とされたできごとが、科学的な研究成果として発表された。従来、公式の科学的な知見とされてきたのは、温暖化の科学的な裏付けを行う国際機関「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が2001年に公表した「第3次評価報告書」だが、ここまでの衝撃的な内容は初めてのものだった。
 この会合は、英国の環境省などが主催し、日本を含むG8(主要8か国)、インド、中国など30か国から約200人の研究者が参加。温暖化の影響、防止のための削減量の見積もりなど、最新の研究成果を発表した。
 温暖化の影響で、地球規模の海水の循環が止まると、赤道一帯の熱が高緯度地方に伝わらなくなって、急激な寒冷化が起きる――。米映画「デイ・アフター・トゥモロー」が描いた破局を思わせる気候変動を予測したのは、英国のサウサンプトン海洋学センターのグループなどだった。
 同グループのシミュレーション(模擬実験)の計算では、十分な温暖化対策をとらなかった場合、今世紀末までに30%の確率で海水の循環が止まるという結果。別のグループは海水循環の停止がもたらす寒冷化を予測した。これまで、同様の現象は可能性がゼロではないものの今世紀中には起こらないという研究結果ばかりだった。
 気候モデルに詳しい松岡譲・京都大教授(環境工学)は「循環の原動力になる北大西洋での海流の潜り込みは降雨や氷の解け方など微妙なバランスで起こり、条件の設定の仕方によっては『止まる』というシミュレーション結果もありうることが示された」と解説。「この問題は今後、真剣に研究する必要がある」と訴える。
 また英国・プリマス臨海実験所のグループは、二酸化炭素(CO2)の増加で海水が酸性化して貝、甲殻類などの海洋生物が減少、絶滅といった大きな被害を受けるとする研究結果を発表した。
 さらに「南極の氷床が不安定化し、崩壊が進む」「CO2濃度が上昇すると、CO2を吸収していた陸域が、逆に発生源に変わり、さらに濃度が増すという悪循環を招く」といった報告もあった。
 地球の平均気温が産業革命時から2度、現在から1.4度、上がったら影響が甚大なものになるというのが有力な見方だ。スイス連邦工科大などのグループは1.4度に抑えるという目標を達成するためには、2050年に全世界の温室効果ガス排出を1990年の半分にすることが必要だとしている。今後、途上国の排出量が増える可能性は高いが、それを考慮すると先進国はより大きな削減が必要だ。
 松岡教授は「日本は80〜90%を削減しないといけない計算になる。たいへん厳しいが、達成しないと国内でも悲惨な影響を受けることになる。あと半世紀、できるだけ早く、本格的に取り組む必要がある」と警告する。
 
 読売新聞2005年2月16日記事一部転載


≪北半球大気汚染に中国「すす」が影響…NASAが分析≫
中国の工業地域などで発生する「すす」の量が急増し、北半球の大気汚染を悪化させていることが、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙研究所の分析で明らかになった。早急に排出量の低減を図らない限り、世界全体の気候に悪影響を及ぼす恐れがあるという。
 すすは、工場や火力発電所のばい煙、家庭でまきを燃やした煙などに含まれる。
 同研究所は、衛星観測のデータやコンピューターを使った計算で、地球表面に広がるすすの排出源を調べた。その結果、世界全体のすすの3分の2は工業活動が原因で、その半分が、中国を中心とする東アジア地域で発生していることを突き止めた。
 最もすすの影響を受けやすい北極地域を例にとると、1980年代初め、すすの排出源として大きかったのは旧ソ連と欧州だったが、その排出量はこの20年で4分の1程度に減った。現在の最大供給源は中国地域で、排出量は70年代後半の約2倍に増えたという。
 北極に飛来するすすは、海氷や氷河の減少、地表温度の上昇、海流の異変など地球規模の気候変動を引き起こす可能性がある。
 欧米や日本などの先進国がすすの排出量を減らしたのは、工場のばい煙対策などを進めた結果。大気汚染に悩む中国でも、炉を高温で燃焼させる装置の設置などが奨励されているが、導入した工場は一部にとどまり、すすの排出量は増え続けている。中国のすすは日本にも深刻な影響を与えている。
 同研究所の計算によると、西日本上空のすす濃度(雨などで地上に流れる分を含む)は、1立方メートルあたり500〜1000ナノ.グラム(ナノは10億分の1)で、北米や欧州の最大汚染地域の2倍以上になるという。
 ◆すす=炭素の微粒子。氷や雪に降り積もると、太陽熱の吸収を高め氷を速く解かす。NASAの計算によると、すすの増加量と北極の氷の減少の割合がほぼ一致するという。また、大気中の濃度が高くなると、呼吸器の障害など人々の健康にも悪影響を及ぼす。  

  読売新聞2005年5月14日記事転載


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