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生イーストパンですが、副原料にこだわっています。 しっとり感を好む方に。
◆しっとり感を好む人に向いたパン 徳島市にあるタローパンの森正一社長は、国産小麦を原料に、市販に負けないしっとり感のあるパンを焼いています。小麦以外の副原料もオルターが推める安全安心の原料を使って、たいへんおいしいと好評です。 ただしタローパンでは、パンの発酵には天然酵母ではなく生イーストを使っています。生イーストは原料に製糖工場の副産物である廃糖蜜が使われていますので、オルターとしては手放しで問題なしとはいえない素材ですが、大手パンメーカーのようなイーストフードやドライイーストに比べるとはるかにましとの判断で、その使用を認めています。 安全性の立場からいえば、生イーストより天然酵母の方がシンプルで本来のパンのあり方であり、好ましいのはいうまでもありませんが、天然酵母パンは経時変化とともにパサつく(1週間くらい経っても蒸せばおいしさが戻ります)という面があり、パンの伝統のない日本人には市販のようなふわふわの薬品だらけのパンを本来のものだと思っている人が多く、なかなか天然酵母パンの良さを認めてもらえません。このような食感についてはいわば好みの問題で、理屈で説得するのは難しいことです。したがって、パンにしっとり感を求める人に対しても最低限、国産小麦の安全なパンを提供するという意味で、しっとり感のあるタローパンの存在理由があると思います。
◆副原料も安全に 発酵に3日かける天然酵母パンでは小麦粉が酵母によって分解され、旨味成分も産生されるのですが、仕込みから3〜5時間で焼き上げる生イーストパンでは小麦粉から旨味成分ができるひまがありません。そのため、どうしても乳製品などで旨味を補うことになります(ちなみに大手パンメーカーでは仕込みから1時間以内に焼き上げています)。 タローパンではこのような副原料にもこだわって、よつ葉乳業の乳製品をはじめ、種子島甘蔗分蜜糖、赤穂の天塩などを使っています。
◆幾多の失敗を乗り越えて タローパンは本年、創業60年を迎えます。森正一さんは二代目です。大阪大学経済学部を卒業して家業を継がれました。国産小麦で添加物を使わず、副原料にもこだわるというパン作りを始めて25年になります。 ある日、タローパンの店頭に見知らぬおばあさんが「パンを焼いてください」と言ってきました。森さんが「おばあちゃん、どんなパンが欲しいの?でもあまり少ない数だと焼けないよ」と言うと、「私はある共同購入団体に入っているけど、パンがないので、ぜひタローパンのパンを共同購入で食べてみたい」と言うのでした。その方は私たちが“榊野のおばあちゃん”とお呼びしていた徳島時代の会員で、タローパンは朝市でもおいしいと評判のパン屋、ぜひここで安全なパンを作ってもらえないか、と私にも熱心に働きかけてこられたのでした。こうして“徳島暮らしをよくする会”時代の私とタローパンが出会いました。 当時、森さんは家業を継いで3年目、一応のパンの知識は勉強されていましたが、よもや国産小麦でパンが焼けるとは思いもよらなかったそうです。グルテン量の少ない国産小麦、しかもイーストフードなどの添加物なしのパンは想像以上に作りにくく、今のようになんとか納得のいく国産小麦パンを作れるようになるには、何度も何度も失敗を重ねてこられました。 やがて二児の父となられ、自分の子やほかの子どもたちにも安全でおいしいパンを食べさせたいと真剣に思うようになり、原料へのこだわりも私とよりいっそう共有していただけるようになりました。
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■原料 ●国産小麦・・・東福製粉の北海道産(春よ恋)、九州産(ハルユタカ、ホクシン、南の香り) ●バター、脱脂粉乳、牛乳、ナチュラルチーズ・・・よつ葉乳業(カタログ2009年7月5週参照) ●砂糖・・・新光糖業の種子島甘蔗分蜜糖(カタログ2000年4月1週号参照) ●塩・・・赤穂化成の赤穂の天塩(カタログ2000年4月4週号参照) ●たまご・・・たむらのたまごのPHFたまご ●生イースト・・・カネカ(株)。酵母菌の餌として廃糖蜜。添加物はなし。 ●あん・・・谷田製餡。北海道小豆、種子島甘蔗分蜜糖 ●レーズン・・・正栄食品のオーガニックレーズン(アメリカ産) ●黒糖・・・上野製糖の沖縄産黒砂糖 ●シナモン・・・中国産
その他、離型剤としてよつ葉バター、分割機などには菜種油(国産菜種油・圧搾一番搾り)を使っています。
■製造工程 @原料を計量、配合 Aミキサーでミキシング B第一次発酵 C生地分割、丸めるまたは成形 D第二次発酵 Eオーブンで焼成 F放冷 G包装 H金属探知
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「食べもの百科」P122をご参照ください。
―文責 西川栄郎(オルター代表)―
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