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オルターは無茶々園のみかんの栽培方法に理解をいたします。
オルター通信1061号 記事
オルター代表 西川栄郎

「食品と暮らしの安全」11月号の編集後記に
『「精神」をおかしくするネオニコチノイド系薬剤を使って温州みかんのカメムシ退治をした無茶々園。「環境・安全」に取り組んできたのになぜ?と、無念で悔しい。私たちは取り扱いを停止しましたが、生協などでは今まで通りに案内。勉強が足りないのは消費者だけではない!!』
という記載がありました。これに対し、

オルターの会員から
「無茶々園の温州みかんの事なのですが!最近“食品と暮らしの安全”では無茶々園の温州みかんの取り扱いを中止しました!食品と暮らしの安全と船瀬氏が問題視した!ネオニコチノイドとか言う農薬をカメムシ対策に使用したというのです。オルターとしては、この農薬は問題ないと見ているのでしょうか?オルターとしての見解を出せるのであれば知りたいのですが!」          (C012 Y・F)

また、オルター食材を扱っているお店から
「食と暮らしの本において、カイガラ虫の駆除のための消毒液の使用の事が掲載されていたが無茶々園のみかんについては大丈夫か否か教えて欲しい」

というご質問をいただきました。
これに対して、無茶々園にオルターから見解を求め、以下のように、文書での回答を頂戴致しました。


カメムシ防除におけるアルバリン顆粒水溶剤使用に関する無茶々園の考え方
(株)地域法人無茶々園 代表取締役 宇都宮広
1、この間のカメムシ発生の現状について
●カメムシ異常発生の現状
 みかんを食害するカメムシは、本来は杉や檜の実を繁殖の根拠としている虫です。国策により植林された杉山・檜山は、現在国内産の木材が売れないために人の手が入らず荒れ放題であり、そのために実のつき方も多い年や少ない年が出てきています。元々雑木林に比べて単一の樹が埋まっているので生態系としてのバランスは崩れており、ある一定の虫が多く発生する環境が整っている上に、環境の変化によってカメムシの繁殖源である杉・檜の実の増減が極端になっているため、昔では考えられないぐらいのカメムシが発生することがあります。
 その杉・檜の実が多い年は、それを食べたカメムシは多くの卵を産み、これが孵化をして親が食べつくした杉山・檜山を離れてみかん山などへ降りてきます。堅い針葉樹の実を食べるカメムシは、自分の唾液を出して実を溶かしてから食べる性質をもっているため、果汁の多いみかんではこのカメムシの唾液が実に充満して味に影響を与えたり、吸汁痕が腐敗の原因となり、果肉も水分が抜けてスカスカになります。そのため、カメムシの被害を受けると出荷には適さない状態の果実が極めて多くなります。
 その他、温暖化の影響で越冬するカメムシの数が多くなったことも大発生の要因でもあります。環境破壊を続けた人災であるとも言えるのです。

●2003年の異常発生
 2003年は隔年結果の表年に当たり、9月の中旬頃までは豊作傾向にありました。しかし 同月下旬からカメムシが湧き始めて、みるみる内に食害にあってしまい、ひどい畑では一つも収穫できない園地もありました。当初950tのみかん出荷予定が、結果690tの出荷になり各農家の打撃は甚大なものとなりました。
 それまでの無茶々園では、とにかく農薬散布を我慢するという姿勢をもち、この年も前年に有機JASの認証を取得したこともあって、カメムシの姿が見えても少し我慢をしてみようと待ちました。その数日後には畑全体が全滅という悲劇を呼ぶことになり、これを受けて翌年には台風被害も重なったことから有機JAS認証も一度全て返上することにまでなり、カメムシの対策を考えさせられる年となったと言えます。1992年ごろまでは、10年に1回程度大発生が見られたものが、最近では2年に1回の割合で大量発生が起こっています。

2、無茶々園におけるカメムシ対策
●カメムシの防除姿勢
 ここ数年、無茶々園のみかん栽培は上記2003年のカメムシ大発生、2004年の台風による塩害、2005年の大寒波、2006年の大不作・カメムシ大発生とまったくいいところが無く、農家の経営は困窮を極めております。一反歩当たりの収量は1tを切る畑も多く、みかん農家の存続が危ぶまれる状況です。これ以上の収量の減少は現農家の経営状態では耐え切ることもできず、またカメムシ対策には現在の所は化学合成農薬以外の有効手段も見出せないということから、カメムシ発生には化学合成農薬の使用を認めております。もちろん、農薬を使わない手段は常に考えており、ハーブを植える、唐辛しエキスなどの忌避剤を撒くなどの手段を講じておりますが、カメムシの個体数は想像はるかに超える量であり、みかん一つに十数匹がついている光景は当たり前のように見られ、化学農薬以外の方法を試すにはあまりに大きなリスクをかぶることになっております。
●農薬の選定
 基本的に農家には農薬に関する専門的な判断は難しいと感じています。 道具としての良し悪しは経験的に判断できますが、化学性や毒性については巷に溢れる様々な情報を取捨選択しながら判断しなければいけません。今のところ使用農薬リストの作成は、法律を遵守し、社会的な動向や取引先の基準に合わせて決めることにしています。
 カメムシの防除に関しては、昨年まで選んでいたのは主に合成ピレスロイド系のロディー乳剤でした。しかし、昨年ごろから防除効果の持続性がないことが大きな課題となり、またリサージェンスによる他の害虫(主にダニ類)の発生が著しく、防除回数の増大を招く危険性がありました。また、毒性分類でも魚毒性ではC類の劇物扱いであるために、カメムシに対応する農薬の情報を集めた結果として、ネオニコチノイド系のアルバリン顆粒水溶剤を昨年から一部取り入れております。 アルバリンは急性毒性でなく、魚毒性A類の普通物扱いであり、生脇や大地、らでぃっしゅぼーやでも扱いについて禁止もしくは使用を控えるように進めている農薬ではないことを調査して採用をしております。
 今回の使用に関して、確かに調査不足で「食品と暮らしの安全」で訴えている危険性を事前に把握はできていませんでした。来年に向けての対応は今のところ定まってはおらず、この問題をどう考えていくのか苦慮している状態です。前述したように農薬以外の殺虫灯や各種忌避効果のある資材の検討を続ける基本姿勢は崩さないことに変わりはありません。

3、今後の対応
@基本姿勢は、農薬は使わない、使い たくない。
  そのための対策を研究していま す。一つは、殺虫灯など異常発生時 に個体数を減らす工夫です。もう一 つは、忌避剤や天敵農薬の調査開 発です。現在、ハーブパケットという 忌避剤の試験を予定しています。
Aネオニコチノイド系農薬の使用につ いて
  しかし、忌避剤等の使用である程 度の効果は期待できますが、カメム シの被害を無くすことを保証するも のではなく、現状では上記を実践し ながらも大発生した場合は農薬散 布をせざるを得ない状況です。
  農薬は毒性を根拠にしているも のであるため、どの農薬であれメリ ットがあれば同時にデメリットがあ るものと考えられます。ネオニコチ ノイド系農薬は新しい農薬でもあり、 専門化や取引先の皆さんと十分議 論して決定していきたいと考えます。


オルターとしての見解
「食品と暮らしの安全」の丸田晴江さんが指摘されたネオニコチノイド系農薬「アセタミプリド」は、事故米事件でも残留が問題となった農薬で、神経毒性が極めて強く、脳に蓄積して、キレやすくなり、暴力、犯罪衝動を引き起こすと指摘されています。その意味において、追放していかなければならないものと考えます。農薬はオルターがこれまでにも説明してきたように、本来、殺細胞効果を利用して農業生産に使っているもので、毒性に幅があったとしても、いずれも毒で、オルターとしては全て追放すべきものと考えています。だから、無農薬や有機農業に取り組んでいるのです。
 無茶々園も農薬は危険なものであるという認識は共有されており、だからこそ、限りなく農薬を追放なさってきています。無茶々園の栽培の状況は、通常の年なら全出荷量のうち8〜9割が「有機」水準であり、防除に使用している農薬はマシン油やボルドー液のように有機JAS規格でも使っても有機と認定される農薬です。手が廻らないなど、諸々の事情で出荷量のうち1〜2割については、そうか病対策に「ディラン」などの化学農薬を使う、いわゆる低農薬のものとなっています。 オルター基準では無茶々園のみかんは全て「◆」(低農薬)と格付し表示していますが、実際は「☆」〜「☆☆」のものがほとんどでした。
 しかし、今年に限っては温暖化による異常気象などの原因でカメムシが大発生し、そのためやむをえず「アセタミプリド」を出荷量の約9割のものを対象として使用されました。対策を打たなければ壊滅してしまうからです。 カメムシにはもうひとつピレスロイド系のロディー乳剤の使用も考えられますが、十分な効果が期待できないし、毒性はむしろ強いと考えられ、他に代替できるものが思いつかないという状況でした。
 この問題は大変悩ましい問題で、単純に農薬は毒だという指摘だけで解決するはずもない事です。現時点で検討しても、単純にカメムシ対策に「アセタミプリド」を使うなとは言えない現実がそこにあります。植林政策の不手際や温暖化の責任まで、もとより生産者の皆様に責任を押しつけても仕方がないことだと思います。
 全ての農薬を即刻、全て追放したいと願っているオルターとしても、簡単に「アセタミプリド」が駄目とはいいにくい状況です。カメムシが発生しなければ、使用することはないのですが、発生時に使うものとして、より毒性のない代替方法の工夫を待つしかないと思います。したがって、オルターとしては「アセタミプリド」を使用したことをもって、取り扱いを停止するという乱暴なことはできないという判断です。 生産現場の苦労を理解できない消費者にどんなよい作物が与えられるのでしょうか。一般の消費者が手に入れられるみかんで無茶々園のみかん以上の安全なものはまずないと言っても過言ではありません。それだけ努力されていることをまず認めるべきです。しかし、無茶々園の生産者の皆様にも技術をさらに上げていただく余地は当然あると思っています。
 ちなみに、オルターでは複数の生産者との提携があり、農薬を一切排除できている生産者がいらっしゃいますので、それは消費者の選択だと思います。

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