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自然に学ぶことが農業の基本です 福徳進一・信子さんの有機農業
カタログ“2003年7月3週”
 「自分の農業は自然崇拝農業」、「人間が使うのは畑の70%でよい。あとの30%は虫、鳥、草、微生物などの自然へ返す」、「作物は自立する」、「野菜はゆっくり宇宙時間で育つ」と農業哲学を語るのは福徳進一さん。有機農業を実践して約30年。無農薬栽培に取組んだきっかけは、私(オルター代表)との出会いとのことです。出会った当時は、農協の幹部で経営、経理の仕事をなさっていました。家では奥さんの信子さんが、慣行農法で野菜を作っておられました。脳腫瘍と診断されたことがきっかけで農協を辞めました。造影剤で詰まっていた脳血栓が取れ、脳腫瘍は誤診でした。当時は肥料、病虫害対策とも、私との意見は現在のようには必ずしも一致していなくて、議論があったことを記憶しています。
 福徳さんの子どもの頃の家の農業は、山の草やニシンを使うような、まさに有機農業だったそうです。そして、慣行農法を経て、現在のような有機農業と、両方やってきて、今は『わら一本の革命』で有名になった福岡正信さんのようなレベルに到達なさっていると思います。「近代化の延長には安全はない」、「量で値段がつく時代はやがて終わらせないといけない。見かけではなく安全、味、栄養などの品質、中身を評価されないと」、「自己責任」、「情報公開が大切」、「手間をかけない(実際は大変手間をおかけになっています)、超省力、超安全」、「作物を管理するという発想はダメ、育ってもらうもの」、「自然環境こそ大切」、「有機認証は買う人の認証の方がよい」と農業への想いがポンポンと口から出てきます。志を大切にするために、低収入に耐えていらっしゃったとのこと、頭が下がります。オルターのバスツアーの際、奥様の手(写真)を見て、参加者は大変感動しました。


福徳進一、信子ご夫妻と
ツアー参加者を感動させた手
福徳さんの有機農業
肥料

▽▽ ハウス栽培の小松菜、レタス、ホウレン草、春菊、ラディッシュ、かぶら、ネギなど

 基本は稲のもみがらと魚粉です。鳥はきても虫はこない。その上に種をまくと、種は喜んで生えてくるようです。
 有機物はむやみに入れたらダメです。一定量以上入れても土は受付けません。土の態勢が出来ていないのに、どんどん入れるのはダメです。収穫で取った分だけお返しするという考え方が大切。野菜に肥えをやると考えていた頃はダメだった。土や微生物にやると考えるようになって、うまくいくようになった。多収量を目指してやるのはよくない。有機物で腐敗菌が増えることもある。このメカニズムを知らないと化学肥料よりも悪いことがある。善玉菌だけでなく、適当に悪玉菌もいるバランスが大切。
 3年に1回、畑に草を生やす。草は年2回ほど刈って、その場に置く。土壌菌を利用するためです。
 自家栽培のソルゴー(とうもろこしの一種)を作って1ヵ月後に竹炭と一緒に畑にすき込むこともしています。ソルゴーの直根は水はけによいし、こうすることでミミズのエサになるとのことです。

▽▽ 露地のじゃがいも、なす、オクラ、玉ねぎ、白菜、ブロッコリー、大根など

 基本は表作の稲ワラが入っているので、竹炭と魚粉。少量の牛ふんと木クズの堆肥を使うことも。野菜の散水に使う水は地下水。用水の水も勝浦川のたいへん美しい水ですが、砂れき層をくぐってくる地下水は活性化しているので、よいとのことです。

▽▽ 水田

 表作の野菜の肥料だけで、米作には何も肥料を使っていません。水田との輪作で畑の草が減ってよいとのこと。田んぼの除草には田ゴロ(写真)を使っています。もちろん、除草剤は使っていません。


草を大切にした畑
田ゴロ(手押し除草機)
無農薬栽培
 一切の化学農薬を使っていません。木酢液、ストチュー、HB101(ヒノキエキス)など代替農薬に頼ることに対しても、自然の環境がしっかりできていれば、虫や病気に冒されるはずがないと批判なさっています。

 福徳さんの農業の最大の特徴の一つは、草を大切にするということです。まさに、草の中で野菜を育てるのです。一般の農家のように草は取らないのです。畑を見学にきた人が、よくずぼらな農業と勘違いしてしまうほどです。3年に1回は、草を作物のように輪作に入れているのです。当然あぜ草も大切になさっています。とくに用水の付近にある草は大切です。草は天敵の住まいです。また様々な失敗の後始末は全て草が自然に排除してくれるのです。セイタカアワダチソウでも、焼畑すれば、アブラムシやヨトウムシも死んでしまい、次作はきれいになります。焼畑には、小型の火炎放射器を使います。燃料は灯油ですが、環境のことを考えて、菜種油廃油でできるようにしたいと考えておられます。

 なすびなどにテントウムシがつきすぎた場合、剪定して焼くと、きれいな芽が再び吹いてくるのです。いよいよ虫で困ったときは収穫を休み、焼いてしまっておられます。1年休むと次作は2年できるので、気になさいません。飢饉の翌年が豊作なのは歴史が教えていることです。

 ここ3年間は台風に邪魔されて出来ていませんが、ハウスは太陽熱で消毒します。閉め切ったハウスの中で、太陽熱で80℃くらいになると草の種は、2時間で消えてしまいます。

 病害虫に強い作物を作るために、オーソドックスに「輪作」や「混植」をしています。一畝ごとに違う作物を植え、多品目を作っているので、同じところに連作をすることもありません。「オクラとシソの組合せ」では、柔らかくていいシソができ、オクラもちょうどよい大きさになります。「ねぎと春菊」も相性のよい組合せです。
 福徳さんの畑、ハウスには実にたくさんの野鳥が集まっています。ただし、カラスは種を取り、ハトはビニールを破り、猫は魚粉を食べるから困ります。クモも無数にいます。

 虫を憎いと思っていた頃は、虫で苦労しましたが、生態系を活かして虫と対応するようになったら、昔のようには虫はいなくなったそうです。自然が自然になったら、虫や病気で困りません。このごろは天敵が増え、虫のバランスがよいのです。今では虫がいたら観察のチャンスだと思って、なすがままにさせて観察なさっているとのことです。畑が自然に近づいたので、周囲の自然が戻り、庭木まで見違えるほど元気になったとのことです。いいことをしたら、いいことの輪が広がります。自然環境を修復し、天敵を大切にすればよいのです。他の農家が嫌うモグラに対しても、モグラは排水溝の工事をしてくれているようなもので、歓迎ですとおっしゃっています。


農薬漬け農家の現状
 福徳さんの近くの農家27軒中、17人が30歳後半〜40歳で若死にしたそうです。「肝臓がとろけて死んだ、農薬の影響に違いない」。農薬の使用希釈度も2000〜3000倍だったのが、今は500倍が当たり前。それだけ虫には耐性が出来て、農薬の効力がなくなっています。農薬をまいた翌日に出荷も、まだしています。行政が野菜サンプルの検査にくるとき、悪い結果が出ないよう、農家に農薬散布をしないよう事前に注意の連絡をしてくるそうです。農協が管理日誌をつけるよう指示しているが、本当のことが書けず、みんな嘘の報告を記入せざるをえないので、困っているそうです。




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