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ノロウイルス感染症
オルター通信959号記事
ノロウイルス感染症
  

Health & Love 生活医学Journal
第547号2006年12月1日発行より転載

 本日(11月20日)、「米クルーズ客船で集団感染、ノロウイルスか」とニュースが報道されていました。
 「大西洋横断クルーズ中の米客船「カーニバル・リバティー号」で、乗客乗員計670人以上がノロウイルスに集団感染したとみられることが19日、分かった。クルーズの運営会社によると、530人以上の乗客と約140人の乗員が症状を訴えた。今月3日にローマで乗船した客数人が出航前に体調を崩し、その後、航行中に乗客が船内で下痢や吐き気などの症状を訴えたという。」
 また、名古屋の老人介護施設では2週間で入所者と職員計39人がノロウイルスによる感染性胃腸炎にかかっていたそうです。
 毎年10月頃から冬にかけて集団感染が起きるノロウイルス性胃腸炎はワクチンも抗ウイルス薬もないのでインフル工ンザ以上に厄介です。
 ノロウイルスは小型球型ウイルスでエンベロープという外套を持たないので、逆性石けんとか消毒用エタノールでは消毒できません。
 ノロウイルスはカキ、アサリ、シジミなどの貝類から食中毒を起こすことが多く、これらの貝の中腸腺に生物濃縮によりノロウイルスが蓄積します。それを生で或いは生煮えで食べると、ウイルスはヒトの空腸の腸壁細胞で増殖して細胞を壊し、嘔吐、下痢(急性胃腸炎)を来します。
 次いで、糞便や吐物に含まれるウイルスが、汚物を処理した時に、手指や衣服、器物に付着し、それが、口から入り、次の感染を起こすわけです。あるいは、乾燥した糞便や吐物に含まれていたウイルスが空気を介して経口感染することも知られています。ノロウイルスは極少数で感染を起こします。先のクルーズ船での集団感染は食物と空調設備を介した空気感染の両方が起こったと考えられます。
 潜伏期間は1〜2日、症状は嘔気、嘔吐、下痢が主ですが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛などを伴うこともあります。一般に症状は軽症ですが、高齢者や乳幼児では死亡することもあります。ウイルスは、症状が消失した後も3〜7日間ほど患者の便中に排出され、感染源となりますので、注意が必要です。
 85℃以上で1分以上加熱するとウイルスは活性を失います。従って汚染された貝でも十分加熱すると大丈夫です。しかし汚染された貝頬を調理した手、包丁やまな板からサラダなどにウイルスが付着し汚染が広がることも多いと考えられ、入念な手洗いと包丁、まな板など調理器具の衛生管理の徹底が予防する上で重要です。
 感染して発病したら、嘔吐、下痢が強い時は、食事は取らず水分を十分取り、身体を休めましょう。天然酵母飲料をホットにして飲み、肝臓・腎臓・脾臓の温冷湿布法を行います。お腹が痛む場合はホットパックの余熱で下腹からお臍にかけて温めるか、坐浴法あるいは入浴して腹部を温めると痛みがとれます。水分を摂っても吐く場合は、病院で点滴を受ける必要があります。上に述べたように高齢者と乳幼児は診察を受ける方が安全です。
 乳幼児の冬季の下痢ではロタウイルスによる冬期嘔吐下痢症があります。この場合は白色からクリーム色の便が特徴で、重症化しやすいため、先ずは小児科で診て貰いましょう。



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