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◆料理せずそのままお召し上がり下さい 山陰、松江にはかまぼこの原型といわれている「あご野焼」が昔から伝わっています。松江市の(有)青山商店(青山蒲鉾店)青山 昭、美貴子ご夫妻は、その「あご野焼」を、昔のままの原料や伝統的な製法を今も頑なに守って作っています。 材料の鮮度と塩加減がよく、炭火を使って焼き上げたかまぼこは、独特の弾力があってたいへんおいしい一品です。外はパリっとして、中は柔らかい。淡白でありながらゆっくり味わうと深い味わいがあります。調理せずそのままお召し上がりください。
◆ω3豊富なトビウオが原料 すり身に使う魚は、地元島根県東部沿岸の前浜で漁獲されるトビウオです。すり身に粘り気が出るよう、産卵前の脂ののった(ω3のEPA、DHAが豊富)一番おいしい5月下旬から7月中旬の時期だけのトビウオを、佐香漁協の冷凍庫に保存しておいて一年中使います。冷凍設備のない昔は、旬の時期だけの食べものでした。
◆もちろん食品添加物無添加 自家製のすり身には、化学調味料、リン酸塩、膨張剤、増粘剤、保存剤など一切の食品添加物を使いません。
◆地伝酒を復活 食塩、砂糖、酒などの調味料などはオルターとして認めることができるものを使っています。とくに江戸古来より出雲に伝わる料理酒、戦時中の統制により一時祖父の代に途絶えていた地伝酒を、大学の先生や地元商工会などの協力を得て酒造メーカーに働きかけ、1994年復活にこぎつけたもの。そのこだわりようは半端ではありません。
◆今どき炭火焼 製造には、採肉機、練り機などの最小限の機械を使いますが、基本は魚を一匹ずつ作業で処理していきます。極めつけは最後に炭火(ナラ・カシ)で焼き上げるというこだわりです。
◆松江の風物詩 「あご野焼」とは、その昔、氷のない時代に漁師が獲れたてのトビウオをすり身にして、竹に巻き付けていぶして、保存食として家へ持って帰ったのが始まりと言われています。野外で焼くので「あご野焼」といわれています。戦前までは、初夏になるとあちこちの蒲鉾店の軒先で焼く“あご(トビウオ)”の香ばしい匂いが辺り一面に漂い、松江の風物詩になっていたそうです。
◆地元の魚を使う蒲鉾屋は姿を消しました しかし、戦後はトビウオの漁獲量の減少や、安いスケソウダラなどの工業的なすり身を使った大量生産のかまぼこに押され、老舗の蒲鉾店が次々に姿を消していきました。
◆300年の伝統 そんな中、元は松江藩出入りの魚屋でおよそ300年前の1727年(享保12年)創業の青山商店ただ一軒が、昔ながらの原料と製法を頑なに貫いて、感動の味を現代に伝え続けています。青山商店の青山 昭さんは、14代目当主としてその伝統を一身に背負っています。 青山商店のかまぼこ「あご野焼」はもちろん松江名物ですが、この水準のかまぼこは、もはや日本中探しても他にはないほどの貴重なものとなっており、私たち日本人にとっての文化遺産といっても過言ではありません。
◆板付かまぼこ、さつま揚げもこだわり品 青山商店では「あご野焼」以外に板付かまぼこやさつま揚げも作っています。原魚はやはり地元近海前浜で獲れるアゴ、エソ、コチ、トラハゼ、カラガシラ(ホウボウ)などの白身魚や宍道湖でとれるセイゴなどです。それらを3枚におろし、刺し身で食べられる鮮度のものを手造りですり身にし、こだわりの調味料で味付けした上で、宮崎県産のモミの木の板にのせ、蒸したり揚げたりして製品にしています。
◆安全も達成 青山商店をオルターへご紹介いただいたのは、しじみネットワークの代表でありオルターのAC「ゆうきネット山陰」の代表である西村 敏さんです。「ゆうきネット山陰」ではすでに青山さんのかまぼこを扱っています。このたびオルターとしても、その原料仕様を確認し、取り組みを開始させていただくことになりました。 市販のかまぼこは、安いすり身や添加物、小麦粉などで増量し、収益を上げることを最優先していますが、青山さんは一生懸命いい材料を使って丁寧に手作りし、利益優先のかまぼこ作りとは正反対の道を地道に歩んでこられました。生産者の心意気や、原料のこと、作り方まで私たちは知って、伝統を応援していきたいと考えます。
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■あご野焼 <原料> ●トビウオ 島根県前浜 5月下旬〜7月中旬の漁獲 松江中央水産、(有)平万商店[出雲市] ●白身魚 島根県前浜で漁獲したエソ、コチ、トラハゼ、カラガシラ(ホウボウ) 恵曇漁協で水揚げされる魚、(有)平方商店、松江中央水産 その日に獲れたものがその日に入ってきます。 余った魚は休漁、時化、原料不足に備えるため冷凍して使用します。 ●食塩 (株)沖縄海塩研究所 粟国の塩(オルターカタログ2008年8月3週号参照) ●馬鈴薯澱粉 神野でんぷん工場(オルターカタログ2010年2月1週号参照) ●ビートグラニュー糖 北海道糖業(株) ●出雲地伝酒 米田酒造(株)[島根県] ●もち米[島根県産]、米麹[島根県産]、水[島根県産]、木灰(ツバキ)[静岡県産]
<製造工程> @原魚の頭と内臓を取り除いたあと水洗いする。 A採肉機にかけ、魚肉と骨、皮、ウロコに分ける。 B魚肉を水にさらし、血をとる。 Cいったん冷やしたあと、魚肉を布袋で絞る。この絞り具合は気温や湿度により調整する。 D魚肉をミンチとカッターにかける。 E石臼で魚肉を練る。 F塩、地伝酒などで味付けする。 G出来上がったすり身を包丁で延ばし、アルミ棒に手早く巻き付ける。 H焼き台の上で、ナラ、カシの炭火で30分ほどかけ、じっくりと焼き上げる。 I冷風室で冷ます。 J製品をカットし、包装する。
■さしみかまぼこ、白かまぼこ(中板)、白板かまぼこ(小板)、焼板かまぼこ <原料> ●白身魚・・・同上 ●食塩・・・同上 ●馬鈴薯澱粉・・・同上 ●ビートグラニュー糖・・・同上左
焼板かまぼこにはビートグラニュー糖の使用はありません。 紅かまぼこには紅麹(グリコ栄養食品(株)モナスカラー300 AR)の使用があります。※オルター仕様ではありません。 板付の板は宮崎県モミの木使用。
<製造工程> @〜Eあご野焼の製造工程と同じ F板にすり身盛り付け、成形。 G冷蔵庫にて一昼夜熟成。 H蒸す、焼板かまぼこはこの後炭火で焼き上げる。 I冷風室にて冷却後、包装。
生のまま召し上がれます。 さしみかまぼこは冷蔵庫で約2週間保存できます(手に触れず、セロファンで二重に包んで蒸しています)。
■さつま揚げ <原料> ●白身魚・・・同上 ●食塩・・・同上 ●馬鈴薯澱粉・・・同上 ●ビートグラニュー糖・・・同上 ●菜種油・・・鹿北製油(オルターカタログ2011年3月4週号参照)
<製造工程> 上記かまぼこ生地を菜種油で揚げています。 冷凍保存が可能です。
■あごすりみ <原料> ●トビウオ・・・同上 ●食塩・・・同上
―文責 西川榮郎(NPO法人 安全な食べものネットワーク オルター代表)―
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