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自立農業を貫く大潟村黒瀬正さん
カタログ“2000年7月3週”
『米を作るのは 農民の基本的な権利や』
   秋田県、大潟村は農水省直轄事業として八郎潟の水を抜いた湖底の村です。有機物が堆積した土壌です。政府の呼びかけに全国から580戸の入植者が応募しました。ここの田んぼは表面20cmは固いが、その下は指1本で竿がすんなり入るほど柔らかい豆腐状の底無し沼になっていて、重たいトラクターがそのままぬかるみに沈んでしまうような、米以外適した作物はほとんどない農地です。
 その米しか獲れないような農地に借金して入植した農家に対し、一転政府は減反政策で米を作るなと言い出したのです。当然、これに反発した農家は自力で米を直接消費者に届けること、つまりヤミ米を始めざるを得なくなったのです。すると秋田県警は機動隊で村を100日にわたって封鎖し、それを弾圧したのです。県、農協も一体となった農家いじめが行なわれ、学校や結婚で子どもがいやがらせを受けるという有り様だったのです。
 私達との出会いは東京で行われた消費者主催の減反やお米を考える集会ででした。そこで、涙ながらに窮状を訴える農民の姿に、私達を始め全国の消費者団体が立上がったのです。そして減反に反対して「日本の水田を守る基金」を募り、その協力者へは生産者からお礼のお米を届けるという食管法の下での正当で合法な奇策を展開したのです。この活動が後に「提携米」の運動に発展し、当然無農薬有機栽培へも力を入れるようになりました。
 これに恐れをなした政府の特別栽培米の取り組みにもつながったのです。また大潟村のゴルフ場を止めさせる(ゴルフ場は農薬汚染が大きい)など、環境を守る取り組みへとつながってきたのです。この活動は、さらに認証時代を迎えて世界一厳しい栽培基準である「提携米栽培基準」の認定の中心的な役割を果たしました。
「農家は明るく、楽しく、自己責任で」
 ライスロッジの黒瀬正さんは、これら大潟村の運動の中心を担われてきたのです。滋賀県の典型的な米作農家の長男として育ち、滋賀県庁の職員として農政に携わったあと、大潟村に入植されたのです。
 入植の動機は@一度は「農業での自活は無理」と考えて公務員となったものの、やはり米作りがしたかったことA大潟村の荒野に魅せられたことB自ら農家の手本となって日本の農政を変えたい、ということでした。
 今の農民の態度は「オリ」の中に入って、もっと保護してほしいと政府に頼っているようなもの。そうではなくて、もっと自立すべきと。「農家は明るく、楽しく、自己責任で」これが黒瀬さんのモットーです。ライスロッジ(無料宿泊所)を設け、消費者との交流を図ったり、ブナの植林を通じ「農薬は水を汚す」ということを,流域農民にもアピールされています。

黒瀬正さん
〜ライスロッジ大潟の有機無農薬米〜
◆生産者:黒瀬正、花塚昭、丹野敏彦、田口精一、高野健吉、阿部淳、小林茂哉ほか6名
  
 大潟村には日本で一番大きいカントリーエレベーター(CE)があります。でも黒瀬さん達は「まるで砂利や家畜の飼料を処理するように効率性ばかりを追求するだけで、お米は食べ物だという思想が全くないCEでは、地域のお米をすべて混米するので、農家も自分が作ったお米を食べることができない。CEシステムは異常だ。」「これでは安全性にこだわる道理もない。」と農水省や農協の指導を拒否して、乾燥や精米などすべて自前で行っています。そして、黒瀬さん達は消費者と提携を進めることで、自分たちで作ったものを自ら食し、販売も手掛けるシステムを作る中で「どんな米を作ろうか?有機栽培にしたら、味は?肥料は?」と田一枚ずつ確認をするようになり、病気や虫に負けない栽培、それは健康な稲を育てることに気づきました。
 収量をねらって多肥や密植しますと、軟弱な稲になってしまうのです。目いっぱいの収量を得る化学多用の有り様を排除して、8割収穫を目指した結果、9割の収量を上げることができました。
大潟村の皆さん
◎品種 アキタコマチ◎
◆作り方:提携米の栽培基準(自給、自立、安全、自然との共存、環境、創意工夫)に基づいています。有機無農薬栽培です。水は奥羽山系の馬場目岳からの水。
◆肥料…元肥、うずらの鶏糞を主原料として放射菌による「ボカシ」、その他有機米米ヌカ、もみがら、魚粕、菜種油脂、骨粉など。追肥は原則として行わない。
◆防除…八郎潟の気温や強い風の影響で病害虫の発生が格段に少ない地域性を生かして無農薬栽培です。いもち病予防に貝化石カルシウムを使っています。その他、木酢液、天然有機酸、土壌微生物、お酢、タバコ、防虫菊粉末を工夫して使うこともあります。
◆除草…米ヌカ除草。有用微生物を多く含ませた米糠を田んぼの表面に散布すると発芽直後の雑草の根をやっつけられる。その他汚水管理、除草機、2度代かき、反復耕起、アイガモ、コイ、フナ、人手草。
  殺虫剤(空散も)、殺菌剤、成長を促進、また抑制する薬品、除草剤、化学肥料を一切使用していません。但し、全面積を無除草剤にすることは現状では人手が足りず困難なので、除草剤を一度だけ使った田圃は、減農薬栽培との栽培区分表示をして出荷しています。

◎市販のお米の問題点◎
ご存知ですか?市販のお米は、栽培期間中にこんなに農薬が使われています。
   (下の、秋田県の標準的な水稲防除体系をご覧ください)

  育苗床土・・・・苗立ち枯れ病…タチガレンエース粉剤
              カビ…ダコレート水和剤、ダコニール
  種蒔き・・・・・苗立ち枯れ病…タチガレンエース液剤(1〜4回)
  本田準備・・・・除草…ラウンドアップ液剤、プリグロックス、パスタ液剤
  育苗・・・・・・カビ…ダコレート、ダコニール
               イネミズゾウムシ、ドロオイムシ…オンコル粒剤、バダン粒剤、
         アドマイヤー粒剤、プリンス粒剤(3回程度) 
  代かき・・・・・除草…ソルネット粒剤、エリジャン乳剤
  田植え後・・・・除草…クサメッツ、カルショット、ザーク、ウルフエース、
         ホクト、スバーA、パピカA、ネビロス、ジョイスター
          栄養成長期 イネミズゾウムシ、ドロオイムシ、
         ハモグリバユ…シクロサール粒剤、トレボン粒剤、バダン粒剤、
         アッパー粉剤、サンサイド粒剤(3回程度)
               イモチ病…ビーム粉剤、ブラシン粉剤、カスラプサイド粉剤
  生殖成長期 ・・・倒伏防止…セリタード粒剤、ロミカ粒剤、ビビフル粉剤
               イモチ病…オリゼメート粒剤
               紋枯れ病…バリダシン粉剤、モンセレン粉剤
               ニカメイチュ…スミチオン粉剤、バイジット粉剤
               イネカメムシ、イナゴ…トレボン粉剤、ミスタージョーカー粉剤
               イモチ病…ビーム粉剤、ブラシン粉剤、カスラプサイド粉剤(2回)
  収穫期・・・・・稲こうじ病…Zボルドー粉剤
               ウンカ…バッサ粉剤、トレボン粉剤 
      
  輸入米はポストハーベスト農薬の汚染があり問題です。国内産の米は、野菜や果物に比べるとまだましとはいえ、これでもアトピーや化学薬品過敏症の人には症状があることがあります。
  兵庫県のある農協の米倉庫が空になったとき、掃除をした職員がその直後から発熱し、数日後に亡くなったことがありました。それは古米処理に使っていた臭化メチルが原因で、ホコリに吸着していた臭素化合物による事故だと考えられています。
  ところで、国内でのお米の流通において、例えば魚沼産コシヒカリの袋に他の産地のお米が混ぜられているのはごくあたりまえのように行なわれ、あらかじめ、さまざまな銘柄に印刷した袋が、自由に手に入る仕組みになっています。したがって、農家と直接取引する以外にはまずまともなお米が食べられない状態になっているのです。もちろん、ポストハーベスト農薬汚染のきついカリフォルニア産ジャポニカ種の米やカドミウム汚染米、ごみ焼却炉周辺のダイオキシン汚染米、古米もどこで混米されているかわかったものではないのです。そして、遺伝子組換え技術も、今、米をねらっているのです。
  高い価格で売られている胚芽米も御用心。無農薬でなければ胚芽には農薬が残留しやすいのです。また開封後数日で酸化するため、胚芽を食べたい人は家庭用精米機で分つき米をご利用された方が安くて安全です。


   ―文責 西川栄郎―


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