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◆可能な限り農薬を追放 山形県高畠町にある高畠町有機農業提携センターの河合三夫・泰子夫妻は、可能な限り農薬を減らした栽培でデラウェア、ベニズイホウ、スチューベン、キャンベル、ネオマスカットなどのブドウを栽培しています。 慣行栽培レベルでは年間約30回農薬散布するのに対し、河合さんの場合は年間3回で、使用薬剤は主としてJAS 有機栽培で毒性が低いために認められているボルドー液(石灰硫黄合剤)を使っています。石油化学系の農薬はラビキラー乳剤(スミチオン/フェントエート)とダイアジノン水和剤の2剤(3成分)だけの使用です。 山形県高畠町は中傾斜地が多いため水はけが良く、置賜盆地特有の昼夜の寒暖の差が大きく、昔からおいしいブドウの産地です。
◆きっかけは兄の農薬被害死 河合さんが有機農業に取り組み始めたのは農薬被害でお兄さんが37才で亡くなったことがきっかけでした。栽培していたブドウやリンゴの農薬散布をマスクなしで行っていました。当時使用していた農薬は毒性が極めて強いことで知られていたホリドールでした。 1973年に地元高畠町に星 寛治さん率いる高畠有機農業研究会、現在の高畠町有機農業提携センターが結成されました。朝日新聞にも連載された、有吉 佐和子著「複合汚染」にその活動が報告され、全国に知られました。当時徳島にいた私にも神戸の消費者団体「鈴蘭台食品公害セミナー」の安藤康子代表より紹介されました。 河合 三夫さんの義姉(奥様、泰子さんの姉)が高畠有機農業研究会のメンバーに嫁いでいたことや、他の親戚にもメンバーがいたことから、河合さんも高畠有機農業研究会に参加することにしました。
◆農薬0へのチャレンジ 河合 三夫さんご自身も、農薬を散布すると下痢をする体質で、農薬は嫌いでした。当初農薬をいきなり0にする無農薬栽培にチャレンジしました。自分の身体のことを考えて、あえてのことでした。しかし、2年めには落ち葉が多く枯れる木が続出し60aくらいが廃園になり、試行錯誤が始まりました。有機肥料を使って、土作りにも取り組みました。 現在のところ、農薬は0にはできていませんが、可能な限り限界まで減らしてきました。
◆異常気象に苦しめられ 栽培上の苦労は今も続いています。ブドウ作りは労力との戦いです。特に雪下ろし作業ができなくなれば、ブドウ棚は倒壊し、やめなければなりません。体力がいつまで続くか心配しています。 毎年のように新たな異常な気候に見舞われています。季節外れの大雪でハウス施設などの倒壊、記録的な大雨の被害、春の融雪の遅れ、梅雨前の干ばつなど気候に左右され、収穫が不安定です。地球が壊れてしまいそうに思うくらいです。ブドウ作りをやめる人も出ています。農家人口も年々減少しています。これからはもっと若い人に新規就農してもらわないと農村が守れません。そのためには有機農業に対する消費者の理解がもっと広がっていかねばなりません。
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高畠町有機農業提携センターのブドウ( ◆ ND ) |
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■生産者 河合三夫・泰子 ■品種 デラウェア、ベニズイホウ、スチューベン、キャンベル、ネオマスカット ■肥料 堆肥、骨粉など有機質肥料(いいねえ おきたま有機)を使用
■防除 1.展葉前 石灰イオウ合剤 ラビキラー乳剤 かっぱん病・トラカミキリ虫・カイガラ虫・ハモグリダニ・ブドウサビダニ 2.開花直前 6-4ボルドー 晩腐病・かっぱん病・灰色カビ 3.開花後 4-4ボルドー or 6-4ボルドー 晩腐病・かっぱん病・灰色カビ 葉の活性化・保護 4.収穫後 6-6ボルドー ダイアジノン水和剤 晩腐病・サビ病(日照時多い) トラカミキリ
※デラウェアのみジベレリン使用あり
■農協のデラウェア露地栽培病害虫防除基準 ●<散布時期> 休眠期 <対象病害虫> @展着剤 A晩腐病・黒とう病 Bブドウトラカミキリ <薬剤名> @アプローチBI Aベフラン液剤 Bラビキラー乳剤 <収穫前使用時 総使用回数> @− A休眠期1回 B発芽前(休眠期)2回以内
●<散布時期> 発芽前 <対象病害虫> @展着剤 A晩腐病・褐斑病・カイガラムシ類・ハダニ類・サビダニ類 <薬剤名> @ハイテンパワー A石灰硫黄合剤 <収穫前使用時 総使用回数> @− A発芽前
●<散布時期> 発芽直後 <対象病害虫> @展着剤 Aフタテンヒメヨコバイ・コガネムシ類 <薬剤名> @ハイテンパワー Aアディオン水和剤 <収穫前使用時 総使用回数> @− A7日前まで5回以内
●<散布時期> 展葉5〜7枚 <対象病害虫> @展着剤 Aべと病・黒とう病・晩腐病 Bフタテンヒメヨコバイ・アザミウマ類・カイガラムシ類 <薬剤名> @ハイテンパワー Aペンコゼブフロアブル Bモスピラン水溶剤 <収穫前使用時 総使用回数> @− A60日前まで2回以内 B14日前まで3回以内
●<散布時期> 開花直前(第1回ジベレリン処理後) <対象病害虫> @展着剤 A灰色かび病・晩腐病・褐斑病・黒とう病 <薬剤名> @ハイテンパワー Aオンリーワンフロアブル <収穫前使用時 総使用回数> @− A前日まで3回以内
●<散布時期> 落花直後〜第2回目ジベレリン処理前まで <対象病害虫> @灰色かび病・黒とう病・べと病・晩腐病・褐斑病 Aチャノキイロアザミウマ・フタテンヒメヨコバイ・ハマキムシ類 Bハダニ類・ブドウサビダニ <薬剤名> @アミスター10フロアブル Aスカウトフロアブル Bマイトコーネフロアブル <収穫前使用時 総使用回数> @30日前まで3回以内 A21日前まで3回以内 B21日前まで1回
●<散布時期> 7月上旬 <対象病害虫> @べと病・さび病 <薬剤名> @ICボルドー66D <収穫前使用時 総使用回数> @−
●<散布時期> 7月中旬 <対象病害虫> @灰色かび病・べと病・黒とう病・晩腐病・褐斑病・うどんこ病・さび病 <薬剤名> @ストロビードライフロアブル <収穫前使用時 総使用回数> @14日前まで3回以内
●<散布時期> @7月下旬 <対象病害虫> @べと病・さび病 <薬剤名> @ICボルドー66D <収穫前使用時 総使用回数> @−
●<散布時期> @収穫直後 <対象病害虫> @べと病・さび病 Aブドウトラカミキリ・コガネムシ類成虫・ブドウスカシバ・クワコナカイガラムシ・フタテンヒメヨコバイ <薬剤名> @ICボルドー66D Aスミチオン水和剤40 <収穫前使用時 総使用回数> @− A90日前まで2回以内
●着色障害防止に肥料用硫酸マンガン 使用方法及び時期 ・第2回ジベ処理液に混用の場合 硫酸マンガン ・満開20日後の棚面散布の場合 硫酸マンガン
―文責 西川榮郎(NPO法人 安全な食べものネットワーク オルター代表)―
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