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健康食品による健康被害多発 ダイエット工が売りのメリロートが危ない!
通信839号資料記事
厚生省が社名公表 悪質なDHC社にご用心
消費者リポート2004年7月27日第1266号より記事転載
 
 むくみやダイエット対策などをうたった健康食品として、メリロート(有効成分クマリン)を含む健康食品が販売されています。メリロートはマメ科のハーブで、大腿動脈と静脈の血管を拡張して血流を良くし、むくみを改善したり、毛細血管の透過性を抑える作用とリンパ管の吸収をよくする作用によって細胞周辺の水分増加を抑えられるとして、ヨーロッパでは医薬品として使用されています。
 日本でも配合薬として服用量が設定されていますが、薬効をうたわなければ食品として販売できるために、ダイエット効果などを売りものに販売されています。
 2002年に中国製ダイエット食品による被害が続出したために、健康食品の摂取が原因とみられる被害情報が都道府県から寄せられたときは、被害の拡大防止のために、厚生労働省(厚労省)は商品名、自治体名、事例概要を消費者に情報提供することになりました。
DHC社のメリロートで肝機能障害
 03年5月30日、厚労省が「肝機能障害の疑いがある健康食品」としてメリロートとブルーベリーエキスの二つの健康食品の商品名と原材料名、入院例を発表しました。その際、厚労省の健康被害への影響情報は不十分であり、懲罰的と受け取られないために社名公表はしませんでした。社名公表をしなくても、商品名と原材料名まで公表することで、どこの製品かわかると判断したものです。
 ところが、該当の販売会社である化粧品や健康食品の通信販売大手のDHC社は、公表前に厚労省に呼び出され口頭で通知された際に、「前向きに対応し、結果を報告する」と回答しながら、何ら具体的対応策をとりませんでした。しかも、顧客からの問い合わせには自社製品であることを認めるよう厚労省の指導があったにもかかわらず、「自社の製品であるかは調査中」として嘘をつき、同年6月11日まで「期間限定!健康食品キャンペーン」を続けて販売を促進していました。
 厚労省はその後も、DHC社に対して顧客からの問い合わせには自社製品であると認めるよう指導し、安全性資料の提出などを求めていましたが、9月になっても自社製品であることを認めないとの苦情が厚労省に寄せられていました。そのため、厚労省は10月31日、ついにDHC社の健康食品メリロートで、黄疸がでる肝機能障害が静岡県と新潟県で発生したと社名公表しました。
ハーブなど薬効含む健康食品の問題点
 一方、国民生活センターは、メリロートを含む健康食品による様々な健康被害の相談等を受け、03年12月〜04年5月まで、メリロートを含む「健康食品」11銘柄(表 メリロートを含む「健康食品」)について、有効成分や表示に問題がないかを医薬品と比べて調査し、04年6月に結果を発表しました。
 メリロート健康食品の成分量や品質、表示の実態、1日摂取量などを調べたものでしたが、結果はハーブ関連食品として薬効成分を含む健康食品の問題性を浮き彫りにするものでした。おもな問題点は次の通りです。
@1日摂取目安量の有効成分(クマリン)が医薬品の服用量を超えるもの(約2〜5倍)が3銘柄あつた(副作用の問題)(図 1日当たりの摂取目安量に含まれる有効成分(クマリン))。
A メリロートエキスの有効成分(クマリン)の含有率等には、銘柄間でばらつきがあり、メリロートエキス含有量の表示は品質の選択目安にならないものだった。また、有効成分(クマリン)の濃度は同じ銘柄でも個々の製品により異なるものがあった(品質管理の問題)。
B 容器包装や広告に消費者からみて予防や治療効果があると受け取られかねない表示が見られた(薬事法等違反の問題)。
C 栄養機能食品表示について消費者の誤認するおそれのあるものが1銘柄見られた。
 国民生活センターでは、消費者へのアドバイスとして、過剰摂取に注意をする、有効成分(クマリン)の効果を期待するなら、その含有量についても確認するよう呼びかけています。
 業界へは、自主基準および品質管理の徹底、容器包装に有効成分の1日摂取目安量がわかる表示、過剰摂取についての注意喚起表示、消費者に予防効果や治療効果を期待させたり、誤認を与える可能性のある表示の改善などを要望しました。
 また、厚労省と食品安全委員会へは、制度の見直し(植物成分抽出濃縮物の安全性の評価と食品衛生法の適正な運用、ハーブ利用の医薬品と食品(「健康食品」)の区分を再整理)と、表示の改善を要望しました。
厚労省行政指導による表示の改善を要請
 厚労省は自治体に事業者の表示の改善を行なうよう行政指導を要請しました。今回の調査で医薬品の1日服用基準内だった業者は表示の改善を表明していますが、基準を2倍以上超えていたロート製薬は、健康に問題を生じた重症例はないとしながら他製品への切り替えを発表しました。
 ところがDHC社は、ホームページに「メリロートを利用のみなさまへ」とする説明文を掲載。「DHCはハーブについて、最も厳しいヨーロッパの品質基準であるドイツコミッションEの企画を基準に配合量を設定しており、その最高量と比較しても3分の1程度で安全性に問題がない」としています。
被害発生でも販売促進続けるDHC社
 しかし、ドイツではあくまでも医薬品としての基準で、毎日常用する健康食品としての基準量ではありません。
 DHC社は、健康食品として重篤な副作用被害例を起こしながら、度々の行政の指導も無視して販売促進を続けていました。社名公表後も医薬品基準の安全性を健康食品の基準に当てはめて安全性を強調し、販売を続けていますが、企業倫理のかけらもない行為と言わざるを得ません。DHC社の一連のメリロート問題に対する対応は消費者を愚弄する許し難いものです。
 他の薬事法違反を疑われる広告とともに、7月9日、公正取引委員会へ取り締まりのための申告を行ないました。みなさまの情報もお待ちしています。(古賀真子)

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