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東京都発表、眼に入ると通院が必要なほど損傷 『メイク落としでトラブル発生』
通信832号記事
手元にある化粧品の全成分表示を確認してください
「メイク落としで眼にトラブル」が発生したので、被害の未然及び拡大防止のために、東京都が調査結果を2004年4月に発表しました。

◆被害の共通点はオレス系界面活性剤配合 
 都の情報によれば、メイク落としによる眼に対する危害の相談が、都内の消費者センターに00年9月から04年3月までに6件(5事業者、5製品)寄せられました。都が事業者に事情聴取などを行なって、5製品中4製品に共通してオレス系界面活性剤が配合、使用されていることがわかりました。
 化粧品は01年4月から、配合された成分の全面表示が義務付けられています(「消費者リポート」1144・45合併号)。このオレス系界面活性剤は、乳化剤として配合され、表示名は次のとおりです。▼オレス-2[ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.o.)]▼オレス-5[ポリオキシエチレンオレイルエーテル(5E.o.)]▼オレス-10[ポリオキシエチレンオレイルエーテル(10E.o.)]
 消費者センターのほかに、事業者にも被害苦情がオレス2は27件、オレス5は5件、オレス10は99件あって、ほとんどが通院しています。危害の状況は、眼に入ると時間の経過とともに「痛み」、「かすみ」等の症状が現れ、視力に影響を及ぼした例もありました。眼科医の診断は角膜損傷等ということです。
 メイク落としのクレンジングに使用されている合成界面活性剤は、皮膚を守っている角質層上の皮脂膜、角質層、角質層内の細胞間脂質の層などで形成されている皮膚のバリアを壊す代表的な毒性原料として指摘されています(小澤王春著『化粧品毒性判定事典』)。合成洗剤の主成分である合成界面活性剤については、日消連はこれまで皮膚障害をはじめ内蔵障害、毛髪への影響、環境への影響、環境ホルモン作用などの毒性をリポートやブックレットで取り上げて、問題を指摘してきました。皮膚の、特に眼の周辺や唇に使われる化粧品に配合される合成界面活性剤は、直接皮膚に塗りつけるだけに毒性作用も大きいといえます。
 東京都によれば、日本化粧品工業連合会に対して「眼周辺部に使用するメイク落としに界面活性剤を使用する際の方針を策定し、各会員に遵守するよう周知すること」を要望し、「オレス系界面活性剤については、眼に対する安全性が確認できない時には、メイク落としに配合しない旨の会員宛要請文書を配布する予定」との回答を得ているとのことです。
◆都に化粧品名と事業者名公表を申し入れ
すでに、4製品中3製品は販売中止となっており、残りの1製品は都の指導によって自主的に回収することになっています。この1製品を都の情報でみると、00年3月から04年1月までで製造中止していますが、販売数は59万7659本です。
 都は、メイク落としが眼に入らないようにと注意をし、手元にあるメイク落としにオレス系の界面活性剤が配合されているかを確認するよう促していますが、商品名と事業者名は公表しませんでした。確かに表示名は公表されていますので、成分表示のラベルを見ればわかりますが、全面表示制度の浸透は残念ながらいまだいたらないのが現状と考えられます。
 消費者は、商品名や事業者、メーカー名で危害情報を受け止めているのが化粧品に限らず一般的な傾向です。消費者が表示をしっかりと見ることをうながすとともに、この場合、まだ手元に持っていて使用している可能性が高いとみて、日消連は4月23日に東京都に対して、これらのメイク落としの商品名と事業者名を公表することを求める申し入れをしました。
 ほとんどの化粧品は、化学成分と合成界面活性剤で作られていることを、このような危害情報の度に消費者は再確認してきました。日消連の本『最新危ない化粧品』『安全な暮らし方事典』をぜひお読みください。
 (水原博子)


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