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たかはたりんごだより・・・星寛治
オルター通信1014号 記事
たかはたりんごだより
  里山の紅葉を新雪が被いました。季節のめぐりは早く、今年もふじりんごをお届けする頃となりました。
 その後、お元気でお過ごしのことと存じます。りんごづくりが生きがいの一つである私は、古稀を過ぎても現役で、農の営みにいそしんでおります。温暖化の兆しなのか、去年の冬は雪が少なく、剪定も一人で済ますことができました。
 ただ、前年の早期落葉のせいで、花芽の充実が弱く、花は咲いたのですが実止まりがわるく、幼果に掛けた袋の数も、昨年の半分以下でした。それだけに着いた果実は大事に育てようと思い、葉を食害するキンモンホソガなどを防ぐために誘蛾灯の捕虫器を設置しました。その効果はかなり発揮されて、最後まで葉を健全な状態に保つことができました。おかげで、猛暑の夏をくぐりぬけながらも、味の良い果実が生産できたと思います。ただ残念ながら、誘蛾灯の工事の時期が遅れ、果実に産卵するシンクイガの発生のピークに間に合わず、袋掛け前に入ってしまった被害果も多くなりました。箱詰めの時に注意したつもりですが、見落としがあったらご容赦下さい。また、果実の斑点も気になるところですが、安全で、機能性の高い食べ物づくりの営みに免じて、許容いただきたく存じます。いずれにせよ、長年にわたってわが家のりんごをご愛顧いただいてまいりましたおかげさまで、今日まで小さな家族農業を持続できましたことを、心からありがたく感謝いたしております。
 そんなわが家に、今年は予期せぬピンチが訪れました。人一倍丈夫で、働き者の妻が、お盆前に体調を崩し、入院加療の羽目になったことです。併せて、介護の主役を失ったショックもあってか、同時に入院した母が、手厚い加療にもかかわらず、永眠いたしました。九十六歳の天寿を全うしてのことです。その後、妻は退院し、自宅で養生に努めておりますが、日に日に元気を取り戻しておりますので、ご安心下さい。但し、来年からは、米も、りんごつくりも栽培面積を縮小し、体力と気力に見合った経営内容に変えるつもりです。
 幸い、秋の取り入れの作業については、稲刈り、脱穀、調整に至るまで、有機農業の仲間や、消費者のみなさんに援農をいただき、またりんごの摘みとりも学生や市民の方々のお手伝いをいただいて済ますことができました。その厚い友情が身にしみた年でした。わが身の限界と、またあらたな可能性を探る転機の場面でもありました。
 いま、日本の社会は、いちばん大切な生きる目当てを見失い生存の足場が揺らいでいるように思えてなりません。かけがえのない生命と環境を何より大切にし、簡素に心ゆたかに生きることに無上の価値を見出しつつ、再生への道を一歩一歩踏みしめていきたいと願っております。有機農業の理念と実践は、そうした生き方の源流を成すものだと信じています。すでに三十数年、生きた土づくりに汗を流してきた田んぼや果樹園は、柔い団粒構造を成し、小さな生き物たちの楽園に変わりました。
 時あたかも、国政において「有機農業推進法」が制定され、地方自治体では「推進計画」の策定に向けて動き出しました。草の根のレベルで地を這うような実践を積み上げてきた日本の有機農業運動がようやく大義名分を得たわけです。これからは、官民一体となった本腰を入れた展開が期待されるところです。
 結びに、またりんごのことに戻りますが、摘みとりを終え、黄葉を帯びて落葉したりんご樹は、まれにみるような大きく充実した花芽をびっしり着けています。たとえ鬼に笑われても、来年の豊作を期して、老農の血がさわぐのです。健康に留意しながら、楽しく、良い作品づくりに励むつもりです。
 
 高畠町有機農業提携センター 星寛治


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