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民族伝統をベースにした現代的な舞台作品で全国公演をしている劇団「わらび座」は、秋田県田沢湖町に本拠を置いて、文化、自然、農、教育などをキーワードに、豊かな人間の営みのありようを追及して活動なさっています。 かつて修学旅行でここでの体験をした学生が「心に汗をかくような感動を覚えた」と表現しています。その本拠は「たざわこ芸術村」と名づけ、「わらび劇場」「湯泉ゆほぽ」などのほかに、「田沢湖ビール」工場があります。
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田沢湖ビールの小松勝久工場長は、かつてホテルマンをなさっており、そのときお客さんがビールを飲み始めるとなかなか料理に箸が進まないことから、何とか食事を妨げないビールはないものかと捜しているうちに、ドイツの伝統的なビールに出会われ、ついにはその魅力にとりつかれ、自費で留学してドイツビールの製法を学ばれた人です。 折からの地ビールブームで、地元で「わらび座」が地ビール作りを始めることを知って、駆けつけられたのでした。田沢湖ビールの経営と営業を担当なさっている浮辺厚夫マネージャーは地ビールの「地」にこだわって、原料の国産化を目指しておられます。 秋田県麦酒醸造技術研究会は、ビールの発酵には難しいとされていた六条大麦を、進藤昌博士が見つけた桜酵母を使ってビールを作ることに成功され、田沢湖ビールで「ひかりと風のビール」として売り出すことになさいました。 田沢湖ビールではこの他、現在のところ国産原料ではありませんが、オルターとの出会いで原料の国産化を検討いただいている「桜酵母ビール」や、酵母の研究で有名な秋田県の小玉発酵化学研究室を主宰する小玉健吉博士が、世界自然遺産である白神山地の腐葉土から発見し、育てた天然酵母、「秋田天然酵母796」で作った「ぶなの森ビール」なども製造しています。 通常のビール酵母ではなく天然酵母を使うのは、おいしいというだけではなく、森を守ること、そして海を守る思いが込められています。ビールのお味の方は、小松工場長はまだまだとおっしゃっていますが、すでになかなかのおいしさで、これからがさらに楽しみです。小松工場長は、地ビールを何か特別なものとしてではなく、日常の中で飲まれるものになって欲しいと願っておられます。 紹介者は、オルタースタッフ亀岡佳奈さん。友人がインターネットのホームページで見つけてきたものです。
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「「ひかりと風のビール」」 ◆原料 麦芽(モルト):六条大麦。 今年製造分については、大潟村産、生産者JA大潟村 麦類生産班代表今野久一 (生産会員数32名)。 農薬は殺菌剤(シルバキュアフロアブル)、除草剤(ハーモニー水和剤)を使用。 その他、殺虫剤、殺ダニ剤、ホルモン剤などの薬剤は不使用。肥料には、有機活材(カントリーペレット)、化学肥料を使用。
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◎麦芽の製造工程 オルターの生産者で、「風の谷のビール」を作っていただいている、酪農王国樺nビール工房でモルト化していただいています。麦芽製造において、ジベレリンなどの成長促進剤は一切使用していません。 ・酵母:桜天然酵母。 進藤昌博士が、秋田県の桜の花(ソメイヨシノ)から採種した天然酵母。酵母の培養には麦汁のみを使用し、狂牛病の恐れのあるペプトン入りなどの人工培地は使っていません。 ・ホップ ホップの規格では最高位のファインアロマホップ、チェコ「ザーツ・ザーツ」を今回は使用。秋製造分からは地元栽培ホップが使える見通しです。 ・水 国内では珍しくなったブナの原生林におおわれている和賀山塊(奥羽山脈)の伏流水。 ◆製造工程 @モルトを粉砕 A糖化 B濾過 C煮沸 D冷却 E主発酵(7日間) F熟成(1ヶ月) Gビン詰め 発酵調節は冷水管による温度管理だけで、高速発酵法(熱発酵、撹拌発酵)、高速熟成法(熱貯蔵)、酵素添加、清澄剤やフィルターの使用などは行っていません。 ビンへは生のままの充填で、加熱殺菌処理も行っていません。したがって、酵母も生きています。また、ポリフェノール除去を行っていません。 大手メーカーでは、流通が長期間になるので、濁りの原因となるポリフェノールを除去しています。 ◆賞味期限 要冷蔵で一応3ヶ月と表示されていますが、1年置いてもおいしく飲めます。
「桜酵母ビール」(生)」 ◆原料 麦芽(モルト):ドイツのモルトが中心。残念ながら、ヨーロッパ方面の農作物にはチェルノブイリの放射能汚染の心配があります。モルトの国産化を検討していただいているところです。 酵母 :桜酵母(同上) ホップ :同上 水 :同上 製造工程 :同上
「「ぶなの森ビール」(生)」シャンパン感覚のビールです。 ◆原料 麦芽(モルト):「桜酵母ビール」と同じ。 酵母:小玉健吉博士が白神山地のブナの森から発見された「秋田天然酵母796」。 ホップ:同上 水 :同上 ◆製造工程 基本的には上記と同じですが、発酵に通常の5倍の時間がかかるビールで、まさに貴重品です。
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モルト(麦芽)を使用しているビールでは、そのモルトがヨーロッパ産であるために、チェルノブイリの放射能汚染の心配があります。しかし、大手では一部の銘柄を除いて、モルトを使う伝統的なまともなものではなく、ポストハーベスト農薬や遺伝子組換えの心配なコーンスターチを原料とした、いわばニセのビールなのです。 仕込みに使われるのは、高い水道料金を嫌って、中水(工業用水)を高度処理し、さらにpH調整など人工的に硫酸カルシウムや塩化カルシウムなどの薬剤処理をした水です。製造工程においては、高速発酵法(熱発酵、撹拌発酵)、高速熟成法(熱貯蔵)、酵素添加などで発酵を調整しています。 缶ビールのアルミ缶には、環境負荷も問題となります。 価格については、一般的に地ビールが高くついています。これは、大手メーカーよりモルトの購入原価が高くついているからやむをえないのです。大手メーカーは、名目だけにごく一部の原料を国産で作らせ、その国内農家育成を口実に、モルトの輸入問題がゼロとしているのです。 しかし、地ビールメーカーには1kgあたり23円の厳しい関税が課せられでいるのです。ここにも、役人と業者の癒着の構図が見え隠れしています。
−文責 西川栄郎−
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