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全く酸処理しない貴重な海苔作り
カタログ“2008年4月1週号”
全く酸処理しない貴重な海苔作り
環境にやさしく、安全でおいしい海苔作り。
胞子作りから加工まで一貫生産しています。


●おいしい海苔のひみつ

 谷川水産の谷川哲也さんが作る海苔は甘みがあり、口の中で溶けていきます。温かいごはんにその香りがよく合います。そのおいしさには数々の理由があります。
 谷川さんの海苔養殖は、国内の海苔養殖としては最北のサロマ湖で行なっています。サロマ湖は国内3番目の面積があり、オホーツク海に面したきれいな海水の汽水湖です。また大きい川が2本、小さい川が5〜6本流入しています。この汚染の少ないきれいな湖がおいしさのひとつの理由です。
 谷川さんは種子としての果胞子養殖から植物体としての海苔葉状体養殖、さらに製品の加工・仕上げまで一貫生産を行なっています。北海道内の海苔養殖は谷川さんと厚岸湾にもう一人おられますが、そこへも種を供給されています。製造工程に全て目が届く、安心の海苔です。
 低水温での海苔養殖はたいへん難しく、苦労して自前で開発された種や一貫生産もおいしさのひみつです。野菜と同じで、サロマ湖の低水温と昼夜の水温の温度差が大きいことも味をよくすることにつながっています。


●酸処理をしない海苔

 一般の海苔養殖では病気を防いだり色艶をよくしたりするために海面で行なっている酸処理を、谷川さんは「海苔の味が抜けてまずくなる」と頑固なまでに拒否されています。それは初代であるお父さん哲康さんの教えです。酸処理を一定期間だけでもしていない漁師もたいへん珍しいと思いますが、全期間全くしない養殖はおそらく国内で唯一この谷川さんだけだと思います。たいへん立派で貴重です。
 珪藻を放っておくと、海苔の芽をつぶして成長を阻害します。幸いにもサロマ湖の低水温は、酸処理の対象となる珪藻や青のりの生育には向いていません。その分、酸処理する必要度が低くてすみます。それでも生えてくる珪藻は、ブラシなどの物理的作業や、9月頃養殖網を干したあと−20℃で冷凍保管することで対応します。珪藻、青のりは冷凍で死滅しますが海苔は生きています。


●おいしい若芽を、出荷直前に焼海苔に

 サロマ湖では結氷のため、1〜2月以降は海苔収穫ができません。この短い採取期間もおいしさの理由です。1ヶ月半しかない収穫期間は若芽ばかり。海苔も若芽の方が味がよいのです。
 焼海苔の加工は注文をきいてから、お届けの2〜3日前に行ないます。出荷直前の鮮度もおいしさの理由。焼き色のよく出た特徴ある焼海苔です。


●苦労の連続、低水温の海苔養殖

 サロマ湖の海苔養殖は、昭和36〜40年の海苔ブームの最中、昭和36年に20戸の漁師が始めました。初代哲康さんは常呂の漁協から指導を請われ、瀬戸内海(岡山市)からやってきました。以来46年、サロマ湖の低水温に合った海苔の種を見つけ出すまでにたいへんな苦労をなさいました。赤潮、台風の被害を受けたこともあります。天候、海水の状態など何年経っても難しい奥深い仕事で、当初20年は満足できる品質に達せず、海苔職人としての誇りも自信も失いかけたこともあるそうです。
 哲也さんは中学時代から手伝い、そんなお父様の技術を学んでこられました。最初は正直いやいやだったこともありましたが、結婚して責任感が出てきたそうです。今では難しいけど面白い、好きな仕事だとおっしゃいます。
 現在、サロマ湖の海苔養殖は谷川さん1軒となりました。他の人たちは安定しているホタテ養殖へと変わっていかれました。谷川さんもホタテの養殖が生活の柱です。谷川水産のスタッフは、お父さんの哲康さんのほか、お母さんの郁子さん、弟の道彦さん、奥さんの和賀子さん、娘さんの瑠美さん、娘婿の浩さんです。
 オルターへのご紹介は、札幌の自然食品店→故・西村英樹さん(村おこしをジャーナリストの立場で応援)→奈良よつ葉牛乳を飲む会からです。この方々はみんな私の友人です。


谷川水産・オホーツク サロマ湖の海苔
●養殖海域
 国内海苔養殖の最北、サロマ湖(汽水湖)。

●品種
 スサビ系ノリ(広い葉が特徴)。自家採種した品種で、かつて瀬戸内時代に養殖していた品種と北海道の岩のりなどを交配して、土地の気候に合うよう苦労して育ててきたものです。

●養殖工程
 冬に収穫した海苔を種用原藻として冷凍保存します。-20℃で凍結することで珪藻や青のりは死滅しますが、海苔は耐えて生きています。
 4月、冷凍しておいた原藻(種用海苔)を解凍し母藻とします。それをホタテの貝殻を敷き詰めた施設内の水槽に浮かせ、保温して果胞子付けをします。ホタテの貝殻は1年以上雨ざらしにしておいたものを使用。水槽の海水は1日おきに撹拌して培養します。
 4月〜8月下旬まで、水槽内の貝殻の中で果胞子は糸状体に成長します。8月中旬頃、水温22〜23℃になると、成長した糸状体から殻胞子が放出されます。この殻胞子を、施設内の水槽でクレモナ(ロープでできている海苔網)に付着させたあと、その網をサロマ湖に張ります。
 胞子の付着具合を確認しながら適当な干出を与え、珪藻など雑物の附着を防ぎながら、病障害のない健全な芽を育てます。殻胞子は発芽体となり、また単胞子を作り出し放出を繰り返します。ロープに付着した殻胞子から海苔葉状体が成長します。
 水温が15〜10℃に下がり、海苔が15〜20cmに成長した11月初旬から収穫が始まり、風雪が強まる12月初旬まで続きます。収穫は海苔収穫専用船で行ないます。刈り取りは2〜3cm残して、12月20日頃、サロマ湖が結氷するまでの間、1.5ヶ月間に約4回収穫します。

●製造工程
■焼海苔
@収穫した海苔を真水に近い汽水で洗う。
A海苔を裁断する。
B真水で洗って密度(厚みによる)を調整。塩分は多少あったほうがおいしいが、日持ちが悪くなるのでその調整がポイント。
C11月〜12月に全自動の乾燥機で、すのこ(プラスチック製)にすくい乾燥。はがして乾燥海苔とし、50枚ごとに束ねて冷蔵庫で保存。
D注文をきいて、出荷直前に焼海苔に加工して出荷。

■素干し海苔
 新芽摘みの限定された時期だけに製造します。収穫後、洗浄した海苔を脱水してそのまま天日干しにします。機械化できない作業なので製造量が限られます。香りが高く、そのまま子どものおやつとして食べるのがおすすめ。天ぷらにも。味噌汁、お吸い物、鍋物などへそのまま入れ、色が変わればすぐ食べられます。


市販の海苔がおいしくない理由
  オルター取扱いの海苔を食べて、そのおいしさにびっくりしている人は多いと思います。なぜ市販の海苔はおいしさが感じられない品物になっているのでしょうか。
 まず、海水の質が海苔の成長や味に影響を与えます。農薬や化学肥料の汚水の影響を受ける海域の海苔はまずくなります。オルターでは海苔養殖の海域として、瀬戸内海などの内水面を避けているのはそのためです。一番摘みの新芽は味がよいのですが、古葉になるほど味が低下していきます。本州では3〜4ヶ月間と長期間採取ができますので、いつの時期に採れたものかで品質に差が出ます。岩崎食品の海苔のように一番摘みを扱うことに意味があるのはそのためです。サロマ湖の海苔のようにわずか1.5ヶ月の採取期間だと、若い芽だけを採取することになります。
 品種による影響もあります。たくさん採れる、すなわち成長が早い品種は味が悪くなります。密植も味を落とします。栄養が多すぎて発生する赤ぐされ病、逆に少なすぎて起こる白ぐされ病などの病気でも味が悪くなります。豊作年と不作年でも味が変わり、不作の年は味が落ちます。真水で洗うことによる味抜けもあります。硬い葉は長時間(半日〜2日)真水につけて軟らかくして加工しますが、真水にさらしすぎることで味や鮮度が低下するのです。
 珪藻がつくと味が落ちます。温かい水域では珪藻がつきやすいので、酸処理、すなわちクエン酸あるいは塩酸、リン酸などで処理を施しています。酸処理すると製品の色艶はよくなりますが、海苔本来の香りや味が抜け低下します。また、環境・生態系への悪影響も心配されています。徳島県吉野川の河口で養殖している海苔に酸処理したため、鳴門わかめに穴アキ病が発生するトラブルも起きています。
 大手メーカーでは「安い」すなわち「品質の悪い、まずい」海苔を、味付け海苔に加工しています。調味料で味をつけるからバレないだろうということですが、その調味料も当然粗悪で、かくしてスーパーや生協など市販ではまずい海苔しか入手できない状況となっているのです。
 海苔に使われる化学薬品としては酸処理剤のほか、養殖ロープに殺菌剤、板海苔加工時にCMCなどの化学糊料が使われている心配があります。


―文責 西川栄郎(オルター代表)―


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