通信販売の法規(特定商取引に関する法)に基づく表示

一切の化学薬品を使わない こだわり漆器作りを貫いた職人魂
カタログ2014年3月4週号
病気だった頃の妻が買える値段で健康食器を。
◆原生林の天然木が原料
 横浜市のTOMATO畑の田中 秀樹さんは、父である小田原漆器の名工、田中 栄二伝統工芸技能士が、一切の化学薬品を使わないほんものの漆器を作るために中国に渡り、完成させたこだわり木製食器を、ひとりでも多くの人に届けたいと奮闘しています。
 田中 栄二さんの木の器の原料の木は、中国福建省より南の暖かい地域の原生林にあった野生の木です。中国政府が開拓伐採している原生林の木を焼却前に入手しています。そのため、国内のクリ、カキ、ナツメのように農薬や化学肥料が散布されている心配はありません。国産材ではどうしても防腐剤、防カビ剤の使用を確認するための検査費が多額になり、運営が困難でした。

◆防腐剤、防カビ剤を使いません
 この原木を製材したあと、荒加工し、防腐のために煮沸します。防腐剤、防カビ剤のような薬品は使いません。仕上げ工程での漂白剤、合成着色料、石膏(目止剤)などの化学薬品も使いません。そのため木材本来の染みがそのまま残っています。

◆漆も自家採取
 漆は貴州省を主に、南部の原生林の漆の木から自家採取した100%天然漆を使います。防腐剤や合成塗料の混入の心配はありません。
 どんなに早くても原木から製品になるのには 1年3ヶ月以上かかります。3〜4年は当り前。その間すべて手造りで仕上げています。

◆妻の病気は自分のせい
 田中 栄二さんが、これほど漆器加工の安全を追求することになったきっかけは、奥様が癌に侵されたことでした。幸い食べものをよくして自然療法を必死に行い、奥様は癌から生還されました。その経験から、自らの漆器作りのときの薬剤処理に罪悪感を感じました。妻の癌は自分のせいだと思ったからです。以来、人の口に食べものを運ぶ食器に化学薬品を使ってはならないと考えるようになりました。

◆使命感に燃えて
 執拗なまでに原木や加工段階での薬品不使用にこだわる田中さんは、小田原伝統工芸から脱会しました。当時、最年少で小田原漆器の伝統工芸技能士になって使命感に燃えていた田中さんは、有害な薬品を使わない健康食器こそが伝統を守ることだと考え、何回も中国を訪れ、答えを探しました。
 中国では原生林が伐採されていることを知り、福建省の林業局にかけ合って、建材的に価値がなく焼却されている原木を入手できました。中国語は3ヶ月で覚えました。

◆全財産をつぎ込んで
 1995年、家や車を売って中国に渡りました。ジャングルの中に、許可もなく工房を建てました(今は許可をとって工房を運営されています)。その地域の子ども達はほとんど靴をはいていません。日本人とみるとお金を求めてきました。技術を学んで、いい品ものを作れば、いい給料をあげると提案し、80人の弟子を育てました。給料は日本円の価値と同等の金額を払い、村の人の年収は300倍になりました。今まで離職率ゼロです。フェアトレードのお手本のようです。
 ほんものの原料も揃い、大勢の弟子を持ち、生産体制も整いましたが、できた製品が順調に売れるはずはありません。小田原伝統工芸会を脱退し、取引先もゼロになったからです。さらに全財産をつぎ込んでしまい、大きな赤字もかかえていました。

◆父を憎んでいた息子の涙
 田中 栄二さんの息子、田中 秀樹社長は子ども心に、家を売り財産を処分して勝手に中国に行ってしまった父を憎んでいました。大学は住み込みで働きながら苦学して夜間大学を出ました。父のような貧乏になるまいと、大手商社に必死で入社し、やがて何百社をコンサルティングするキャリアになり、年収何千万という成功者になっていました。婚約者ができ、結婚式にそんな父でも列席してほしいと中国の父のもとを訪れました。
 そこで、新しい村ができ、人々から先生と慕われている父を初めて見ました。訪れた中国で、初めて中国に渡った経験を父から聞かされました。母のために執念のようにほんものの工芸品作りに打込んできた父はあまりにもまぶしく見えました。いつも中国から山のように自宅に送られていた木製品は、懺悔のためだろうと思っていました。しかし、我が子のために父が安全な食器を届けていてくれたのでした。涙が止まりませんでした。
 父がそうして頑張ってきた工房も、借金のため自己破産するので、あきらめなければならないのだと聞かされました。父は経営者としては失格だが、もの作りでは一番大切なことを貫いてカッコいいと思いました。今までお金ばかりを追いかけてきた自分をなさけなく感じていました。

◆父と同じ想いで生きる
 父の真実を知り、同じ覚悟で父といっしょに働くと決めた田中 秀樹さんは素早く行動しました。会社を辞め、株を売り、父の借金を肩代りしました。決まっていた結婚式を中止し、婚約者にもこんな自分についてこなくてもよいといいました。婚約者は「まちがわない選択をするあなたについて行きます」と全てを理解してくれました。
 漆器の技術を全く修得できていない田中 秀樹さんの名刺には、社長ではなく「営業、販促チーム」と書いてあります。買ってくれた人からお礼状が届く、今が一番嬉しいと。

◆子どもたちに使ってもらえる値段に
 私はTOMATO畑の食器は「安かろう悪かろう」のいわゆる中国製とは全く異なるもので、ほんとうは、この何倍もの値段がつくはずの超高級漆器と思っています。しかし、田中 栄二さんは、病気になって貧乏をした当時の妻が買える値段でないといけないと、少しでも安く売ることに頑なにこだわっておられます。子どもたちに使ってもらえるためにはなるべく安くないといけないのです。一人でも多くの人がこのほんものの食器に出会ってくれることを祈っています。
 TOMATO畑の評判をみて、見ためは同じような安物のニセモノが早速出回ってきています。消費者が、うわべだけのデザインや色にごまかされないで、ほんものの眼を持って賢明な選択をされることを望みます。
 TOMATO畑のオルターへのご紹介は大王商会です。関東のイベントで見つけられたそうです。


TOMATO畑の安心こだわり木製食器
■原料
●天然木 
中国福建省より南の原生林の天然木 
クリ、ナツメ、カエデ、ゴム、マツ
●漆 
中国貴州省を主に、南部の原生林の漆の木から
自家採取した天然漆
●瓦土 
粘土を焼いて粉にして使用、木目を残すために使用

※TOMATO畑では一部にウレタン塗料したものも作っていますが、
 オルターでは扱いません。

■製造工程
@中国政府が開拓政策のため伐採した原生林の原木を焼却前に入手
A荒加工 
原木の枝をはらい角材に成形 ろくろで荒加工
B煮沸消毒 
腐りやすい導管を100℃24時間煮沸消毒して洗浄する
C乾燥 
日陰干しで木を1年以上ねかし養生する
養生とは加熱で縮んだ木をフワッとなるまで待つこと。
フワッとなると保湿性、断熱性に富む
D虫くい品を取り分けする
E本番成形
F目止め 
ろくろで回しながら、うるしべらで漆を混ぜた瓦土を
ぐいぐい目に押し込むように塗る
G一次乾燥
H水研磨 
表面から漆をとり、木目を出す
I本塗り 
漆を6回以上塗って仕上げる


市販の漆器の 問題点
 木の器、漆器は木が原料ですので、イメージ的には天然感があり、何かしら安心感を与えています。まさか有害な化学薬品は使用されていないと思いがちです。しかし、実際には現代の木の器は、御多分に洩れず薬品まみれで作られています。漆器製品にいろいろな問題があることが一般にあまり知られていないのは、その工芸技術が一子相伝で親から子へ伝えられているため、秘匿性が高いためです。また漆器からの化学薬品の溶出については、食品衛生上からも何の検査の義務もなく、安全性に関して、一顧だにしないメーカーの良心にまかせられたままです。
 漆器に使用されている化学薬品を、その工程別に見てみましょう。栽培時に木に農薬の使用があります。カキ、クリ、ナツメなどの広葉樹に農薬が使われているからです。原木段階では防腐目的でベンゼンヘキサクロリドやホルマリンが使われます。接着剤を使って接合している木もあります。荒削り段階の木には、防腐剤、防カビ剤処理が行われます。仕上げ段階では天然染みやバクテリア染みを抜き、割りばしのように白くするために、塩素系などの漂白剤が使われます。また見ためを美しく豪華に仕上げるため茶、黄、赤などの合成着色料が使われます。とくに朱色の一部に水銀化合物が使われたものがありました。見ためにきれいな木の漆器は用心しなければなりません。
 木目を美しく見せるためには目止剤が使われます。腎臓障害の心配がある石膏が使われます。石膏を使うとせっかくの保温性能や断熱性能が下がります。
 食洗機に対応するためガラスコーティングをしているものがありますが、これでは熱も伝わりやすくなりますので、ガラス製品を使っていることとかわりありません。
 仕上げに使う漆についても、昔のような天然の漆はよほどでないと手に入りません。合成塗料さらには防腐剤配合のものがほとんどです。また、本来は何層にも塗るのですが、下塗りに化学塗料を使っているものもあります。市販の漆器を紙にこすると、その色が紙に移ります。木の器を使って食べているときに、それだけ器に使われている化学薬品を私達は食べさせられているということになります。食器の安全性は、そのまま食の安全性に直結しています。


―文責 西川榮郎(NPO法人  安全な食べものネットワーク  オルター代表)―


戻る